パンやみかんにカビが生えてしまったら、迷わず処分しますよね。カビが生えたものを食べるとお腹を壊したり、病気になってしまうからです。
それなのにどうして、カビの生えたブルーチーズは、食べることができるのでしょうか?
みかんに生える青カビと、ブルーチーズに生えている青カビは、どちらも同じ「アオカビ属」の仲間ですが、実は種類が違います。
みかんに生えるカビと、ブルーチーズに生えているカビは別の種類 |
ブルーチーズに生えているカビは、「ペニシリウム・ロックフォルティ」という種類です。
ロックフォルティは全く無害なカビというわけではありませんが、適切な温度と湿度に管理されたチーズの中で繁殖している場合は、人間に害を及ぼすことはないのです。
ブルーチーズの中で正しく繁殖させたカビは食べても安全 |
この記事では、ブルーチーズに使われる青カビの種類、ブルーチーズに生えている青カビが安全な理由などについて、詳しく解説していきます。
また、ブルーチーズに他の種類の青カビが生えってしまったらどうすべきでしょうか?ブルーチーズの青カビがほかの食品に生えてしまった場合は、食べても安全なのでしょうか?
ブルーチーズとカビに関するさまざまな疑問にもお答えし、ブルーチーズを安心して食べるための危険なカビの見分け方について解説します。
<ブルーチーズとカビに関するさまざまな疑問> ・ブルーチーズに他の種類の青カビが生えたらどうすべき? ・ブルーチーズの青カビがほかの食品に生えたらどうすべき? ・ブルーチーズの青カビが増えた!食べても大丈夫? |
さらに、ブルーチーズを安全においしく食べるための上手な保存方法についても、ご紹介します。
<ブルーチーズの上手な保存方法> ・ブルーチーズは密閉して冷蔵庫で保存する ・ブルーチーズはオーブンシートなどで包むのがおすすめ ・ブルーチーズの賞味期限は10日程度 |
この記事を読むことで、ブルーチーズのカビに関する疑問や不安を解決し、安心しておいしく食べられるようになるでしょう。
ぜひ最後までご覧ください!
ブルーチーズの青カビは食べても大丈夫!その理由とは?
強い風味と刺激、深い味わいとコクが特徴的な、ブルーチーズ。一度食べてすっかりはまってしまった!という方も多いようで、日本での人気も年々高まっています。
しかし、初めてブルーチーズを食べる方にとってどうしても気になってしまうのが、「青カビ」の存在。ブルーチーズの断面にびっしりと生えた青カビを見ると、「本当に食べても大丈夫?」と、思ってしまいますよね。
そもそも、ブルーチーズに生えているカビはどのようなものなのでしょうか?どうして、食べることができるのでしょうか?
ブルーチーズに使われるのは2種類の青カビだけ
「青カビ」の正式名称は「ペニシリウム(Penicillium)」といいます。
ラテン語でブラシを意味する「ペニシリ」が、名前の由来で、ブラシのような形をしていることから、この名前がつけられました。日本では色で大まかに分類していますが、ペニシリウムが全て青い色をしているわけではありません。
青カビ(ペニシリウム)というのは総称で、ペニシリウム属にはおよそ300種類もの仲間がいます。空気中や土の中など、自然界のさまざまな場所に繁殖していて、それぞれ異なる性質・毒性を持っています。
たくさんのペニシリウム属のカビの中で、ブルーチーズに使われるのはたった2種類だけです。
・ペニシリウム・ロックフォルティ(Penicillium.roqueforti)
・ペニシリウム・グラーカム(Penicillium.galaucum)
全てのブルーチーズは、この2種類のカビを使って作られています。
ブルーチーズに使われる青カビは決して無害ではない
青カビの中には、人間の生活に役立つ特性を持つものもあります。
例えば、ペニシリウム・クリソゲナム(Penicillium.chrysogenum)という種類の青カビは、抗生物質であるペニシリンを作り出すことで知られています。青カビの正式名称「ペニシリウム」という名前を聞いて気づいた方も多いと思いかもしれません。
一方で、青カビの中には、毒性の高い物質を作り出したり、人に感染する危険な種類もあります。
ブルーチーズに使われるP.ロックフォルティ(P.グラーカムも同様)も実は、全く無害というわけではありません。毒性はそれほど高くありませんが、人にとって有害な物質を作り出す性質があるのです。
では、P.ロックフォルティを使ったブルーチーズは、どうして食べることができるのでしょうか?
