「カビが生えたものは食べてはいけない」私たちは、このように教わって大きくなりました。
しかし、世の中にはこのカビが生えているのに食べられるものがあります。チーズがその代表ではないでしょうか。
かつては一部の人から「本当に食べて大丈夫なのか?」と疑問に思われていましたが、白カビチーズや青カビチーズは、いまや食べるのに抵抗がある人というのはほとんどいないでしょう。
でも、改めて考えてみると、やはり不思議です。なぜ、食べても大丈夫なカビと食べてはいけないカビがあるのでしょうか。
今回は、チーズのカビとはどういうものなのか、なぜ食べても食中毒を起こさないのか。
さらには、おいしいカビのチーズの種類やチーズのカビが健康や美容におよぼす効果まで、詳しく説明してまいります。
これを読めば、チーズのカビに抵抗がなくなり、もっとおいしく、楽しく食べられるようになります。
ぜひ最後までお読みください。
どうしてチーズにカビが生えているのか
つい食べるのを忘れてしまって、気づくと食べ物にカビが生えていたということは経験しているかと思います。当然、それは捨ててしまいますよね。
しかし、世の中にはカビが生えている状態で売られているチーズが存在します。どうしてカビなんか生やしているのでしょうか。
何かメリットがあるのでしょうか。それ以前にカビとはどういったものなのでしょうか。この疑問から解き明かしてまいりましょう。
そもそもカビとはどういうものか
カビに対して良い印象を持っている人は少ないでしょう。圧倒的に悪者、イヤなものというイメージのほうが強いと思います。では、このカビというのをあなたはどの程度ご存じでしょうか。
カビは細菌やウイルスとともに微生物の仲間です。糸状の「菌糸」と、「胞子」からなっていて、生育にしたがって菌糸が伸びていきます。菌糸が集合したものは「菌糸体」と呼ばれます。
胞子は空気中を飛び回り、落ちた先が生育に都合のいい環境であれば、そこで新たに菌糸を伸ばし繁殖を始めます。
私たちが生活する場は水分と温度、養分などがそろっているので、カビにとっても生育に向いている環境です。ですから、カビは私たちにとって身近な存在なのです。
このカビを私たちが嫌う理由で真っ先に挙げられるのは、見た目でしょう。黒や赤、青、白などの色をした集合体を作り、気持悪く感じ、不快感を引き起こします。
しかしより重大なのは、カビ毒を生成し、食べた場合には食中毒を起こしたり、ガンを発症したりする原因となることではないでしょうか。
他にも、衣服や住居を台無しにすることもあり、私たちにとってカビは忌み嫌うべきものとなっています。
しかし、カビはマイナス面だけを持っているのではありません。一方で、私たちの役に立つものも生み出しているのです。
その一つが「ペニシリン」です。これは、病原菌などの繁殖を抑えてくれる抗生物質ですが、実は青かびの一種から作られています。
そしてもう一つ。それが、チーズです。ある種のカビがチーズの内外で繁殖することにより、特徴あるおいしさをチーズにもたらしてくれています。
チーズのカビが大丈夫な理由
先ほど述べたように、一部のカビはチーズをはじめとして、私たちにとって有益なものを作り出します。では、有害なものと有益なものでは何が違うのでしょうか。詳しく解説していきます。
毒性のないカビを生えさせている
カビを食べるとお腹をこわすというイメージがありますが、カビにも毒性があるものとないものがあります。私たちが口にすることができるカビのチーズというのは、毒性がないカビなのです。いつもおいしく食べている白カビチーズや青カビチーズは、このようなカビを繁殖させているため食べたとしても害はありません。
ちなみに、私たちが普段口にすることができる、カビのチーズは2種類です。
