あなたはカルシウム不足を気にしていますか?
栄養過多といわれる現代ですが、カルシウムに関しては多くの日本人が慢性的に不足しているというデータがあります。
カルシウムは、育ち盛りのお子様の健全な成長に必要なばかりでなく、大人でも不足すると病気の原因になりますので、あらゆる人の健康的な生活に欠かせません。
そのカルシウムを効率よく摂取できる食品として、おすすめするのがチーズ。おいしい上にそのままでも手軽に食べられて、カルシウム摂取には絶好の食べ物です。
今回は、カルシウムがいかに私たちの体にとって重要かという話から、カルシウムの摂取にはチーズが最適であることを解説し、チーズの中でカルシウムの量が多い種類はどれかといったことやカルシウムの吸収率のこと、どのように摂るといいのかといったことまでお伝えしてまいります。
カルシウムは体にとって大事なミネラル
私たちの体には、体重の1~2%のカルシウムが存在しているといわれています。そのうちの約99%が骨や歯に含まれていて、それ以外は血液の凝固を促したり、心臓の収縮や筋肉の興奮抑制をしたりしています。
この大事なカルシウムが不足するとどうなるのでしょうか。また、不足しないためにはどれほどの量を摂らなければならないのでしょうか。
カルシウム不足は身近なリスク
この数十年、日本人にはカルシウムが足りていないといわれ続けています。特に1970年代以降、摂取量は増えるどころか減る一方です。
なぜカルシウムが不足し続けるのか、カルシウムが不足するとどうなるのでしょうか。
なぜ日本人にカルシウム不足が多いのか
理由の1つは、日本に火山が多いことです。火山灰地の土壌中にはカルシウムが少ないので、栽培された野菜や飲料水などにはあまりカルシウムが含まれません。それで、国内の食材や水ばかりで生活しているとカルシウムが不足がちとなります。
もう1つ、和食にはカルシウムの多い食材であるバターやチーズなどの乳製品がほとんど使われません。このことも、意識して摂取しなければ欧米に比べてカルシウムが不足しやすい理由となっています。
カルシウム不足が引き起こす症状
カルシウム不足が原因となるもので最も気になるのは、骨密度の低下です。
骨密度とは、カルシウムなどのミネラルがどの程度骨に含まれているかを表すもので、骨の強さの目安です。20~30代をピークとして徐々に下がり始め、特に女性では女性ホルモンのエストロゲンの減少に伴って低下が顕著となります。
骨密度が低いと、骨がスカスカになって骨折しやすくなる「骨粗しょう症」となる危険性が高まります。
他にもあり、イライラする、脚がつる、まぶたがピクピクするなどがカルシウム不足で起こる症状です。
人間の骨も肌などと同様に新陳代謝しており、骨の構成要素のカルシウムは日々少しずつ排出されています。ですから、適量を補い続けなければ骨を作る材料が不足してしまい、骨密度の低下などに結びつきます。
1日に必要な摂取量は?
では、私たちに必要なカルシウムの量はどれほどなのでしょうか?
厚生労働省によると、日本人の1日あたりの推奨カルシウム摂取量平均は男性695mg、女性641mgとされています。対して、実際の摂取量平均は男性529mg、女性507mgと相当量が不足していることがわかっています。
推奨量は年代や性別によって異なりますので、下の表を参考にして不足しないようカルシウムを摂取してください。
カルシウムの食事摂取基準 推奨量(mg/日)8歳以上
年齢 | 男性 | 女性 |
8~9歳 | 650 | 750 |
10~11歳 | 700 | 750 |
12~14歳 | 1,000 | 800 |
15~17歳 | 800 | 650 |
18~29歳 | 800 | 650 |
30~49歳 | 650 | 650 |
50~69歳 | 700 | 650 |
70歳以上 | 700 | 650 |
引用:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2015年版)」
カルシウムを摂るなら、量でも吸収率でもチーズがベスト