チーズが青カビ(ロックフォルティ)の毒を分解している
ブルーチーズで使われるP.ロックフォルティ(P.グラーカムも同様)が繁殖すると、ロックフォルティン(roquefortine C)、PRトキシン(PR toxin)と呼ばれる成分を作り出すことがわかっています。ロックフォルティンとPRトキシンは、人間の体にとって有害な成分です。
ところが、温度と湿度を管理された環境で熟成されるチーズの中では、これらの毒性のある物質がほとんど分解されてしまうのです。
これが、「ブルーチーズに生えている青カビは食べても大丈夫」である理由です。
ただし、この2種類の青カビが、チーズ以外の食品で繁殖してしまった場合は食べてはいけません。同様に、この2種類以外の青カビや他のカビがブルーチーズで繁殖してしまった場合も危険です。
ブルーチーズの中で繁殖している青カビ(P.ロックフォルティ、P.グラーカム)だけは、食べても害がないということなのです。
P.ロックフォルティ P.グラーカム | 他の青カビ・カビ | |
チーズ | 食べてもOK | 食べると危険 |
チーズ以外の食品 | 食べると危険 | 食べると危険 |
青カビがブルーチーズ独特の風味と香りを作り出す
P.ロックフォルティという種類の青カビは、チーズの中で繁殖しているときだけは無害だということがわかりました。しかし、状況によってはとても危険な青カビを、一体なぜ、チーズにわざわざ植えつけようと考えたのでしょうか?
そのきっかけは、まったくの偶然によるものだったようです。
誕生のきっかけは、洞窟に置き忘れたパンとチーズ
世界で最も古い加工食品のひとつでもあるチーズ。そのはじまりは遥か紀元前にさかのぼり、なんと5000年以上もの歴史があるといわれています。
そのチーズに「青カビを繁殖させた」ものが、ブルーチーズですね。
ブルーチーズが誕生したのは2000年以上前とされていますが、はっきりとしたことはわかっていません。最も有力なブルーチーズの起源とされているのは、フランス南部のロックフォールという小さな村の洞窟の中で偶然出来上がったという説です。
洞窟に置き忘れたパンとチーズを、ずいぶん後になって取りに行くと、青カビだらけになっていました。しかしチーズは腐っておらず、青カビをはらってかじってみると、おどろくほどのおいしさだったというのです。
洞窟に住む天然の青カビがチーズの中で繁殖し、適度な温度と湿気が保たれた洞窟の中で熟成されたことで、おいしいブルーチーズができあがっていたのですね。
独特の風味と香りを持つ魅力的な青カビのチーズは、その後、世界中で作られるようになりました。
青カビがブルーチーズをおいしくする仕組み
青カビが繁殖したチーズは、一体、どうしておいしくなったのでしょうか?
羊飼いがパンとチーズを置き忘れてしまった洞窟に生息していたのは、P.ロックフォルティという種類の天然の青カビでした。
青カビ(P.ロックフォルティ)はチーズの中で成長しながら、チーズの成分と結びついてさまざまな働きをします。
そのひとつは、たんぱく質を分解して旨味成分であるアミノ酸を生み出すこと。
さらに、青カビはリパーゼという脂肪分解酵素を分泌し、リパーゼが脂肪を分解することでチーズに独特の風味が生まれます。
リパーゼによって分解された脂肪からは脂肪酸が発生し、そこから生成されたメチルケトンが、メチルケトンがブルーチーズの特徴的な香りを作り出す、という仕組みになっています。
これは青カビの働きの一部分でしかありませんが、こうした働きにより、ブルーチーズがほかのチーズと違った独特の風味と香り、深い味わいになるのです。
青カビがブルーチーズに与える健康への効能
青カビがブルーチーズに与える影響は、独特の風味だけではありません。
ブルーチーズには他の食品にはない健康への効能があることがわかっており、近年、さまざまな研究がすすめられています。
例えば、ブルーチーズには、血管を柔軟にする効果のある「ラクトトリペプチド」という成分が豊富に含まれているので、食べるだけで血管を若返らせることができます。
また、ブルーチーズに含まれる脂肪酸は、コレステロールの値を下げたり、アンチエイジングの効果があり、認知症を予防するも期待されているのです。
青カビがチーズに与えるさまざまな可能性に、大きな注目が集まっています。
ブルーチーズの効能について気になる方は、下記の記事もご覧ください!
