多くのファンがいて、おいしく食べられているブルーチーズ。これだけの人が食べていて問題ないのだから大丈夫なものなのに、身体に悪いのでは? とつい思ってしまいます。
というのも、ブルーチーズには青カビが生えているから。
カビは、普通なら「毒があって体に悪いから食べてはダメ!」といわれるものなのになぜ食べても平気なのでしょうか。
しかも、ブルーチーズは体に悪いどころか多くの健康・美容効果が知られており、積極的に食べるべきだと推奨さえもされています。
ということで今回は、ブルーチーズの青カビが体に悪くない理由や健康・美容にどんな効果をもたらすのか、ブルーチーズを食べるときの注意点などをお伝えしていきます。
「ブルーチーズは体に悪そうで避けていた」というのなら、これを読むことで誤解が解けるはずなので、ぜひ最後までお読みください。
ブルーチーズが体に悪い?
チーズの中に、青カビのコロニーが大理石の模様のように見えるブルーチーズ。どう見ても体に悪そうに思いますが、実は食べても無害だとのこと。
食べる前には誰もが「本当だろうか?」と勘ぐってしまいます。そこで、ブルーチーズの青カビが体に悪くない理由をお伝えします。
ただし、ブルーチーズに生えているカビがすべて無害というわけでもないので、そちらも一緒にお話しします。
体に悪そうな青カビがなぜ食べられるの?
ブルーチーズの青カビがなぜ食べても平気なのか、理由はとても簡単です。
それは、食べても大丈夫な種類の青カビを使っているからです。ブルーチーズに使われているのは「ペニシウム・ロックフォルティ」と「ペニシウム・グラーカム」という限られたものだけ。
ですから、食べてもお腹をこわしたりしないのです。
とはいっても、これらのカビがまったく無毒なわけではありません。
実は少し、毒を産出しています。
ただし、ブルーチーズの製造中に温度と湿度を管理された環境で熟成されることで、これらの毒物はほとんど無毒化されます。
そのため、食べても大丈夫になっているということです。
食べられないカビもある
ブルーチーズの青カビは食べても平気だとご理解いただけたでしょう。
しかし、気をつけていただきたいことがあります。それは、元々生えていた青カビ以外のカビが発生してしまったら、食べないようにすることです。
というのも、ブルーチーズを保存している間に生えた別の種類のカビは、どんな種類のカビかわからないからです。
もしかしたら、毒性が強いものかもしれません。
ですから、はじめからチーズにあるものとは様子が違うカビを見つけたら、そのチーズは食べないようにしておきましょう。
たまに、カビが生えている部分を取り除けば食べても大丈夫という意見を見かけますが、目に見えないだけで内部で繁殖している可能性もありますので、食べないに越したことはありません。
ただし、元からの青カビが増えた場合には、食べても大丈夫です。
それは、熟成により元の無毒なカビが増えただけなので、身体に悪くありません。むしろ、熟成により旨味が増しているので、さらにおいしくなっているはずです。
チーズのカビについてもっと詳しくお知りになりたければ、こちらもご覧ください。
ブルーチーズは体に悪いどころか健康・美容に効果あり
さて、ブルーチーズが体に悪くないことはおわかりいただけたでしょう。
実は、それどころか、健康や美容に効果があることが次々と明らかになっているのです。それらの効果について解説していきます。
健康効果
以前から、チーズの栄養価が高いことは知られていましたので、積極的に食べることを推奨されていました。
ただそれが、栄養があるだけでなく様々な健康効果があることもわかってきたのです。まずは、その健康効果からお伝えします。
認知症を予防する
チーズの中でも、特にブルーチーズはβラクトリンという成分を多く含んでいます。このβラクトリン、実は認知症予防に効果があることがわかっています。
キリングループなどの研究により、βラクトリンがミクログリアの活性を高めることがわかりました。
ミクログリアは認知症の原因となるアミロイドβなどの、脳内の老廃物を除去する働きがあります。つまり、ブルーチーズを食べれば、認知症の予防に効果があるということです。
血管を若返らせる
私たちの血管も、体の他の器官などと同様に老化していきます。
しかしブルーチーズには、この血管を若返らせる働きがあるといいます。
その理由はブルーチーズに含まれるラクトトリペプチドという成分です。
ラクトトリペプチドは血管を柔らかくし、動脈硬化の進行を遅らせる働きがあるのです。
その結果、血管の老朽化を原因とする高血圧や心筋梗塞なども抑えられます。
糖尿病予防
ブルーチーズをはじめとするチーズには、糖分があまり含まれていません。