白カビチーズと青カビチーズですが、使っているのはどちらもアオカビ属(ペニシリウム属)です。白カビといいながらアオカビ属というのは意外ですが、2つのカビは仲間だったのです。
青カビチーズに使われるのがペニシリウム・ロックフォルティ、白カビチーズに使われるのはペニシリウム・カンディダムといいます。
食べても大丈夫なカビとはいっても、カビにアレルギーがある方にとっては何らかの症状が出ることがありますので、心配がある場合はカビのチーズは口になさらないでください。
チーズがカビを無毒化させている
前節で、私たちが口にしているチーズのカビには毒性がなく、食べたとしても食中毒を起こすようなことはないと書きましたが、実はこれは正確ではありません。
というのも、青カビチーズに使われているペニシリウム・ロックフォルティは有害な物質を分泌しているからです。「今まで食べていて平気だったけれど、本当は体に悪いものだったのか?」というとそれも違います。といいますのも、青カビが生み出した毒性がある成分を、チーズ自体が無毒化しているからです。
青カビが生成する有毒成分には、ペニシリン酸やロックフォルティン、PRトキシンがあるのですが、いずれもタンパク質がある環境では不安定で分解されます。特に、低温下の熟成環境やチーズに含まれるアンモニウムによって、完全に分解されることが実証されています。ですから、青カビであっても食べても大丈夫なのです。
ただ気をつけなければならないのは、チーズ以外の青カビは食べると危ないということです。青カビチーズのカビが移ってしまったものでも、パンなどに生えているものは無毒化されていない可能性がありますので、口にはしないでください。
カビのチーズが生まれたのは偶然だった
それにしても不思議なのは、なぜカビが生えたチーズを作ろうなどと思ったのかです。
これはあくまでも言い伝えなのですが、カビのチーズは偶然によって生まれました。有名なブルーチーズの一つ、フランス産のロックフォールが発祥だといわれています。
ある日、羊飼いが休憩のため立ち寄った洞窟にパンとチーズを忘れてしまったそうです。後日、同じ洞窟に行った羊飼いは、カビだらけのチーズを発見します。試しにカビを払ってこのチーズを食べたところ、とてもおいしくなっていた。
これが、始まりでカビの生えたチーズは作り始められたということです。
この話が事実かどうかは別にして、いまだにロックフォール村では伝統にのっとって青カビチーズが作られていますので、村の洞窟で熟成されたものでないと「ロックフォール」とは名乗れません。
ちなみに、このロックフォールが生まれたのは2000年以上前だとされていますので、人類がカビのチーズを食べるようになってからかなりの年月が経っているのがわかります。
カビがチーズをおいしくする
チーズに使われるカビには2種類ありますが、これらの働き方には同じ点と異なる点があります。
まず、白カビも青カビも乳に含まれるタンパク質を分解する酵素を分泌します。チーズの中で繁殖を続けながら、うま味成分であるアミノ酸を作り出すのです。これに加えて、脂肪を分解する酵素を分泌します。
この酵素が脂肪を脂肪酸に分解して、チーズに独特の香りや味わいをもたらしています。
また、青カビはチーズの内部で増えるのに対し、白カビは表面を覆うように繁殖していますよね。その結果別の有害な微生物の繁殖を抑制するので、白カビチーズには、安定した環境で熟成させられるというメリットがあります。
後から生えたカビなら食べるのは危険
元々カビを繁殖させて作っているチーズは、食べても危険ではないということはお分かりいただけたかと思います。それは、人体に害がないカビを使っている、もしくは有毒な成分は生成するがチーズの影響で無毒化されてしまうということでした。
それでは、元から生えていたカビとは別のカビが生えてしまったチーズを食べたらどうなるのでしょうか。
結論から言いますと、お腹をこわすことがあります。
