チーズに含まれる「セルロース」とは何のこと?体に悪いの?

セルロース

「セルロース」は、しばしばチーズに入れられるものです。添加物の一種であり、議題にもよくのぼるこの「セルロース」を取り上げ、

・セルロースとは何か

・セルロースは何のために使われているのか

・セルロースの危険性について

・セルロースを使っていないチーズとは

について解説していきます。

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目次

セルロースとは食物繊維のうちの一種です

セルロースは、英語では“cellulose”と書きます。単純な糖であるβ-グルコースが結合して作られる成分であり、自然界に広く存在します。

セルロースの化学が始まった瞬間は記録されていませんが、おそらく1830年代〜1840年ごろと考えられています。フランスで端を発した研究であり、それから180年ほど経とうとする現在においてもセルロースを使った商品開発が広く進められています。

セルロースは、食物繊維のうちの一種です。自然界には数多くの食物繊維が存在しますが、それらの多くは便秘や便通の改善を目的として食べ物に配合されます。

またセルロースは、スキンケアアイテムなどにもよく入れられています。「なぜセルロースが配合されるのか」については次の項目で紹介しますが、私たちの身の回りに存在するさまざまなものに広く利用されていると考えてよいでしょう。

セルロースは何のために使われている?

ピザ用チーズ

チーズにセルロースが含まれている場合、セルロースには「くっつき防止」の働きが期待されています

たとえば私たちが日常の生活で便利に使っている粉チーズや、ピザ用のチーズなどにはこのセルロースがよく含まれています。そのままの状態ではお互いにくっつきあってしまうチーズが、セルロースを配合することで適度に離れやすくなるのです。

粉チーズやピザ用のチーズが、「ごそっと一度に出てきてしまう」「全然ばらけなくて困った」などのような状態にならない理由は、このセルロースにあるのです。

またセルロースは、アイスクリームなどにも含まれています。セルロースは適度な粘り気を出すため、これらを扱いやすくする効果がありますし、また食感を良くする効果もあります。非常に便利に使用される添加物であり、私たちにとって身近なものだといえるでしょう。

今回は「チーズ」に入っているセルロースについて取り上げていきますが、それ以外の場所でもセルロースは大活躍しています。

たとえば、口紅などのメイクアップアイテムにもセルロースは利用されています。ある程度の粘り気を持つため、皮脂を形成するための成分として使われているのです。

またセルロースに硝酸を加えることで得られる「綿火薬」は火薬や接着剤としても使われますし、ナタデココと同じ製法で作られるバイオセルロースは繊維シートとなってスキンケア用のシートパックとして利用されます。

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セルロースは本当に「不健康な」ものか?

女性

セルロースの話を取り上げると、しばしば、

「セルロースは添加物だから体に悪い」

「セルロースはかさましのためだけに入れられている」

「セルロースは木材から作られているから、そんなものは不健康だ」

などのようにいわれます。

これは本当に正しい意見なのでしょうか。

一つずつ見ていきましょう。

「セルロースは添加物だから体に良くない」という理論について

セルロースは確かに添加物のうちの一種です。しかし「添加物」は、単純に「物(主に食べ物)に入れられる成分」程度の意味しか持ちません。つまり、私たちが当たり前に食べている塩なども「添加物」です。

大事な話なのですが、セルロースには現在健康被害は報告されていません

結晶セルロース(セルロースの一部分のみで構成されたものだが、化学的に見ればセルロースと同様のもの)について、日本医薬品添加剤協会がその安全性をまとめていますが、そこには、

“ヒトへの毒性を示唆するとの証拠はない―引用:日本医薬品添加剤協会「結晶セルロース」と明言されています。ラットにおける実験でもセルロースが悪影響を及ぼすことはなかったとされているうえ、セルロースを摂取したことによる健康被害は報告されていないので、セルロースの摂取が体に良くないという根拠はありません

日本人の食生活では食物繊維の過剰摂取を心配しなければならないようなことは、基本的にはありません。ただ、セルロースは食物繊維の一種ではあるため、「サプリメントなどからも食物繊維を大量に取っている」という人の場合は、お腹が少し緩くなる可能性はあるかもしれません。

もっともこれはセルロースそのものの副作用というわけではありませんし、明らかに多すぎる量を取らない限りはまず問題はないでしょう。

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「セルロースはかさましのためだけに入れられている」という理論について

おそらくこの理論は、2016年の2月16日にJLLから出された“The Parmesan Cheese You Sprinkle on Your Penne Could Be Wood

Some brands promising 100 percent purity contained no Parmesan at all.“に端を発している理論だと思われます。

