チーズが健康に良いことは、今や誰もが知る常識といってもよいでしょう。
牛や山羊などの動物の乳を発酵させた食品であり乳の持つ栄養分の多くが残っているため、当然といえば当然ですね。
ただそれにとどまらず、発酵や熟成の過程で新たな成分も生じるため、チーズは乳以上の効能を持っています。
そして、その効能はチーズの種類により異なります。
例えば、カマンベール。いわゆるナチュラルチーズの一種であり、白カビによる熟成を経た、日本ではよく知られたチーズです。
このカマンベールチーズが、近年の研究で認知症予防の効能があることがわかりました。
今回の記事では、
・カマンベールチーズの認知症への効能
・カマンベールってどんなチーズなのか
・カマンベールチーズには他にどんな健康・美容効果があるのか
・チーズの適量
についてお伝えします。
この記事を読むことで、カマンベールチーズが認知症を予防する仕組みがわかり、さらに健康や美容のために普段の食事に取り入れる価値があることがわかります。
他にもチーズとの健康的な付き合い方もわかりますので、ぜひ最後までご覧ください。
白カビチーズのカマンベールチーズに顕著な効能、認知症予防について
乳が発酵することで作られるチーズには数々の健康的効能が期待できるのですが、その中でも白カビを利用して作られるカマンベールには、特に認知症予防に効果があることが認められています。
しかも2つの研究グループにより、それぞれ別のアプローチからの成果が報告されています。各仕組みについて解説してまいりましょう。
BDNF濃度を高める
BDNFとは「脳由来神経栄養因子」のことであり、記憶や学習などの認知機能との関連があることが示されている物質です。
“脳の栄養”とも呼ばれ、脳の「海馬」に多く見られる他、血中にも含まれています。
加齢や認知症により、血中の濃度が低下するため、予防対策が重要であるとされる成分です。
このBDNFと認知症との関連を調べる試験を、東京都健康長寿医療センターや桜美林大学、明治などの共同研究グループが行いました。
東京都内に住む70歳以上で軽度の認知障害があると判断された女性71人を対象に進められ、白カビのチーズであるカマンベールがBDNF濃度をより高めることを発見しました。
研究チームは、女性を2つのグループに分け、一方にはカマンベールチーズ、もう一方にはカビ発酵をしていないチーズを、それぞれ約30gずつ3か月にわたり摂取してもらいました。
その後、3か月は両グループともに一切チーズを摂取せず、今度はカマンベールチーズを摂取するグループを交代して再び3か月の試験を行ないました。
その結果、血中のBDNF濃度は、カマンベールチーズを摂取したグループで約6%増加していたのに対し、対照チーズを摂取したグループでは約2%減少していたのです。
この研究により、カマンベールチーズがBDNFの血中濃度を高め、認知症予防に効果があることが確かめられました。
ミクログリアを活性化する
先程とは別に、東京大学とキリンホールディングスが共同で行った実験も、カマンベールチーズと認知症予防を関連付ける研究としてあります。
これは、乳製品に含まれる成分のペプチドの1つ「βラクトペプチド」に注目したものです。
ペプチドとは、タンパク質の分解物であるアミノ酸が複数つながった成分であり、チーズの発酵工程では、このような乳由来のペプチドが多く発生します。
研究では、脳内の免疫を担っているグリア細胞の一種であるミクログリアをβラクトペプチドで処理しました。
ミクログリアは脳内の老廃物の除去などの機能が知られていますが、その機能の一つがアルツハイマー病の原因とされているアミロイドβの抑制です。
βラクトペプチドで処理したミクログリアはアミロイドβを分解する能力が高まることがわかり、マウス実験ではアミロイドβの減少とともに記憶の改善も確認されました。
乳製品の中でも、白カビチーズであるカマンベールにβラクトペプチドがより多く含まれているため、認知症予防はカマンベールチーズに顕著に見られる効能として認められるようになっています。
なお、これらの研究ではβラクトペプチドには、健常な中高年の記憶力や注意力を向上させる効果があることも同時に発見されています。
カマンベールとはどんなチーズ
世の中には数多くの種類のチーズがあり、原料や作り方、熟成のさせ方などでいくつかに分類されます。カマンベールチーズはその中のどのような種類なのか、製造方法と熟成の仕方の観点から解説します。
