「寝る前に食べると太る」とは、よく言われることです。
たしかに、寝る直前に食事をすると太りやすいようですが、空腹すぎて寝付けないということもあるでしょう。
そんな、寝る前におすすめの食べ物がチーズです。
というのもチーズであれば、寝る前に食べてもデメリットが少なく、逆にメリットとなることが多いからです。
ということで、今回は
・そもそも、なぜ寝る前に食べると良くないのか
・寝る前に食べるならチーズがいい理由
・寝る前にチーズを食べる際の注意点
・寝る前に食べるのにおすすめのチーズ
をお伝えします。
空腹をガマンするストレスから解放され、太る心配も少ない状態で心地よい眠りにつけるようになりますので、ぜひ最後までお読みください。
寝る前に食べるとなぜ太る?太る以外に食べないほうがいい理由は?
食べるものに関係なく、寝る前に食事をするのは多かれ少なかれ太りやすいものです。
また太ること以外にも、食べないほうがいいとされています。
それぞれの理由についてお話ししましょう。
睡眠中はエネルギー消費が少なくなる
私たちは、寝ている間はほとんど体を動かさず、内臓なども働きを抑えます。
ですから、睡眠中はカロリーの消費量が少なくなってしまいます。
それなのに直前に食事をすると、摂取したカロリーは消費しきれず余ってしまいますので、体内に蓄積されます。
それで寝る前に食事をすると、太りやすくなるのです。
消化の負担が大きいと睡眠の質が下がる
また、睡眠の質を上げるには、消化器官も休ませるほうがよいとされています。
それなのに寝る直前に食べてしまうと、睡眠中も内臓は消化のために働き続けなければならず、睡眠の質が下がってしまうのです。
さらに、睡眠の質が下がることでホルモンバランスが変化して、食欲が増すともいわれています。
食欲が増せば食事の量が増えるため、太りやすくもなってしまいます。
寝る前に食べるならチーズがいい理由
上記のように、寝る前にはものを食べないほうがよいのはお分かりいただけたでしょう。
しかし、
・仕事が長引き帰るのが遅くなった
・夕食を食べるのが早すぎた
・夜更かしをしてしまった
などで「お腹が空いてこのままでは寝られない」ということもあるかもしれません。
それで「どうしても食べたい」というのなら、チーズをおすすめします。
その理由を述べてまいります。
チーズなら太りにくい
チーズは太りやすいというイメージを持っているかもしれませんが、実はそれほど太りやすい食品ではありません。
むしろ、少量で満足感があるので大量に食べる必要がなく、ダイエットに効果的ともいわれるほどです。
チーズが持つ、主な特徴を説明します。
タンパク質が代謝を上げる
チーズにはタンパク質が豊富に含まれており、このタンパク質が代謝を良くします。
ですから、睡眠中にタンパク質がゆっくり吸収されて代謝に使われるため、空腹で寝る場合よりもエネルギー消費量が多くなります。
また、タンパク質は筋肉量の維持に欠かせません。
筋肉は多くの熱量を消費して太りにくくしてくれますので、代謝量を維持するためにタンパク質は重要です。
糖質が少ない
種類による違いはありますが、チーズは全般的に糖質が少なく、いわゆる低GI食品であることでも知られています。
太る原因の一つに糖質の摂り過ぎがあるのですから、その糖質が少ない食品であるチーズを食べることは、糖質を多く含む食品を食べるよりも太りにくいといえるでしょう。
チーズの糖質について、詳しくはこちらをご覧ください。
脂質が蓄積されにくい