まず黒色や赤色などの、元のカビとは別の色のカビは、毒性がある可能性が高いです。
一部では、カビの毒性は低いから少しくらいなら食べても大丈夫だとか、カビが生えたところを削れば食べられるとか、カビの毒は熱に弱いから加熱すれば平気だという意見がありますが、どれも確実な証拠にはたどり着けませんでした。
それぞれについて、詳しく説明します。
カビの毒性は低いものばかりではない
まず、カビの毒性が低いという話ですが、カビ毒の中にはアフラトキシンという死亡事故にもつながるほどの猛毒もあります。日本で検出された例では、直ちに人体の健康に影響を与えるほどの量ではないとされていますが、猛毒であることにはかわりありません。
元々のカビ以外は危険だと思って、食べないでおくのが間違いない対応ではないでしょうか。
見えないところにもカビは入り込んでいる
次に、カビが生えたところを取り除けば大丈夫だという意見です。カビが生えたところを取り除けば大丈夫というのは、正しいとは言えません。といいますのも、私たちが見た目でカビだと判断している部分は、カビの一部だからです。
菌糸の集合体を見て、私たちはカビだと認識しているにすぎず、それほどの集合体ができている時点で、食品の内部ではカビの菌糸が増殖していることが考えられます。
ですから、カビが生えたところだけを切り取ったとしても、残った部分もすでにカビに侵されているのです。
加熱してもカビ毒は分解されない
では、火を通せばお腹をこわさなくて済むのではないかという意見はいかがでしょうか。残念ながら、これも安全とはいえません。
カビ自体を死滅させることができても、カビ毒まで無効化できるとは限らないからです。
これらについては、農林水産省が公表していますので、参照してください。
食品にかびが生えているかどうかは肉眼で確認できる場合もありますが、かび毒が含まれているかどうかは見た目ではわかりません。かびそのものは加熱などにより死滅しますが、かび毒の中には比較的熱に強く、通常の加工・調理では十分に減少しないものもあります。このため、一度かび毒に汚染されてしまうと、食品からかび毒を取り除くことは困難であり、食品を通して微量のかび毒を摂取してしまう可能性があります。 |
引用:「かびとかび毒についての基礎的な情報」農林水産省
もし、周りにこれらのことをすれば大丈夫だったという人がいても、たまたまその人が大丈夫だっただけかもしれません。高齢者や子供、体力の弱っている人であれば何らかの健康被害を起こすことは十分考えられます。
ですから、元のカビとは別のカビがチーズに発生するのを見かけた場合には、廃棄をしましょう。
元のカビが増えたのなら大丈夫
もちろん、元のカビが増えている場合であれば、基本的には問題ありません。有害なカビが新たに生えたわけではないので、健康に影響をおよぼすことはないでしょう。
むしろ、購入時よりさらに熟成が進んで、より好ましい味になったと思う方もいるくらいですから、味の変化を楽しむことができるはずです。
ただし、賞味期限が過ぎていたり、口にした時ピリピリという刺激を感じる場合には、避けておきましょう。必ずしも食べられないというわけではありませんが、カビ以外の腐敗が進んでいる可能性は考えられます。
チーズ好きな方は、多少賞味期限を過ぎていたり、きわどい匂いがしていたりしても平気で食べることがありますが、少しでも違和感を感じたら食べないでおくのが賢明です。
後から生えたカビを食べたらどうなる?どうする?
元から生えているカビ以外のカビがチーズに生えてしまったら、そのチーズは廃棄しましょうとお伝えしました。
しかし、「食べている途中に、後から生えたカビに気づいた」とか「食べ終わって、残りのチーズをしまおうと思ったらカビが生えていた」とかいうこともあるでしょう。
こんなときはどうしたらよいのでしょうか?
