あなたは、チーズの種類がどのくらいあるか知っていますか?
「カマンベール」や「モッツァレラ」「ゴルゴンゾーラ」……と、いろいろ浮かんできますよね。
ただ、これら数多くのチーズの種類も、大きくまとめると「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」のたった2種類に分類されます。
では、この2種類の違いはわかりますか?
違いの説明となると、案外困ってしまうのではないでしょうか。
そこで今回は、ナチュラルチーズとプロセスチーズの違いについてお話ししてまいります。
・作り方の違い
・味の違い
・どっちが体に良いか
といったことを解説します。 きっと新たな発見があると思いますので、ぜひ最後までお読みください。
ナチュラルチーズとプロセスチーズの作り方の違い
ナチュラルチーズもプロセスチーズも、牛やヤギ、羊などから搾った動物性乳が原料という点では同じです。
ただし、作り方は異なっていて、それがナチュラルチーズとプロセスチーズの違いとなっています。
ここでは、それぞれの作り方を見ていきましょう。
ナチュラルチーズの作り方
ナチュラルチーズとは、牛やヤギ、羊などの動物の乳を発酵させて、その後に高温の加熱加工をせずに作られるチーズのことです。
ナチュラルチーズの作り方は、大きく分けて以下の4つの工程からなります。
1)乳を発酵させる 乳に乳酸菌やレンネットという酵素を加えて発酵させます。すると、乳は固まってカードと呼ばれる固体と、水分であるホエイに分離します。 |
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2)カードを切る カードを切ってホエイを絞り出します。このとき、カードの大きさや切り方によって、チーズの硬さや水分量が変わります。一般的に、カードを細かく切れば切るほど、チーズは硬くなります。 |
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3)カードを塩漬けする カードに塩を加えて塩漬けします。塩は、チーズの味や保存性を高めるだけでなく、乳酸菌の活動を調節して発酵度合いをコントロールする役割も果たします。 |
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4)カードを熟成させる カードを型に入れて圧力をかけて形を整えた後、適切な温度や湿度の環境で熟成させます。熟成期間は、チーズの種類や品質によって異なりますが、数日から数年まで様々です。熟成中には、乳酸菌やカビなどの微生物が働いて、チーズの風味や食感を生み出します。 |
以上が、ナチュラルチーズの基本的な作り方です。
ナチュラルチーズは、この工程で様々なバリエーションが生まれます。
例えば、発酵させる際に使う乳酸菌やレンネットの種類や量、塩漬けする際に加える塩の種類や量、熟成させる際に使う型やカビの種類などが違うと、それぞれ異なる特徴のナチュラルチーズができあがります。
ナチュラルチーズの代表的な種類は以下のとおりです。
チーズの種類 | 特徴・代表的銘柄 |
フレッシュチーズ | ・発酵後に水分を切って塩を加えるだけのシンプルなチーズ ・水分が多いため、低カロリーでさっぱりとした味わい ・クリームチーズ、モッツァレラチーズ、カッテージチーズなど |
白カビチーズ | ・表面に白いカビを生やしたチーズ ・白カビが、チーズに独特の風味と柔らかさを与える ・カマンベール、ブリーなど |
ウォッシュチーズ | ・発酵後のカードの表面に塩水や酒などを塗って熟成させるチーズ ・皮に強い匂いがあるが、中身はクリーミーで独特のうま味がある ・エポワス、タレッジョなど |
青カビ(ブルー)チーズ | ・発酵後に青カビを加えて熟成させるチーズ ・青カビがチーズの内部や表面に青や緑の斑点を作り、特徴的な匂いや風味を生み出す ・ロックフォール、ゴルゴンゾーラ、スティルトンなど |
セミハードチーズ | ・発酵後のカードを圧縮し水分を抜いたチーズで、水分含有率は38~46%程度 ・発酵の過程で乳酸菌が作り出す酸味や香りが特徴的 ・チェダー、ゴーダ、エメンタールなど |