チーズが太りやすいと思われる理由の一つに、脂質の多さも挙げられるでしょう。
たしかに、動物の乳を原料として作られ、乳脂肪が凝縮しているチーズは決して脂質の低い食品ではありません。
しかし、チーズに含まれる脂肪は、一般的な脂肪分である長鎖脂肪酸とは異なる、短鎖・中鎖脂肪酸が中心です。
これらは、体内で分解されやすく、蓄積されにくいという特徴を持っていますので、チーズは脂質が豊富でありながら太りにくいのです。
チーズの脂質について、詳しくはこちらをご覧ください。
チーズは消化されやすい
チーズは消化にも良い食品です。
寝る前に食べたものが内臓に負担をかけ、睡眠の質を下げることは説明しましたが、チーズはこの負担を軽くさせられる食品なのです。
どういう仕組みで、消化に良いのかお伝えします。
タンパク質がアミノ酸に分解されている
チーズは、乳酸菌が働いて発酵することにより作られます。
このとき、乳にもともと含まれていたタンパク質は、アミノ酸の形に細かく分解されます。
私たちは、胃や腸で分泌される酵素の働きで、摂取したタンパク質をアミノ酸に分解して吸収するのですが、チーズに関してはこの分解の過程があまり必要ありません。
したがって、消化器官への負担が少なくなるのです。
グルタミン酸が脳に働きかけ消化を促進させる
グルタミン酸とは、タンパク質が分解されてできるアミノ酸の一種であり、うま味成分として知られています。
このグルタミン酸はうま味成分ですから、受容体が舌にあるのはおわかりでしょうが、なんと舌だけでなく胃にもあることがわかりました。
グルタミン酸の刺激を受けた胃は、その情報を脳に伝えます。
すると今度は、脳から胃に対して指令を送りタンパク質の消化・吸収を促進させるのです。
脂肪球が小さく吸収されやすい
もともと加工する前の乳の中では、脂肪は球状で存在します。
しかも、その球は大きいので、消化しづらいものです。
しかしチーズでは、発酵・熟成の過程で分解されるため、脂肪球が小さくなっています。
ですから、原料の乳と比べると消化されやすくなっているのです。
チーズの消化について、詳しくはこちらをご覧ください。
美容と健康に役立つ成分が豊富
ここまでで、寝る前に食べると良くないとされる原因について、チーズを食べた場合には少なくなることがご理解いただけたでしょう。
しかし、これだけではありません。
栄養豊富なチーズには多くのメリットがあるため、食べることで美容・健康に良い効果をもたらし、生活の質を向上させることもできるのです。
どのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
ビタミンAにより美肌効果がある
チーズにはビタミンAが多く含まれています。
このビタミンAは、皮膚や粘膜を健康に保ち、美肌や免疫力アップに効果があります。
さらに、チーズに含まれるパルミチン酸という成分とあいまって、ビタミンAは安定して効果を発揮して美しい容姿を維持するのに貢献します。
ビタミンB2により新陳代謝が活発になる
チーズに多く含まれるビタミンのもう一つがビタミンB2です。
ビタミンB2には、新陳代謝を促進する働きがあります。
ですから、いわゆるターンオーバー(肌の生まれ変わり)をスムーズに行うには必須のビタミンです。
ビタミンAで皮膚や粘膜を健康を維持し、ビタミンB2で新陳代謝を活発にすることで、美しい外見を保てます。
また、ビタミンB2には体内の脂肪を燃焼させてエネルギーに変換する働きもありますので、体脂肪蓄積の抑制・疲労回復にも効果があり、健康的な生活を送るのにも欠かせません。