食べてはいけないカビを食べてしまったときにどうなるのか、どうしたらよいのかを解説します。
カビを食べてしまったときに出る症状
先ほどは、カビ毒の中には猛毒のものがあると説明しました。
また、目に見えるカビを取り除いても内部で繁殖しているかもしれないこと、加熱してもカビ毒は分解されないかもしれないことから、はじめから繁殖させているカビ以外のカビが生えていたら捨てることをおすすめしました。
しかし、それは万が一のことを考えてのことです。ただ実際は、そのような後から生えたカビを食べて何らかの症状が出ることは、実はほとんどありません。
というのも、私たちの身近で繁殖するカビの多くは、食べたとしてもほぼ人体に影響がないものだからです。他の食材と同様に胃酸で分解されてしまうため、基本的には少量食べた程度では心配するほどではありません。
ただし、極まれに毒性が強いカビを食べてしまったり、食べた人の体調が良くなかったり、体力がなかったりすると、症状が見られることがあります。
その際は、程度が軽ければ、軽い吐き気や腹痛くらいの症状で治まりますが、重くなると嘔吐や下痢などの症状が出るようです。
カビを食べてしまったときの対応
それでは、もし誤って後から生えたカビを食べてしまった場合には、どうしたらよいのでしょうか?対応の仕方を説明します。
症状がない場合
先ほど述べたとおり、後から生えたカビを食べてしまっても、ほとんどの場合人体に影響はなく症状も出ませんので、しばらくは様子を見てください。
また、このときはあまり心配をし過ぎないようにしましょう。「食べられないカビを食べてしまった」ということで気に病んでいると、メンタル面に悪影響が出て具合が悪くなることも考えられます。
大事に至ることはほとんどない、と安心して過ごしてください。
ただし、激しい運動をすることは避けましょう。体力を消耗してしまうと、症状が出やすくなってしまいますので、1日くらいは穏やかにして経過を見てください。
吐き気、腹痛がある場合
これらの症状が出た場合は、まずは安静にして体調が悪くならないよう注意してください。
軽く済めば、じきに症状はなくなっていき、健康な状態に戻っていきます。
ただし、この際には吐き気や腹痛を抑える薬は飲まないようにしましょう。
もし、体内の毒素を出したほうがよいと体が反応するのであれば、それに従うほうが症状を悪化させずに済むからです。
嘔吐、下痢の症状が出た場合
この場合は、体内から出せるものは出し切ってしまいましょう。
もちろん、吐き気や腹痛があるときと同様、嘔吐や下痢を止める薬は飲まないようにしてください。
それと、脱水症状にも気を付けましょう。嘔吐や下痢の際には、体内の水分が少なくなってしまいますので、常温のお水や白湯などでこまめな水分補給を心がけてください。
こうして、体内の毒素をある程度出してしまえば、体調は回復していくはずです。
もし半日や1日回復せず、症状が続くようであれば、大事をとって医療機関で診察を受けてください。
おすすめのカビチーズ
購入する時点でチーズに生えているカビは、食べても大丈夫なことがわかっていただけたかと思います。大丈夫なだけでなく、カビの力によっておいしくすらなっているのですから、むしろ積極的に食べていただきたいくらいです。
では、これからはカビのチーズ2種類について、さらに詳しく説明してまいります。
白カビチーズ
私たちにより馴染みがあるカビのチーズは、この白カビチーズでしょう。カマンベールがもっとも有名で、カマンベールを食べたことがない人というのはもはや少ないのではないでしょうか。表面はフェルト生地のような白カビに覆われ、中身は白色からクリーム色までバリエーションがあり、トロリとした食感は熟成が進むほどに、タンパク質が分解され柔らかくなっていきます。
白カビチーズの作り方
一般的な白カビチーズの作り方は、原料乳を温めたところに乳酸菌を加え、凝乳酵素を加えて固めます。
固まったものを型に詰めると乳清と呼ばれる液体が抜けていきます。
ある程度硬くなった時点で型から外し、表面に塩を振りかけ、白カビを吹き付けてから熟成庫で熟成させます。
白カビは乳に加える作り方もありますが、成型した後で吹き付ける作り方が一般的です。