カマンベールはナチュラルチーズ
まずチーズは、基本的な作り方から大きく分けると次の2つになります。
・ナチュラルチーズ
・プロセスチーズ
ナチュラルチーズ
原料の乳を発酵させて凝固したタンパク質(カード)を成形し、乳酸菌が残った状態で商品化したチーズ。
プロセスチーズ
1種類もしくは複数種類のナチュラルチーズを原料の一つとして、加熱するなどの加工をして商品化したチーズ。
カマンベールは、この内のナチュラルチーズに分類されます。ナチュラルチーズはさらにいくつもの種類に分かれるのですが、その中でもカマンベールは、ある特徴的な製法により作られます。
食べても大丈夫な白カビのチーズ
カマンベールチーズに特徴的な製法とは、白カビを繁殖させる作り方です。
白カビは、原料乳に混ぜ込まれることもあれば、カードを円盤状に成形した後から表面に吹き付けられることもあります。もちろん、この白カビは口にしても人体に害を及ぼすものではありません。
白カビの力によりチーズは熟成をしていきます。このときタンパク質がアミノ酸に分解されることで旨味を増していきますが、同時に健康上の効能を期待できる成分も生成されていきます。
今回は、白カビチーズの代表としてカマンベールチーズによる健康効果を紹介していますが、ブリーなどの他の白カビチーズもその効能は変わらないとされています。
カマンベールは他にも健康効果がたくさん
先ほどは、カマンベールチーズの効能として認知症予防にフォーカスしてお伝えしました。
ただ、そもそもチーズは、牛などの動物の乳が原料となっているため多くの栄養を豊富に含んでいます。もちろん、カマンベールも同じです。
そのため、他にも様々な健康・美容効果があります。
ここでは、カマンベールを含む代表的なチーズの栄養素と健康・美容効果について、そしてこれらの効果を活かせる食べ方についてお伝えします。
カマンベールの栄養素を比較する
それでは、カマンベールチーズと、同じナチュラルチーズでありながらサッパリした味わいが特徴のカッテージチーズ、それとプロセスチーズの3種類の栄養素を表で示しますので、比較してみてください。
その後、各成分について説明します。
代表的なチーズの栄養素(100g中)
種類 | 名称 | タンパク質(g) | 脂質 (g) | 炭水化物 (g) | カルシウム (mg) | ビタミンA (μg) | ビタミンB2 (mg) | ビタミンC (mg) | 食物繊維 (g) | 食塩相当量 (g) | カロリー (kcal) |
ナチュラルチーズ | カマンベール | 19.1 | 24.7 | 0.9 | 460 | 240 | 0.48 | 0 | (0) | 2.0 | 291 |
カッテージ | 13.3 | 4.5 | 1.9 | 55 | 37 | 0.15 | 0 | (0) | 1.0 | 99 | |
プロセスチーズ | 22.7 | 26.0 | 1.3 | 630 | 260 | 0.38 | 0 | (0) | 2.8 | 313 |
※「(0)」は推定値を表します
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
カマンベールチーズとプロセスチーズは、タンパク質や脂質、カルシウム、ビタミンAやB2などの栄養をたくさん、しかもバランスよく含んでいるのがわかるでしょう。
特に、タンパク質やビタミンは細胞を若々しく保つために必要な成分なので、健康効果だけでなく高い美容効果も期待できます。
ただし、カッテージチーズはこれらすべてについて含まれる量が少ないので、効果を期待しすぎないようにしてください。
一方で、チーズは栄養豊富であるがゆえに、消化に悪く胃もたれの原因になると心配している人や、健康に良くないと思っている人が多いようです。
しかし実際には、タンパク質がアミノ酸に分解されていたり、脂肪球が細かく砕かれていたりして消化によい食べ物といえるでしょう。
さらに、チーズはダイエットによくないという意見もありますが、よくない成分の主なものとされる脂質は、一般的な油脂類とは異なり短鎖脂肪酸や中鎖脂肪酸などの良質なものです。
体内でエネルギーに変わりやすく、体の脂肪として蓄積されにくいといわれていますので、ダイエット中に食べても太る心配をあまりしなくてもよいとされています。
また、プロセスチーズは加熱して作るため乳酸菌が死滅してしまいますが、カマンベールを含むナチュラルチーズは生きた乳酸菌が含まれているため、その効果が期待できます。