リン酸カルシウムにより虫歯予防になる
意外だと思われるかもしれませんが、チーズが虫歯予防によいのは、WHO(世界保健機関)も認めた効果です。
チーズにはカルシウムとリンが多く含まれており、結合することでリン酸カルシウムとなります。
また、歯の表面のエナメル質を構成しているのが、このリン酸カルシウムの一種である「ハイドロキシアパタイト」です。
歯のエナメル質は酸の影響などで溶け出して穴が開くことがあるのですが、チーズを食べるとリン酸カルシウムが唾液に溶け込んで、この穴を塞いでくれます。
同時に、再石灰化も起こることで、虫歯になるのを防げます。
さらに、チーズは口中をアルカリ性にする働きもあり、酸でエナメル質が溶けだすこと自体を抑えますので、虫歯の心配が少ない食品です。
ただし、歯磨きをしなくてもよいわけではありませんので、寝る前の歯磨きは忘れないようにしてください。
カルシウムにより骨粗しょう症予防になる
チーズが多くのカルシウムを含んでいることもご存知でしょう。
このカルシウムを十分な量摂取することで、期待できるのが骨粗しょう症の予防です。
私たち日本人は、カルシウム不足になりやすいといわれていますが、チーズを食べることで効率的にカルシウムを摂取することができます。
いわゆる「ベビーチーズ」といわれる、20g程度に小分けされているチーズがありますが、これ一つで1日に必要なカルシウムのなんと1/5を摂ることができます。
しかも、吸収率もすべての食品の中で高水準です。
骨を強く保つためにも、チーズは大きく役立ちます。
チーズのカルシウムについて、詳しくはこちらをご覧ください。
その他の美容・健康効果をまとめて紹介
美容・健康への効果のうち、代表的なものを4つ挙げましたが、実はまだまだ残っています。
しかし、すべてについて詳しく説明できませんので、効果だけを列挙します。
・血糖値を下げる
・血管年齢を若返らせる
・認知症を予防する
・高血圧を予防する
・がん細胞の増殖を抑制する
・循環器系疾患を予防する
・胃かいようを予防する
チーズの美容・健康効果について、詳しくはこちらをご覧ください。
寝る前にチーズを食べる際の注意点
寝る前に食べるなら、チーズがおすすめであることをお伝えしましたが、それでもいくつかは注意しなければなrないことがあります。
ご紹介しますので、ぜひこれらのことはお守りください。
寝る30~60分前には食べ終わる
いくら寝る前にはチーズが良いとはいえ、寝る直前のギリギリまで食べるのは避けるようにしてください。
食後少なくとも30分は空けて、胃腸が落ち着いてから寝るようにしましょう。
食べ過ぎない
チーズは消化に良く、脂肪が蓄積されにくいとはいえ、大量に食べればそのメリットは少なくなっていきます。
本来、チーズは少量で満足感を得られる食品なので、大量に食べることはないと思うのですが、いわゆるドカ食いをしてしまうと満腹を感じるまでにたくさん食べてしまうことになりかねません。
ですから、食べ過ぎてしまわないよう、少しずつゆっくりと味わいながら食べてください。
カロリー・糖質低めのチーズにする
後述しますが、チーズは種類によって、カロリーの高さや糖質・脂質の量が大きく異なります。
いくらチーズは寝る前に食べてもよいとはいえ、これらが低いもの・少ないもののほうがより良いことは間違いありません。
寝る前にはどの種類のチーズが適しているのかを、確認しておきましょう。
寝る前におすすめのチーズの種類は?
