白カビに覆われ真っ白な見た目のカマンベールとブリーですが、この2つは似て非なるものです。またカマンベールとブリーのなかでも分類が存在します。
この記事では、
・カマンベールとブリーの違い
・2つのブリーの違い
・2つのカマンベールの違い
・カマンベールやブリーに合うワインとは
について解説していきます。
カマンベールとブリーの違い
カマンベールとブリーは、どちらも白カビチーズに分類されるものです。一説には、「カマンベールはそもそもブリーをまねして作られた」ともいわれており、風味には似通った部分があります。
どちらも日本で広く売られているもので、少し大きめのスーパーに足を運べば手軽に手に入れることができます。
カマンベールとブリーの違いは、
・産地が違う
・味わいが違う
・大きさが違う
という特徴があるとされています。ただそのなかで、一番先に挙げた「産地の違い」は非常に複雑な話があるため、なかなか断言が難しいものでもあります。このあたりについては、次項以降でお話しします。
一般的に、ブリーはカマンベールよりも味わいがまろやかで食べやすいとされています。ただこれも、「すべてのブリーは、すべてのカマンベールよりもまろやかである」と言い切れるものではありません。これについても後述します。
このように考えていくと、カマンベールとブリーの決定的な違いというのは「大きさ」のみにあると言わざるを得ません。ブリーは27~37センチ程度の大きさを持つかなり大型のチーズです。対してカマンベールの場合は、12センチ程度の大きさにとどまります。
「ブリー」と「ブリー・ド・モー」の違い
上では、「カマンベールとブリーの違いを語るときに、『産地の違い』から解説するのは難しい」としました。これにはきちんとした理由があります。
その理由が、「『ブリー』と『ブリー・ド・モー』の違い」にあります。
ブリーとは、「ブリー」と「ブリー・ド・モー」を合わせた総称として用いられる一方、「ブリー・ド・モー以外のブリーチーズ」としての意味も持ちます。
そのためここでは、「」をつけて語るものを「ブリー・ド・モー以外のブリー」として、「」なしのものを「『ブリー』とブリー・ド・モーを合わせた総称」としてお話ししていきます。カマンベールについても同じだと考えてください。
ブリー・ド・モー(ブリ・ド・モーとも書かれる。ここではブリー・ド・モーの表記に統一)は、フランスのイル・ド・フランス地方の東側に存在するブリー地方のモーの町で生まれたチーズです。
この地方で、無殺菌の牛乳を使い、定められた製法で持って作られるものが、「ブリー・ド・モー」と名乗ることを許されています。
なお、もっとも有名なのがこのブリー・ド・モーですが、「ブリー・ド・ムラン」「クロミエ」と呼ばれる非常に有名なチーズもあり、この3つは合わせて「ブリー3兄弟」と呼ばれます。
では、「ブリー」はどんなものなのでしょうか。
これは「ブリー・ド・モー以外のブリーチーズ」を指します。ブリー・ド・モーが非常に有名であり人気があったため、さまざまな地域でこれを模したチーズが作られました。
ブリー・ド・モー以外の「ブリー」の場合は、無殺菌乳を使わなければならないという条件もなく、手作業で作る必要もありません。そのため、工場で、殺菌済みの乳を使ったものも「ブリー」と名乗ることができます。
伝統的な製法と材料を使って作られるブリー・ド・モーよりも、「ブリー」の方が一般的に食べやすく、くせが少ないといえます。ただ個性的なブリーを求めるのであれば、ブリー・ド・モーの方がよいでしょう。
「カマンベール」と「カマンベール・ド・ノルマンディー」の違い
次に、カマンベールとカマンベール・ド・ノルマンディーの違いを見ていきましょう。
ここでも、「カマンベール」と「」つきで記した場合は「カマンベール・ド・ノルマンディー以外のカマンベール」を、「」なしでカマンベールとした場合は「カマンベール・ド・ノルマンディー以外のカマンベールと、カマンベール・ド・ノルマンディーの総称」と考えてください。
カマンベール・ド・ノルマンディー(カマンベール・ド・ノルマンディとも書かれる。ここではカマンベール・ド・ノルマンディーの表記に統一)は、フランスの北西部にあるノルマンディー地方で作られている白カビチーズです。