この熟成期間中に白カビのタンパク質分解酵素の働きにより、表面から徐々に軟らかくなっていきます。
おすすめ白カビチーズ3選
世界中で多くの白カビチーズが作られています。その中から3つを選び出すのは難しいことですが、知名度と特徴から3つを選んでみました。
・ブリー・ド・モー
・カマンベール・ド・ノルマンディ
・サン・タンドレ
名前 | 生産国 | 原材料 |
ブリー・ド・モー | フランス | 牛乳(無殺菌乳) |
カマンベール・ド・ノルマンディ | フランス | 牛乳(無殺菌乳) |
サン・タンドレ | フランス | 牛乳(殺菌乳) |
ブリー・ド・モー
日本で白カビチーズといえばカマンベールのほうが有名ですが、歴史の点ではブリーのほうが古く、1000年以上を誇ります。
ブリーの中でもこのブリー・ド・モーは、フランスのブリー地方モーの町で、無殺菌乳から作られたものだけが名乗ることができるものです。
他のブリーが殺菌乳で作られても名乗ることができるのに対し、無殺菌乳のみを原料としていることで昔ながらの独特な味わいを残しています。
歴史が長いことから多くのエピソードを持っていますが、その中でもよく知られているのが、1814~1815年に開かれたウイーン会議でチーズコンクールが開催され、60以上のチーズの中から「チーズの王」に選ばれたことでしょう。
熟成とともに味わいに気品が増し、チーズでできたお菓子と呼ばれることもあります。
カマンベール・ド・ノルマンディ
フランス・ノルマンディ地方のカマンベール村に由来するチーズです。カマンベールといえば我々日本人にとっては白カビチーズの代名詞と呼べるものです。
元々は、カマンベール村の農婦が作ったものとされていますが、現在では産地や製法の規制なくカマンベールを名乗ることができます。
その中で、このカマンベール・ド・ノルマンディは無殺菌乳を原料として、ノルマンディ地方で作られたものしか名乗ることができず、ブリー・ド・モー同様、昔ながらの味わいを残したチーズといえます。
サン・タンドレ
ブリーチーズやカマンベールチーズに比べると、知名度は低いものの特徴的な味わいを持っているのでおすすめさせていただきます。
何に特徴があるのかといいますと、乳脂肪分です。多くの白カビチーズの乳脂肪分がが40%から45%以上と規定されているのに対して、サン・タンドレは75%もの乳脂肪分を持っています。
生クリームを加える“トリプルクリーム”といわれる製法で作られ、中身はクリーミーでまるでバターのような舌ざわりです。他の白カビチーズに比べてクセも少ないので、特に白カビ初心者におすすめです。
ブリーとカマンベールの違いについて詳しくは、こちらをご覧ください
白カビチーズを食べやすくする方法
2つのカビのチーズでは白カビチーズのほうが食べやすいのですが、それでも他のチーズにはない独特の匂いは持っています。また、熟成とともに表皮がオレンジ色がかってきて、刺激的な匂いがして食べづらいと感じることもあります。
食べるのに抵抗を感じたときの、食べやすくする方法をご紹介しましょう。
まずは、皮を取り除く方法です。
白カビは表面を覆っていますので、基本的に白カビチーズのクセというのは皮の部分にあります。ですから、中のクリーミーなところだけであれば、あまりクセを感じることはありませんので、皮を捨てて中身だけを食べてください。
次は、加熱してみましょう。
パンなどの上に乗せて、オーブンで焼くと、焼いているときは強烈な匂いがしてきますが、食べるときには匂いが飛んで食べやすくなっています。チーズ自体は熟成により旨みが増していますので、チーズ乗せトーストがおいしいことは間違いなしです。
もう一つご紹介しますと、ジャムやフルーツと一緒に食べるという方法です。
ジャムやフルーツの香りと甘みでチーズのクセを感じにくくなる上に、栄養バランスも良くなりますので、いいことばかりです。
また、上質なオリーブオイルもかけると食べやすくなります。オリーブオイルが持つフルーティーな香りも、白カビの独特の香りをやわらげ、上品でなめらかな味わいに変化させてくれます。
こちらの記事では、チーズとフルーツの組み合わせをさらに詳しく解説しています