そのため、食品に含まれる糖分の吸収効率を表す指標であるGI値が低くなっています。
つまり、チーズを食べても血糖値が上がりにくいということです。
そのため食事をする前にブルーチーズを食べておくと、血糖値が急激に上がるのを抑えられるので、糖尿病予防に効果があるとされています。
整腸作用
ブルーチーズは、チーズの中でも「ナチュラルチーズ」に分類されます。ナチュラルチーズは加熱加工されている「プロセスチーズ」とは異なり、加熱加工をされていないため一般的に乳酸菌が活きており、腸の活動を正常にする手助けをします。
最近は、腸内環境を整える「菌活」が盛んです。
腸内の細菌バランスを保つために食事などに気をつける人が増えていますが、乳酸菌を含むブルーチーズはその菌活に効果を発揮します。
チーズの健康効果についてもっと詳しくお知りになりたければ、こちらもご覧ください。
美容効果
ブルーチーズは健康に良いだけでなく、見た目を美しく保つためにも効果があるといわれています。どのような効果が得られるのかを説明します。
アンチエイジング
ブルーチーズには、パルミチン酸という成分が多く含まれます。
このパルミチン酸の大きな働きがいわゆる抗酸化作用です。「体のサビ」ともいわれる活性酸素の活動を抑え、体内の細胞の酸化を抑制しています。
老化の原因の一つが体の酸化であることはわかっていますので、酸化を抑えるパルミチン酸はアンチエイジングに効果があります。
他のチーズに比べてブルーチーズにはパルミチン酸がより多く含まれていますので、アンチエイジングをしたいならブルーチーズを食べるとよいでしょう。
美肌・美髪効果
私たちの肌や髪はタンパク質でできています。したがって、タンパク質が不足すると肌や髪の再生がスムーズに行われず、美しい状態を保つことができなくなります。
タンパク質は、チーズの主成分の一つであり、チーズを食べることで私たちが必要とする量の多くを補給することが可能です。
また、肌や髪が生まれ変わるためには、ビタミンB2がなくてはなりません。
ビタミンB2もチーズには多く含まれているため、食べることで新陳代謝がスムーズに行われるようになり美肌・美髪がキープできます。
さらに、先ほども紹介したパルミチン酸は、体内のビタミンAを安定させる働きがあります。ビタミンAは肌の健康に欠かせない成分とされ、肌の乾燥やシミ、シワを防ぐ働きがあります。
ダイエット
ブルーチーズに多く含まれるリパーゼには、脂肪を分解する働きがあります。
そのため、ブルーチーズに含まれる脂肪分の多くは脂肪酸に分解されていて体内に蓄積されにくいとされています。
また、チーズはタンパク質を多く含むため、ダイエット中に減少しがちな筋肉を維持するのに役立ちます。
筋肉はエネルギーの消費量が多いため、消費カロリーを落としたくないダイエット中には筋肉量維持が重要となりますが、チーズを食べることで筋肉の減少を防ぐことが可能です。
ブルーチーズの効能についてもっと詳しくお知りになりたければ、こちらもご覧ください。
ブルーチーズを食べるときの注意点
健康と美容に効果があるブルーチーズですが、食べるときにはいくつか気をつけていただきたいことがあります。
まずは、食べ過ぎると摂取過剰になりやすい要素がいくつかありますので、それらに気をつけるということです。
他にも、栄養豊富といわれるチーズですが、すべての栄養素が含まれているわけではありません。ですから、足りない栄養は他で補ってください。
それと、ブルーチーズの青カビは基本的に食べても問題ないのですが、一部の人にとっては害となることがあります。
それらについても述べてまいります。
食べ過ぎると体に悪いので適量を守ろう
ブルーチーズは、チーズの中でも脂肪分、塩分、カロリーが高い種類です。それぞれに着目したとき、自然とブルーチーズを食べる適量が決まります。個別に注目して適量を見てみましょう。
ブルーチーズからの1日の摂取目安量 | ブルーチーズ 100gあたり | ブルーチーズの適量 | |
脂質(飽和脂肪酸) | 14~21g | 17g | 80~125g |
塩分(食塩相当量) | 1g | 3.8g | 30g弱 |
カロリー | 200キロカロリー | 326キロカロリー | 60g強 |
脂肪分
脂肪分は、心筋梗塞や動脈硬化、高脂血症などの原因となると指摘されているため、脂肪分の摂取量には注意をしたいところでしょう。
特に、脂肪分の中でも飽和脂肪酸の量に気をつけるべきですが、厚生労働省が発表している一日の適量は摂取エネルギーの7%です。
摂取カロリーをもとに計算すると、およそ14~21gです。
これは100g中に17gの飽和脂肪酸を含むブルーチーズでは、およそ80~125gに相当します。他の食事に含まれる脂肪分を計算に入れて、適量を決めてください。