乳酸菌は腸内環境を整えるとされていますので、便秘などでお腹の調子にお悩みの方にもおすすめです。
カマンベールをより健康的に食べる
カマンベールチーズは、そのまま食べても当然おいしいのですが、様々な食べ方ができます。
その中には、加熱調理をしてアツアツを楽しむ食べ方もあります。しかし、乳酸菌の効果を期待するのであれば、加熱せず食べるのがよいでしょう。
さらに、カマンベールをはじめとするチーズ全般は、後述のとおりビタミンCと食物繊維、炭水化物をまったく、もしくはほとんど含んでいません。
ですから、認知症予防の効能だけでなく他の健康効果も最大限に期待するのであれば、加熱をせずにビタミンCや食物繊維、炭水化物と一緒に食べることをおすすめします。
・サラダに混ぜ込む
・フルーツと一緒にカプレーゼ風にする
・クラッカーやバゲットの上に乗せて、ハチミツをかける
などの食べ方があります。
ただし、あまり難しく考えるとおいしさが半減してしまい、カマンベールを食べるのが嫌になってしまうかもしれません。
カマンベールは、オーブンで焼いたり、アヒージョにしたりと加熱調理することで、食べ方のバリエーションはとても広がります。
それならば、細かなことはあまり気にせず、いろいろな料理にカマンベールを使って、楽しみながら毎日食べるというほうがよいかもしれませんね。
カマンベールチーズの適量は?
ここまで読んで、カマンベールチーズが認知症予防だけでなく様々な効能を持つこと、健康や美容のために有意義な食品であることはご理解いただけたでしょう。
しかし、ここで疑問があるかもしれません。
それは、「カマンベールチーズは毎日のように食べても大丈夫なのだろうか。」
また、「そのときの適量はどれくらいなのだろうか」というもの。
先程も述べましたが、チーズは健康に良くないのではないかというイメージが広まっているから、このような疑問が出てくるのでしょう。
結論から言いますと、カマンベールチーズは毎日食べても大丈夫です。
適量に関しては、そもそもチーズだけで考えることは意味がないといえるでしょう。
1日に摂取するすべての食事で判断すべきだからです。
ただ、一般的な食事を摂った前提で計算することは可能ですので、これからシミュレーションしてみましょう。
特に気になるであろう、3つの要素について考えます。
カマンベールからの1日の摂取目安量 | カマンベール 100gあたり | カマンベールの適量 | |
カロリー | 200キロカロリー | 291キロカロリー | 69g |
飽和脂肪酸 | 14~21g | 15g | 100~150g |
塩分 | 1g | 2.0g | 50g |
カロリー
一般的な成人が1日に必要とするカロリーは、およそ2000~3000キロカロリーです。
このうち、チーズで摂取するカロリーを200キロカロリーと仮定します。
すると、カマンベールチーズは100gあたり291キロカロリーとされていますので、69g程度食べられることになります。
脂質
脂質の中でも、健康を考えたときに気にすべきなのは「飽和脂肪酸」です。
飽和脂肪酸の摂取基準に関して、厚生労働省は1日の総摂取エネルギーの7%としています。
先ほどの摂取カロリーから計算すると、これは14g~21gです。
カマンベールチーズ100g中の脂質は24.7gで、飽和脂肪酸はその内の約15gなので、チーズの適量はおよそ100~150gと考えてよいのではないでしょうか。
塩分
塩分の摂取量に関しては、18歳以上の男性で8g未満、女性で7g未満が厚生労働省の推奨する量となっています。
カマンベールチーズ100gに含まれる塩分量は、約2.0gです。
チーズから摂取する塩分を1g以内に抑えようとすれば、50gまでということになるでしょう。
まとめ
今回は、カマンベールチーズの効能である認知症予防を主なテーマにお話してまいりました。
カマンベールは白カビの効果により、BDNFの濃度を高める働き、βラクトペプチドによってミクログリアの機能を高める働きがあることがおわかりいただけたかと思います。
それ以外にも、すべてのチーズが持っている健康上・美容上の効能についても、当然期待ができるものです。
年齢にかかわらず記憶力や注意力の維持にも効果があるのですから、若いうちから食べる週間をつけておくとよいですよね。
私たちの生活を充実させてくれるカマンベールチーズ。ぜひ、これまでよりもたくさん食べるようにしてください。