ブルーチーズにカビが生えた!食べてもOK?NG?
「冷蔵庫に保存しておいたブルーチーズを食べようと思ったら、カビが生えていた!」なんていう経験をしたことがある方は、意外と多いのではないでしょうか?
ブルーチーズはもともと青カビが生えているので、さらにカビが生えてしまった場合に食べてもよいのかどうか迷ってしまいますよね。
この章では、カビが生えたブルーチーズを食べても大丈夫?青カビが増えたブルーチーズを食べても大丈夫?といった、ブルーチーズのカビに関るすさまざまな疑問にお答えします。
ブルーチーズにもカビが生える?
ブルーチーズにはもともと青カビが生えているので、これ以上カビが生えることはない。あるいは、もとからカビが生えているのだから、多少増えても問題はなさそうに思えますよね。
でもそれは間違いです。
保存状態が悪かったり、冷蔵庫の中に長く入れっぱなしにしていると、ブルーチーズにも白カビや赤カビ、黒カビ、青カビなどが生えてしまう場合があるのです。
ブルーチーズにあとから生えてくるカビは、当然、もとからチーズの中に生えていた青カビとは、全く別のもの。カビの生えたブルーチーズは、パンや餅、ミカンなどの果物にカビが生えて腐ってしまったのと同じ状態です。
あとからカビが生えたブルーチーズは食べられる?
保存状態の悪いブルーチーズに生えるカビには、白いふわふわしたもの、赤や黄色、黒っぽいもの、ミカンにつくような青カビなどがあります。
このように、ブルーチーズにもともと生えていたものとは違う色、かたちのカビが生えてしまった場合は、残念ですが、食べるのはあきらめたほうがよさそうです。このようなカビが体内に入ってしまうと、体に害を及ぼす可能性があります。
青カビと白カビの両方が使われているチーズの場合は、白カビなら生えても大丈夫?と思ってしまうかもしれませんが、食べないほうが安全です。白カビだけでなく、ほかの種類のカビも繁殖している可能性があります。
ブルーチーズにあとから生えたカビを取り除いたら食べられる?
せっかくのブルーチーズが食べられなくなってしまうのは、とても残念ですよね。カビの生えた部分だけを削り取って食べることはできるのでしょうか?
チーズの表面にあとから生えてきたカビは、実は、細かいカビの集合体。カビが目に見えるということは、カビがかなり繁殖した状態だということなのです。こうなると、カビは目に見えないほど細かい菌糸を内部に伸ばしているので、表面だけを切り取っても、すべてのカビを取り除くことはできません。
見てわかるような状態のカビがあるということは、さらに奥深くまでカビが浸透しているということ。表面のカビだけを取り除いても、食べることはとても危険です。
あとからカビが生えたブルーチーズを加熱したら食べられる?
ブルーチーズに少しカビが生えただけなら、加熱して食べれば大丈夫なのでしょうか?
カビなどの細菌は熱に弱いので、加熱すれば害はなくなるように思えますが、実はそうではありません。カビの種類の中には、カビ毒といわれる危険な物質を産出するタイプのものがあるのです。
カビ毒は食中毒の原因になったり、健康被害を引き起こす可能性があり、カビ毒は加熱処理しても分解されません。ブルーチーズにあとからカビが生えてしまったものは食べない方が安全です。
繁殖が進んでカビが増えたブルーチーズは食べられる?