これもブリー・ド・モー同様、無殺菌の牛乳を使って作るなどの製法が厳密に決められています。また、カマンベール・ド・ノルマンディーと名乗ることができるのは、この製法を守ったうえで、ノルマンディー地方で作られたチーズに限定されます。
対して「カマンベール」の方にはこのような制約がありません。
殺菌した牛乳を使っても構いませんし、ノルマンディー地方以外で作っても構いません。この「カマンベール」も、「ブリー」同様、カマンベール・ド・ノルマンディーをまねして作られたものです。
AOCの取得が遅れたために、この「カマンベール」が世界各地で作られるようになったという経緯があります。
なお日本で一般的に販売されているものは「カマンベール」が多いのですが、カマンベール・ド・ノルマンディーも容易に手に入れることができます。
「カマンベールとブリーの違いとして、『産地』を挙げるのは難しい」としたのはこのような理由があります。
ほかの地方でも「カマンベール」と「ブリー」は作られているため、「フランス以外で作られているのがカマンベールであり、フランスで作られているのがブリーである」とは言えないのです。
ただ、カマンベールとブリーの違いとして「産地」を挙げる場合は、「カマンベール・ド・ノルマンディーと、ブリー・ド・モー」を取り上げていることが多いかと思われます。
カマンベール・ド・ノルマンディーは非常になめらかでとろけるような食感を持ちます。「カマンベール」に比べて個性が強いのは、無殺菌牛乳を使っているからです。
比較的親しみやすい味わいであり、ブリーとともに、「カマンベールはチーズ初心者さん向け」とよくいわれています。
カマンベールやブリーに合うワインとは
このようになかなか複雑な分け方・解説が必要となるカマンベールとブリーですが、どちらも、またどれでも、優れたチーズであることは疑いようがありません。
カマンベール・ド・ノルマンディーとブリー・ド・モーには豊かな個性がありますし、「カマンベール」と「ブリー」にはだれもが親しみやすい味があります。
このため、好みに合わせて選び分けるとよいでしょう。ただ、慣れていないうちは、「カマンベール」「ブリー」の方が、カマンベール・ド・ノルマンディーやブリー・ド・モーよりは親しみやすいかもしれません。
このことを念頭においたうえで、カマンベールとブリーに合うワインについて考えていきましょう。
カマンベールもブリーも、スパークリングワインや白ワインが比較的よく合います。
特にブリーの場合は、同じくフランスで作られるシャンパンと高相性です。ブリー・ド・モーと生ハムを合わせたクロワッサンや、パン・ド・カンパーニュにブリー・ド・モーをのせて、シャンパンと一緒に楽しむとよいでしょう。
また辛口のワインもよく合います。赤ワインと合わせるのならば、比較的口当たりが軽く、華やかなものを選ぶと失敗がないでしょう。
カマンベールについてもみていきましょう。これも、フルーティーな赤ワインがよく合います。
白ワインを合わせてももちろん良いでしょう。なお、カマンベール・ド・ノルマンディーには濃厚なタルの香りがよくきいた個性的な白ワインもよく合います。
それ以外にぜひ合わせてほしいのが、ワインではありませんが、「シードル」です。シードルはフランスでつくられるリンゴのお酒で、微発泡のものと発泡がみられないものの2つがあります。
リンゴ由来の酸味がカマンベール・ド・ノルマンディーの味わいをよく引き立ててくれ、最高のマリアージュになります。なお、「リンゴのお酒」ということから、甘い味を想像しがちですが、フランスでよく出されるシードルはほとんど甘さを感じないものも多くみられます。
もっとも、チーズとお酒の組み合わせに、明確な「正解」があるわけではありません。
カマンベールとブリーの違い、「ブリー」とブリー・ド・モーの違い、「カマンベール」とカマンベール・ド・ノルマンディーの違いを把握し、それぞれに合う「基本の組み合わせ」を理解したうえで、自分にとって最高の組み合わせとなるお酒を選んでみてください。