ハードチーズ | ・発酵後のカードを圧縮し、水分含有率を38%以下にして熟成させたチーズ ・固くて塩味が強いのが特徴 ・パルミジャーノ・レッジャーノやグリュイエールなど |
プロセスチーズの作り方
プロセスチーズは、ハードチーズやセミハードチーズなどのナチュラルチーズを加熱して溶かして再加工したものです。
具体的な作り方は以下の通りです。
1)ナチュラルチーズを細かく刻む 最初に、ハードチーズやセミハードチーズなどのナチュラルチーズを小さなかけらに切ります。 |
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2)溶かしやすくするために、乳化剤や塩などの添加物を加える チーズを溶けやすくさせるために、乳化剤や塩などの添加物を混ぜ込みます。これにより、チーズが滑らかに溶けやすくなります。 |
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3)高温で加熱して溶かす 加えた添加物と一緒に、ナチュラルチーズを高温で加熱して溶かします。これにより、プロセスチーズの滑らかな質感が得られます。 |
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4)型に流し込んで冷やし固める 溶かしたチーズを特定の型に流し込んで冷やし固めます。これにより、プロセスチーズの様々な形状が作られます。 |
このようにして作られたプロセスチーズは、ナチュラルチーズよりも長期保存が可能です。
また、溶けやすく伸びやすいので、料理に使いやすいという特徴もあります。
プロセスチーズは、使うナチュラルチーズの種類や他に加える材料などにより味や栄養価が様々なので、プロセスチーズを選ぶときは、原材料や成分表をよく見て比較することが大切です。
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ナチュラルチーズとプロセスチーズの味の違い
続いては、ナチュラルチーズとプロセスチーズの味の違いについて、詳しく見ていきましょう。
ナチュラルチーズとプロセスチーズは、作り方や原材料によって、味や風味に大きな差が生まれます。
それぞれの味の特徴を説明します。
チーズの種類 | 味の特徴 |
ナチュラルチーズ | ・一般的にプロセスチーズに比べて、より濃厚でコクのある味 ・熟成によって味が変化するため、食べるタイミングによって異なる味わいを楽しむことができる ・様々な種類があり、それぞれに独自の製法や熟成方法があるため、風味や食感、香りなどに大きな違いがある |
プロセスチーズ | ・加熱と乳化剤・塩の添加により、ナチュラルチーズと比較して風味がより均一に感じられる ・一般的に、まろやかでクリーミーな口当たりを持つ ・食べやすく、様々な料理に使いやすい |
ナチュラルチーズの味の特徴
まずお伝えしたいのが、ナチュラルチーズをひとくくりにして、味の特徴を言うことは難しいということです。
ナチュラルチーズには、先ほど説明したとおり様々な種類があり、それぞれに独自の製法や熟成方法があるため、風味や食感、香りなどに大きな違いが生まれるからです。
ただ、それらを踏まえてナチュラルチーズ全体の特徴を挙げるとすれば、一般的にプロセスチーズに比べて、より濃厚でコクのある味わいがあるというところでしょう。
また、熟成によって味が変化するため、食べるタイミングによっていろいろな味わいを楽しめるところもナチュラルチーズの特徴だといえます。
プロセスチーズの味の特徴
一方でプロセスチーズは、ナチュラルチーズを加熱して溶かし、乳化剤や塩などを加えて作るため、ナチュラルチーズに比べて風味が均一という特徴があります。
プロセスチーズの味は、原料となるナチュラルチーズによって異なりますが、一般的にはまろやかでクリーミーな口当たりです。
また塩分や乳化剤の量によっても味が変わり、塩分が多いとしょっぱく感じられ、乳化剤が多いとコクや風味が減ります。
以上のことから、プロセスチーズは、ナチュラルチーズほどには独特の風味や個性をあまり感じられません。
しかし、その代わりに食べやすく、様々な料理にも使いやすいというメリットがあります。
ナチュラルチーズとプロセスチーズの健康効果の違い