このように日本人に不足しがちなカルシウムですが、毎日適量を取り続けるにはどうしたらいいのでしょうか。
その答えは、カルシウムの量が多く、吸収率も高い乳製品を頻繁に摂取することです。特にチーズは、100gを作るのに1000〜1400mlの乳が使われ栄養成分が濃縮されていますので、乳製品の中でも含まれるカルシウムの量が多い食品です。
さらに、乳糖が分解されており、牛乳を飲むとお腹がゆるくなる乳糖不耐症の人にも心配ありませんので、日々の生活に取り入れやすいでしょう。
チーズと他の食品のカルシウム量比較
チーズが効率よくカルシウムを摂取できる点を、他の食品との比較で見てみましょう。
チーズには重量の割に多くのカルシウムが含まれているのがわかります。
一食あたりのカルシウム量比較
食品 | カルシウム量 |
プロセスチーズ1個(18g) | 104mg |
もめん豆腐1/4丁(75g) | 70mg |
小松菜のおひたし(50g) | 75mg |
ひじきの煮物(干ひじき5g) | 50mg |
あじの干物1尾(105g) | 60mg |
目玉焼き1個(60g) | 36mg |
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)から算出
カルシウムを効率よく摂取するには吸収率も重要
カルシウムを効率よく摂るには、食品に含まれるカルシウムの量だけでなく種類や吸収率といった、質も意識する必要があります。
摂取したカルシウムは小腸で吸収されますが、すべてが取り込まれるわけではありません。ですから、カルシウムの吸収率が高い食品から摂って、さらに吸収率を高める工夫も欠かせません。
カルシウムは種類によって吸収率が違う
カルシウムにはいくつもの種類がありますが、代表的なのが魚などに含まれるリン酸カルシウムやチーズなどの乳製品に含まれるカゼインカルシウムです。
リン酸カルシウムは骨や歯の健康に欠かせませんが、構造が強固なため体内に吸収しにくいという特性があります。一方、カゼインカルシウムはタンパク質と一緒に存在するため体内に吸収されやすい特性です。
また、消化する過程でできるカゼインホスホペプチド(CPP)が小腸でのカルシウムの吸収を助けるので、一層吸収率がよくなっています。
このため、チーズの原料となる乳はカルシウムの吸収率が40%あり、魚の33%、野菜の19%と比べて効率がよいのです。
カルシウムの吸収率を高めるには
チーズをはじめとする乳製品のカルシウム吸収率が、他の食品と比べて高いことはご理解いただけたかと思います。と同時に、カルシウムの吸収率が全体的にあまり高くないことにも気づかれたのではないでしょうか。
そこで、カルシウムのムダをなるべく少なくするよう、吸収率をよくする成分も一緒に摂るようにしてください。
それは、ビタミンDです。ビタミンDは、カルシウムの腸からの吸収を促進する働きを持っており、卵やいわしなどの魚類、レバーやしいたけなどに多く含まれています。
これらの食材とチーズを一緒に使った料理を食べるとカルシウムの吸収を良くするのに効果的です。
また、ビタミンDは食品から摂るだけでなく、紫外線を浴びることで体内でも合成されますので、カルシウムの吸収率を上げたければ、15分程度の日光浴をするのもおすすめです。
チーズは太りにくい
ここまで、チーズはカルシウムの量の点でも吸収率の点でも理想的な食品だとお伝えしてきましたが、チーズは脂肪分が多いので太りやすいのではと心配されているのではないでしょうか。
しかし、チーズなどに含まれる乳脂肪は、パルミチン酸などの消化されやすい短鎖および中鎖脂肪酸から作られています。
多くの油脂類に含まれている長鎖脂肪酸に比べてこれらは燃焼型の脂肪とされ、体の中で熱に変換されやすく身体に蓄積されにくいものなのです。
そもそも、チーズに多量に含まれているカルシウム自体が、脂肪の代謝を盛んにする働きを持っていますので、毎日チーズを食べると太りにくい体質になることが知られています。
チーズの中でカルシウム量が多い種類は?