チーズの種類により、カロリーや糖質、脂質が異なることは述べましたが、ではそれぞれどの程度含まれるのかを表で示します。
この中から、寝る前におすすめのチーズを5つ選んでご紹介します。
チーズの栄養(100g中)
種類 | 名称 | カロリー (kcal) | 脂質 (g) | 糖質(≒炭水化物) (g) | タンパク質(g) | カルシウム (mg) | ビタミンA (μg) | ビタミンB2 (mg) | 食塩相当量 (g) |
ナチュラルチーズ | カッテージ | 99 | 4.5 | 1.9 | 13.3 | 55 | 37 | 0.15 | 1.0 |
リコッタ | 159 | 11.5 | 6.7 | 7.1 | 340 | 160 | 0.21 | 0.4 | |
モッツァレラ | 269 | 19.9 | 4.2 | 18.4 | 330 | 280 | 0.19 | 0.2 | |
マスカルポーネ | 273 | 28.2 | 4.3 | 4.4 | 150 | 390 | 0.17 | 0.1 | |
カマンベール | 291 | 24.7 | 0.9 | 19.1 | 460 | 240 | 0.48 | 2.0 | |
クリーム | 313 | 33.0 | 2.3 | 8.2 | 70 | 250 | 0.22 | 0.7 | |
エダム | 321 | 25.0 | 1.4 | 28.9 | 660 | 250 | 0.42 | 2.0 | |
ブルー | 326 | 29.0 | 1.0 | 18.8 | 590 | 280 | 0.42 | 3.8 | |
ゴーダ | 356 | 29.0 | 1.4 | 25.8 | 680 | 270 | 0.33 | 2.0 | |
チェダー | 390 | 33.8 | 1.4 | 25.7 | 740 | 330 | 0.45 | 2.0 | |
エメンタール | 398 | 33.6 | 1.6 | 27.3 | 1200 | 220 | 0.48 | 1.3 | |
パルミジャーノ | 445 | 30.8 | 1.9 | 44.0 | 1300 | 240 | 0.68 | 3.8 | |
プロセスチーズ | 313 | 26.0 | 1.3 | 22.7 | 630 | 260 | 0.38 | 2.8 |
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
カッテージ
脱脂乳を原料としているので、脂質が少ないチーズです。
そのため、カロリーは控えめとなっていますが、タンパク質などの栄養素は十分に含んでいます。
ですから、寝る前に食べるのにピッタリといえるでしょう。
リコッタ
チーズは製造時、乳酸菌や凝乳酵素を加えてカード(固形分)とホエイ(水分)に分離させます。
通常は、カードが製品化されるのですが、リコッタに関してはホエイのほうを加熱して製品にします。
ホエイには脂肪分が少ないため、リコッタは低脂質が特徴です。
よって、脂質を特に控えたいときにおすすめです。
モッツァレラ
ほとんどのチーズと同様に、全乳を使用し、カードから作られるモッツァレラはカロリー、脂質共に前の2つよりも高くはなるものの、チーズ全体の中では低めとなります。
モッツァレラはスーパーなどで手に入れやすいというメリットがあるので、カッテージやリコッタが買えない時には1番目の候補にするとよいでしょう。
マスカルポーネ
同じく、カッテージやリコッタに比べるとカロリーは高めですが、チーズ全体の中では低く抑えられてます。
ただし、脂質・糖質に関しては比較的高めなので意識しておいてください。
マスカルポーネはティラミスの材料で有名で、クリーミーな味わいが特徴です。
デザート感覚で、ハチミツをかけて食べるなどをするとよいでしょう。
カマンベール
熟成を楽しみながら食べるイメージがあり、こってりした印象があるカマンベールですが、意外にもカロリーや脂質、糖質は低めです。
とくに、糖質に関しては、すべてのチーズの種類中で最も低くなっています。
また、ほとんどのスーパーやコンビニでも売られているため、急に食べたくなったときにも重宝します。
ただし、塩分は高めで、今回おすすめしている5種類の中では最も高くなっています。
塩分の摂り過ぎは翌日のむくみとなって表れやすいので、食べ過ぎには気をつけましょう。
カマンベールチーズについて、詳しくはこちらをご覧ください。
まとめ
今回は、寝る前に食べるなら、他の食品よりもチーズがおすすめということでお話しをしました。
もちろん、寝る前には何も食べないのが理想なのですが、やむを得ない時にはチーズを選ぶとよいでしょう。
ただ、消極的な理由だけでなく、美容や健康のことを考えるとチーズはとても良い食品です。
そういう点からも、チーズを選ぶのがおすすめです。
しかし、食べるタイミングや量、チーズの種類には気をつけてください。
これらを守らなければ、せっかくのチーズの良い効果も帳消しになってしまいます。
寝る前に食べることはネガティブなイメージが強いものですが、ぜひポジティブにチーズを召し上がってください。