ブルーチーズは加熱処理されていない「ナチュラルチーズ」なので、チーズの中にもともとあった青カビは生きています。そのため、冷蔵庫に保管しているうちにブルーチーズの青カビが増えてしまうことがあります。
青カビの繁殖がさらに進んでしまった場合でも、賞味期限内であれば食べても大丈夫です。
青カビが繁殖することで熟成が進んだブルーチーズは、青カビの風味や刺激が増して濃厚な味わいになるので、好んで食べるという方もいらっしゃるようです。
ただし、青カビがあまりにも増えすぎると味が変わってしまい、おいしく食べることができなくなってしまうので注意しましょう。
ブルーチーズの保存方法と賞味期限
せっかく選んだブルーチーズ、最後までおいしく食べたいですよね。正しい保存方法を覚えておけば、おいしいブルーチーズを最後まで最高の状態で楽しむことができます。
食べかけのブルーチーズは密閉して冷蔵庫で保存
チーズは、冷蔵保存が基本です。一度開封したチーズはもちろん、買ってきたチーズはすぐに冷蔵庫に入れて保存するようにしましょう。
■開封したブルーチーズを密閉すべき理由
冷蔵庫の中は乾燥しているので、しっかり密閉しておかないとブルーチーズの表面が乾燥して、変色したり、質感が変わってしまいます。
さらに、冷蔵庫内に漂うカビや雑菌がブルーチーズについてしまわないようにするため、そして、ブルーチーズの中の青カビが他の食品に移ってしまうのを防ぐためにも、開封したブルーチーズは必ず密閉して保存することが大切です。
ブルーチーズを包むならオーブンペーパーがおすすめ
ブルーチーズを密閉する方法としては、ラップで包んでチャック付きのポリ袋やタッパーなどの容器に入れているという方が多いのではないでしょうか。
開封後のブルーチーズを包むなら、オイルペーパーやオーブンペーパーなど、または、キッチンペーパーとアルミホイルを重ねたもので包む方法がおすすめです。ラップで包む場合は、2~3日おきに交換するようにしましょう。
ブルーチーズはこのような方法で包んでから、密閉容器や密閉袋に入れて冷蔵庫で保存します。内部に水滴がついてしまった場合は、キッチンペーパーなどでこまめにふき取ることも大切です。
保存方法はパルミジャーノレッジャーノと同じ方法で大丈夫です。下記記事も詳しく説明しているので合わせてお読みください。
ブルーチーズの賞味期限は10日程度
種類やメーカーによって多少異なりますが、ブルーチーズの賞味期限は、開封前の状態で10~2週間程度となっていることが多いようです。
チーズは日持ちがすると思われがちですが、ブルーチーズは「ナチュラルチーズ」なので日持ちしません。加熱処理された「プロセスチーズ」よりも賞味期限がかなり短くなっていますので注意が必要です。買ってきたら早めに食べ終えるようにしましょう。
一度にまとめてではなく、食べきれる分だけ購入するようにすることも大切です。
まとめ
ブルーチーズとカビについての、さまざまな情報をご紹介しました。
カビは人間の体にさまざまな害を及ぼしますが、ブルーチーズには青カビが使われているのにもかかわらず、なぜ安心して食べることができるのでしょう?
実は、ブルーチーズに使われるP・ロックフォルティ(P・グラーカムも同様)は、比較的毒素の少ない種類の青カビですが、全く無害というわけではありません。
しかし、チーズの成分が、P・ロックフォルティが出す毒素を分解するので、チーズの中で繁殖している場合だけは食べても害はないということなのです。
他の種類のカビがチーズに繁殖した場合や、P・ロックフォルティが他の食品に繁殖してしまった場合は、食べると危険です。
P.ロックフォルティ P.グラーカム | 他の青カビ・カビ | |
チーズ | 食べてもOK | 食べると危険 |
チーズ以外の食品 | 食べると危険 | 食べると危険 |
また、ブルーチーズにも、パンやミカンと同じように、あとからカビが生えることがあります。
ブルーチーズにあとから生えてきたカビは危険なので、食べることはできません。カビの部分だけを取り除いたり、加熱しても毒素が残ってしまうので、カビの生えたブルーチーズは食べないようにしましょう。
青カビは状況によってはとても危険な存在ではありますが、ブルーチーズに独特の風味と香り、深い味わいをあたえるとても大切な働きをしてくれます。
ブルーチーズと青カビの関係を知ることで、ブルーチーズの奥深さをより深く理解していただけたのではないでしょうか。
この記事を通して、ブルーチーズをもっと楽しめるようになることを願っています。