では最後に、ナチュラルチーズとプロセスチーズの健康効果の違いについて見ていきましょう。
ナチュラルチーズとプロセスチーズは、作り方や味だけでなく、体に与える影響も異なります。
そこで、健康への違いを生み出す原因についても説明します。
大きな違いは乳酸菌
ナチュラルチーズとプロセスチーズの健康効果の違いを生み出す、大きなポイントは乳酸菌の活性です。
つまり、加熱しないナチュラルチーズでは乳酸菌が活きているのに対し、加熱加工をするプロセスチーズでは死滅しているという点が、違いを生み出しているということです。
乳酸菌は、腸内環境を整えたり、免疫力を高めたりする働きがあります。
ですから、その乳酸菌が活きているナチュラルチーズは、プロセスチーズよりも乳酸菌の効果を期待できるといえるでしょう。
ただし、乳酸菌は死滅しても効果が全くなくなるわけではない、ともされています。
また、乳酸菌の種類や量は、ナチュラルチーズの種類や製造方法によって異なるうえ、乳酸菌だけでなく、タンパク質やカルシウムなどの栄養素もチーズには豊富に含まれています。
これらの栄養素も健康に影響する要素ですので、一概にナチュラルチーズがプロセスチーズよりも優れているとはいえません。
どちらのチーズもバランスよく摂取することが大切です。
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より多くの健康効果を期待できるナチュラルチーズとは
ナチュラルチーズには、様々な種類がありますが、中でも白カビチーズと青カビチーズは、他のチーズよりも健康効果が高いといわれています。
それはなぜでしょうか?
それは「βラクトリン」や「ラクトトリペプチド」「パルミチン酸」などの成分により「認知症予防」や「高血圧抑制」「アンチエイジング」などの効果が期待できるからです。
これらの成分は、ナチュラルチーズの中でも白カビチーズと青カビチーズに特に多く含まれています。
なぜかというと、白カビチーズと青カビチーズは、他のナチュラルチーズよりも長い時間熟成させることで、カビがより多くの成分を作り出しているからです。
白カビチーズや青カビチーズは、独特の風味があるため、好みが分かれるかもしれません。
しかし、その風味こそが健康に良い証拠なのですから、ぜひ食生活に取り入れてみてください。
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妊婦にはプロセスチーズがおすすめ
一般的に、タンパク質やカルシウムなどの栄養素を多く必要とする妊婦さんには、チーズはおすすめの食品といえるでしょう。
しかし、妊婦さんが食べるなら、プロセスチーズだけにしておくほうが良いようです。
なぜなら、プロセスチーズのほうがリステリア菌などの食中毒のリスクが低いからです。
リステリア菌は、ナチュラルチーズの製造過程で混入する可能性があり、この菌に感染すると、流産や早産などの重大な影響を及ぼすことがあります。
プロセスチーズはナチュラルチーズを加熱して作られますので、この過程でリステリア菌などの細菌は死滅します。
そのため、生で食べるなら、プロセスチーズのほうが安全です。
もちろん、プロセスチーズにもタンパク質やカルシウムなどの栄養素は豊富に含まれていますので、健康効果も十分得られます。
まとめ
今回は、ナチュラルチーズとプロセスチーズの違いについて、作り方、味、健康効果の3つの観点から解説しました。
ナチュラルチーズは、動物性乳を発酵させて、発酵後は非加熱で作られるチーズで、種類や熟成度によって様々な味わいが楽しめます。
プロセスチーズは、ナチュラルチーズを加熱加工して作られるチーズで、長期保存が可能で味も均一化されているのが特徴です。
健康効果に関しては、ナチュラルチーズには活きた乳酸菌が豊富に含まれており、腸内環境や免疫力の向上に役立ちます。
また、白カビチーズや青カビチーズには、他のナチュラルチーズ以上の健康効果が期待できることもわかりました。
ただし、妊婦さんにはリステリア菌などの感染を防ぐために、プロセスチーズを選ぶことをおすすめします。
ナチュラルチーズとプロセスチーズは、違いはあるものの、それぞれに特徴を持っています。 自分の好みや目的に合わせて、バランス良く食べ分けるとよいでしょう。