このなかでは、「セルロースロースは安全な添加物だが、許容量は2~4%程度だとされている。しかし一部の『100%パルメザンチーズ』のなかには8.8%のセルロースが含まれていたし、ほかの会社のものには7.8%含まれていた。『セルロースが含まれている』と書かれていないものでも、0.3%や3.8%のセルロースが含まれていた」としています。

これを見ればたしかに、「セルロースがかさましのために入れられている」「セルロースが入っていると表記されていないものでも、入っている可能性がある」とはいえます。

ただこれはあくまでアメリカで発表された記事ではあります。そのため、現在日本で販売されているチーズにおいて、「すべてのチーズにセルロースが含まれている「含まれているセルロースの量は、1割以上だ」「かさましを主な目的として、セルロースが配合されている」と断言するのは時期尚早とはいえるでしょう。

出典:JLL“The Parmesan Cheese You Sprinkle on Your Penne Could Be Wood

Some brands promising 100 percent purity contained no Parmesan at all.“

「セルロースは木材から作られているから、そんなものは不健康だ」の理論について

上記の記事では、「木材パルプを処理して、そこから得られるセルロースを商品に添加していた」とされています。

たしかに、木材からでもセルロースは得られます。そもそもセルロースは自然界のさまざまな植物に存在するものであって、野菜などにもこれは含まれています。私たちが摂取する食物繊維のうちの80パーセント程度が植物由来のセルロースとされていますから、これは決しておかしな話ではありません。

また、「木材から作られるセルロースを食品に入れると、その食品は危険なものになる」という考え方は誤りです。表記の記事が出た年と同じ2016年に日本では、「木材パルプを分解・粉砕して得られたセルロースから、ダイエット用の食品を開発した」と報じられました。

「木材から作られるセルロース」という言葉に、「体に悪そう」「木なんて食べられないのに」と悪い印象を抱く人もいるかもしれません。しかしそれはやや短絡的な考え方だといえます。

出典:日本経済新聞「オーミケンシ、木材パルプ使い低カロリー食品 女性に照準」

日本経済新聞
オーミケンシ、木材パルプ使い低カロリー食品 女性に照準 - 日本経済新聞 オーミケンシは木材パルプを原料にした低カロリーの健康食品を10日に発売する。パルプ由来のセルロースとこんにゃくの成分を混ぜ、食感を改善した。まずインターネット通販...
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セルロース不使用のチーズを選びたい! どうすればいい?

カットされた様々なチーズ

ただ、「セルロースは安全なものだと言われているが、どうせなら混ざりけなしの純粋なチーズを食べてみたい」「セルロースが入っているものとセルロースが入っていないものを食べ比べて、より自分の好きな方を選びたい」と考える人もいるでしょう。

そのような人には、セルロース不使用のチーズがおすすめです。

ピザ用のチーズでも粉チーズでも、セルロース不使用のチーズは販売されています。意外なほどに選択肢も広く、混ざりけのない味を楽しむことができます。チーズ本来の味を楽しむことができるため、真摯にチーズの味を追求したい人にはおすすめです。

また、セルロース不使用のチーズはセルロースを使用しているチーズに比べると少し割高な傾向にありますが、もともとの値段がそれほど高いものではありませんから、大きな経済的負担にはなりにくいでしょう。

セルロースを使用しているか使用していないかは、成分表を見ればわかります。セルロース不使用のチーズの場合、「生乳 食塩」とのみ書かれていることが多いかと思われます。

また、セルロース不使用のチーズはそれをウリにしていることも多く、表面に「セルロース不使用」などの文字が書かれているケースも非常に多いといえます。

ちなみに、すべての商品を確かめたわけではありませんが、セルロース不使用としているチーズは保存料や着色料も添加していないことが多いように思えます。ついでにこのあたりについてもチェックしておくことをおすすめします。

なお、「本当においしいチーズが食べたい!」「いつでもおいしい粉チーズが食べたい!」ということであれば、チーズ専門店でパルミジャーノ・レッジャーノなどを買い求め、食べる直前に自分ですりおろすとよいでしょう。

これらは9世紀の製法を使い定められた原料で作られているものですし、おろしたてのチーズは香りもよく食味に優れています。削りたてのものを使えば、チーズ同士がくっつく心配もいりません。現在は家でも手軽にチーズを削ることのできる削り器も、通販などで簡単に取り寄せられるようになっています。

セルロースは、何かと話題に上る成分です。

セルロースの安全性や特性を知ったうえで、セルロース不使用のチーズとセルロース使用のチーズを選び分けるとよいでしょう。

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