青カビチーズ
カビのチーズが苦手だという人は、ほとんどがこの青カビチーズのことを指しているのではないでしょうか。見た目、匂い、味わいのどれもが強烈で、好きな人にはたまらないけれど、一旦無理だと思ってしまうとなかなか好きにはなれません。
この通好みの味わいは熟成とともに増していき、他のチーズでは得られないおいしさになり、強力な中毒性をもつチーズといえます。
青カビチーズの作り方
大理石のような独特な見た目を持つ青カビチーズは、白カビチーズとは違う作り方により生まれます。
白カビは、多くの場合成型後に表面に吹き付けられましたが、青カビは乳に加えられる方法と型に入れる前のカード(乳を固めた後に、ある程度の水分を抜いたもの)に振りかける方法があります。
白カビチーズと同じく、温めた乳に乳酸菌と凝固酵素を加え、固まったものを細かくカットした後、これをもみほぐしながら型に詰めていきます。
ここで形を作った後に、表面に塩を擦りこんで、塩分を高めてから熟成させます。
カビは空気がなければ繁殖できません。ですから、カビに空気を供給するために、熟成中に金串で多数の穴をあけていきます。
青カビがある程度生育した時点で、金属箔で包んだり塩水で表面を吹いて表面を作ったりして生育を抑えます。
さらに熟成を続けた後に、製品として出荷されます。
おすすめ青カビチーズ3選
青カビに関しては、「世界三大ブルーチーズ」というものがありますので、こちらを紹介するのがベストでしょう。
・ロックフォール
・ゴルゴンゾーラ
・スティルトン
名前 | 生産国 | 原材料 |
ロックフォール | フランス | 羊乳(無殺菌乳) |
ゴルゴンゾーラ | イタリア | 牛乳(殺菌乳) |
スティルトン | イギリス | 牛乳(殺菌乳) |
ロックフォール
先ほどご紹介したとおり、カビのチーズの元祖です。
フランス南部のロックフォール・シュル・スールゾン村にある洞窟で熟成し、かつこの洞窟で採取された青カビを使って作られたものでなければこの名を名乗ることはできません。
無殺菌の羊乳を原料としなければならないのも、このチーズの特徴です。古い歴史を持ち、かつ伝統的な作り方を守り、さらに他には代えがたい強烈な味わいという、個性の塊のようなチーズがこのロックフォールです。
ロックフォールについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
ゴルゴンゾーラ
知名度では、ロックフォール以上なのがこのゴルゴンゾーラかもしれません。イタリア北部のゴルゴンゾーラ村で生まれました。
イタリア料理で、パスタやリゾット、ピザなどで使われることも多いので、チーズ単品よりも料理に使われているものを食べることのほうが一般的かもしれません。
さらに原料が殺菌された牛乳なので、ロックフォールに比べると馴染みやすい味わいといえるでしょう。
ゴルゴンゾーラで知っておいていただきたいのは、2種類あることです。「ゴルゴンゾーラ・ピカンテ」と「ゴルゴンゾーラ・ドルチェ」があり、ピカンテのほうがよりブルーチーズらしい刺激を持っています。
逆に、ドルチェはそれに比べるとマイルドで、独特な風味が控えめになっていますので、初心者の方をはじめ、あまりブルーチーズが得意ではない人におすすめです。
ゴルゴンゾーラについてさらに詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください
スティルトン
イギリス・ロンドンから北に約130㎞にあるスティルトンという町で作られています。
低温殺菌した地元産の牛乳を原料とし、指定された地域で作られたもので、伝統的な円筒形でなければならないなど厳しい基準を満たしたものでなければ名乗ることはできません。
匂いも味わいも強烈でブルーチーズらしいブルーチーズといえます。濃厚な風味が熟成により増すと、さらにおいしくなるといわれています。
青カビチーズを食べやすくする方法
個性的な風味を持った青カビチーズですから、好きな人は好きですが、苦手という人はまったく受け付けないというくらいに反応は分かれます。
もし苦手であっても、もう少し食べやすければ挑戦してみたいとなるかもしれません。ですから、青カビチーズのクセを抑える食べ方もご紹介しておきましょう。