世界中には多くのチーズがありますが、それではどういったものがカルシウム量が多い種類なのでしょうか。
代表的なものを表にまとめます。
チーズの栄養(100g中)
種類 | 名称 | カルシウム(mg) |
ナチュラルチーズ | カッテージ | 55 |
クリーム | 70 | |
モッツァレラ | 330 | |
カマンベール | 460 | |
ブルー | 590 | |
ゴーダ | 680 | |
チェダー | 740 | |
パルメザン | 1300 | |
プロセスチーズ | 630 | |
牛乳 | 110 |
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
この表をご覧いただくと、チーズの中でも含まれるカルシウム量にかなりの差があることにお気づきかと思います。
ただよく見ると、チーズの水分を少なくして長期間熟成させるもの、つまりハードタイプに近づくほど多くなっています。ですから、カルシウムの量が多い種類をお求めであれば、熟成が長いハードタイプのチーズをお選びいただくとよいでしょう。
また、パルメザンチーズはカルシウムの量が多い種類である上に、粉チーズとして様々な料理にふりかけて使うこともできます。
しかも、パスタやピザといった料理だけでなく、和食やエスニックなどにも幅広く合わせられます。カルシウムを多く摂りたいのであれば、お家に常備しておくとよいでしょう。
カルシウムを効率よく摂るには
チーズにはカルシウムが多量に含まれていて、さらには吸収率も高くて、効率よく摂取できるとお伝えしてきました。とはいっても、チーズだけで必要なカルシウムを摂るのは厳しいでしょう。
そこで、チーズと一緒に食べていただきたいカルシウムを多量に含む食材もご紹介しておきます。
また、カルシウムの摂取に気を遣うのであれば注意していただきたいことがありますので、それもお伝えしておきます。
カルシウムの量が多い食材
チーズだけでカルシウムを賄うのは大変だとお伝えしましたが、それ以前にチーズにはビタミンCや食物繊維が含まれていないためチーズばかりを食べていると栄養が偏る危険性もあります。
そこで、チーズ以外のカルシウムの量が多い食材も以下にご紹介します。代表的なものは以下の3つです。これらの食材を組み合わせて、栄養の偏りがない食事を心がけてください。
- 大豆製品
- 魚介類
- 野菜・海藻類
大豆製品
チーズなどの乳製品に次いでカルシウムの吸収率が高いのが豆腐や納豆などの大豆製品です。タンパク質も多く含むため、老化予防に効果的です。
納豆1パック(50g)にはおよそ45mgのカルシウムが含まれています。乳製品と比べるとカルシウム量が多いとはいえませんが、口にしやすい点も考えると積極的に食卓に並べたい食材です。
魚介類
魚介類のカルシウム吸収率は乳製品や大豆製品には劣りますが、やはり私たちには馴染みの深い食材です。私たちの健康に欠かせないDHAやEPAをたくさん含んでいるため、普段の食事には欠かせません。
サバの水煮缶(80g)にはおよそ208mgのカルシウムが含まれています。骨まで柔らかくなっていて丸々食べられますので、カルシウム補給の強い味方です。
野菜・海藻類
野菜・海藻類に含まれるカルシウムの吸収率は、実のところそこまで高いわけではありません。しかし、ビタミンやミネラル、食物繊維などの栄養素が多く、体の調子を整えるには絶好の食材なので、チーズの補助として積極的に摂るべきものでしょう。
モロヘイヤ100g中に約260mgのカルシウムが含まれています。他にも小松菜や水菜、昆布などに多いので、チーズと一緒にお料理に使ってみてください。
カルシウムを効率よく摂りたいときの注意点
カルシウムに関して気をつけていただきたいことがあります。
1つ目は、一緒に食べないでいただきたいものです。
カルシウムの吸収率は他のミネラルなどとのバランスに影響されます。例えば、インスタント食品や肉類にはリンが多く含まれているのですが、リンはカルシウムの吸収を阻害します。チーズなどでカルシウムを摂取しようと思うときは、これらの食品は避けるようにしてください。
2つ目は、カルシウムの摂りすぎについてです。
カルシウムを摂りすぎると、高カルシウム血症や高カルシウム尿症などの健康障害が起こる可能性があるといわれています。また、鉄などの他のミネラルの吸収を妨げることも知られています。
ただし、通常の食事でカルシウムの摂りすぎになることはほぼありません。サプリメントなどで摂取する場合に、摂りすぎないように気をつけましょう。
まとめ
我々現代の日本人にとって不足しがちなカルシウム。不足すると骨密度の低下などの健康問題に繋がります。
その問題を解決するのにチーズがとても有益な食材であるとお話してまいりました。カルシウムの量が多いだけでなく吸収率もよく、しかも太りにくい、とカルシウム摂取には理想的な食品です。
中でも、カルシウムの量が多い種類がハードタイプ。料理にかけるだけで手軽にカルシウムが摂取できる、粉チーズなどはいつもお家に置いておくとよいでしょう。
ただし、チーズばかりを食べるわけにはいきませんし、またチーズだけでは栄養が偏ってしまいますので、他の食材も取り入れてバランスの良い食事を心がけていただきたいです。
その他の注意点も守りながら、カルシウムをしっかり摂取して、丈夫な骨と歯で健康に過ごしてください。