それは、ハチミツやジャム、ドライフルーツなどの甘みがしっかりしたものと食べる方法です。塩気が強い青カビチーズは、甘いものと食べると塩気をマイルドに感じます。
それと同時にクセも抑えられて、チーズが持つ素直な味わいを感じやすくなります。この食べ方は簡単なうえに、ただ食べやすくするだけではありません。
ブルーチーズの違ったおいしさを引き出しますので、ぜひともやっていただきたい食べ方です。
カビチーズの健康・美容効果
ここまで、青カビチーズには害がない、しかもチーズをおいしくしてくれるということで話を進め、おすすめのカビのチーズもご紹介してきました。
しかし、チーズのカビについてはさらにお伝えしたいことがあります。それは、健康や美容にもいいということです。
これらの効果はチーズ全般がもっているものではあるのですが、特にカビのチーズで効能成分が多くなっています。近年研究が進んで、カビのチーズに注目が集まっていますので、ここで改めて確認しておきましょう。
血圧抑制
チーズは熟成中に、アミノ酸がいくつか結合したペプチドというものを作り出します。
ペプチドにも様々あるのですが、その中の一つ「ラクトトリペプチド」といわれるものが、特に血圧の上昇を抑える効果を強く持つことが研究でわかっています。
そして、この「ラクトトリペプチド」の生成に関係しているのが、乳酸菌やカビが分泌するタンパク質分解酵素です。
チーズの中でもカビのチーズに血圧抑制効果が高いのは、このような理由からです。
抗酸化によるアンチエイジング
チーズに含まれるパルミチン酸は、細胞をサビさせるといわれる活性酸素の働きを抑える力、いわゆる抗酸化力を持つ成分です。
活性酸素は老化現象の原因の一つとされますので、抗酸化力を持つパルミチン酸はアンチエイジングに効果があるということです。
パルミチン酸とは脂肪酸の一つですが、青カビが分泌するリパーゼという成分には脂肪を脂肪酸に分解する働きがあります。
ですから、青カビのチーズはパルミチン酸を多く含んでいて、それだけアンチエイジングにも効果があるといえます。
また、パルミチン酸には美肌を維持するために効果があるビタミンAを安定させる働きがありますので、青カビチーズには肌年齢を若く保つ効果も期待できます。
認知症予防
キリンホールディングスと東京大学との共同研究で、白カビチーズのカマンベールを摂取すると老化による認知機能の低下を改善することが確認されました。
βラクトリンというペプチドが有効成分として働いていて、アルツハイマー病の予防にも効果があるという結果が出ています。
また、慶應義塾大学などの研究グループは、βラクトリンにより健常の中高年の記憶力に改善が見られたことを確認しました。
カビは認知機能の向上にも一役買っています。
ブルーチーズの効能について詳しくは、下記の記事もご覧ください
まとめ
今回は、チーズのカビについて解説してきました。その内容を振り返ってみます。
普段は私たちに害をおよぼすカビですが、なぜチーズに使われているカビは食べても大丈夫なのかをお伝えしました。
カビが生えたチーズを食べてみたらおいしかったという偶然からチーズにカビを利用することを始めたのですが、カビがチーズをおいしくする理由はご理解いただけたでしょうか。
しかし、毒性がないカビはまれなので、はじめからチーズに入っているもの以外のカビは口にしてはいけないことは忘れないでください。
チーズとカビの組み合わせは、私たちとの付き合いも古く様々なおいしいチーズを生み出してくれました。
その中から、おすすめのチーズを紹介させていただきました。
最後には、さらに驚きの内容です。有害だと思っていたカビが無害だったというだけで意外だったと思うのですが、さらに私たちの健康や美容に大きく貢献までしてくれていたのです。
カビが生えているチーズなんて食べても大丈夫なのだろうかと心配していたのに、むしろ積極的に食べるべき食品だったのです。
自然からの大きな贈り物である、白カビチーズ・青カビチーズ。
最初に口にした古(いにしえ)のチャレンジャーに感謝しながらおいしくいただいて、健康的に美しく日々を送っていきましょう。