チーズの脂質についてもっと詳しくお知りになりたければ、こちらもご覧ください。
塩分
塩分は、日本人が摂り過ぎに気をつけなければならない成分の代表でしょう。
厚生労働省が推奨する塩分の摂取量は、1日につき男性で8g未満、女性で7g未満です。
ただし、この数字は1日に摂取する総塩分量であり、他の食事から摂るものも計算に入れなければなりません。特に塩分の多い食事を好む人は、ブルーチーズからの摂取量は1g程度に収めたいところです。
ブルーチーズは塩分量が多く、100gあたり約3.8g含んでいますので、塩分1g未満にするなら食べるのは30g未満にしておくのがよいでしょう。
チーズの塩分についてもっと詳しくお知りになりたければ、こちらもご覧ください。
カロリー
同じくカロリーも、現代日本人は摂り過ぎの傾向にあります。
一般的な成人が1日に必要とするのは2000~3000キロカロリーとされています。
3食とは別にブルーチーズを食べるのなら、200キロカロリーくらいが限度ではないでしょうか。
ブルーチーズは100gあたり約326キロカロリーの熱量です。したがって、200キロカロリーに抑えようと思うなら、適量はおよそ60gです。
不足する栄養は他で補おう
栄養価が高いと評価されるチーズですが、実はいくつかの栄養分はまったく含まないか、もしくは少量しか含みません。
栄養バランスを考えると、これらは他の食品で補給する必要があります。ブルーチーズだけでは不足してしまう栄養分を紹介します。
ブルーチーズ100gに含まれる成分
ビタミンC | 0mg |
食物繊維 | 0g |
炭水化物 | 1.0g |
出典:日本食品標準成分表2020年版(八訂)
ビタミンC
ブルーチーズにはまったくビタミンCが含まれていません。
ですから、ビタミンCを含む食品を他の食事で補給するか、チーズと一緒に食べるかするとよいでしょう。
ビタミンCを多く含むのは、フルーツや野菜などです。この中で、フルーツはブルーチーズとの相性が抜群です。ビタミンCの不足を避けるためにも、生のフルーツやドライフルーツを一緒に食べるようにしてみてください。
食物繊維
食物繊維も、ブルーチーズにはまったく含まれていません。
これも他の食事などから摂りたいものですが、食物繊維は普段の食事だけでは不足しがちだとの指摘があります。それであれば、ブルーチーズを食べるときも積極的に取り入れるようにするとよいでしょう。
全粒粉を原料としたクラッカーの上にブルーチーズを乗せて食べるなどをすれば、効率よくしかもおいしく食物繊維の補給が可能です。
他にも、チーズの引き立て役となる食品で食物繊維の摂取ができないか考えてみましょう。
炭水化物
炭水化物は、ゼロではないのですが、ブルーチーズには少量しか含まれない成分です。
最近では、低糖質やロカボなどといって、炭水化物を避ける傾向にありますが、炭水化物が不足した状態が続くとぼーっとしたり疲れやすくなったりして、パフォーマンスを大きく落とすことになってしまいます。
炭水化物が不足状態にならないよう、ブルーチーズと一緒にパンを食べるなどしていただくとよいでしょう。
アレルギーの方・妊婦の方は気をつけて
ブルーチーズの青カビは無害とはいえ、カビアレルギーを持っている人が食べると症状が出ることがあるようです。
もちろん、全員に症状が出るわけではないのですが、もしカビアレルギーを持っているなら、やはり食べないほうがよいでしょう。
それでも食べてみたいというときは、まずは医師に相談してみてください。
また、免疫力が低下しやすくなっている妊婦の方も、ブルーチーズを食べるときは気をつけたほうがよいでしょう。
正確には、ブルーチーズに限らずナチュラルチーズに存在する可能性がある、リステリア菌による食中毒の危険性があります。存在するかどうかは簡単には調べられませんので、ナチュラルチーズ全般を食べないでおくのがよいでしょう。
もしチーズを食べたいときは、加熱加工してあるプロセスチーズにすることをおすすめします。
まとめ
今回は、青カビが生えているブルーチーズは体に悪いのか? という疑問から入り、体に悪くないことをお話しました。
むしろ、健康や美容に大きな効果があるということで、どのような効果があるのかをお伝えしました。
しかし、あまり多く食べると過剰摂取になってしまいそうな成分があること、またブルーチーズだけでは不足する成分があることも説明し、注意をお願いしました。
以前とは違い、ブルーチーズを食べられないという人はかなり少なくなったと思いますが、それでもなお体に悪いのではないかと心配している人はいるでしょう。
もしそのような人が近くにいれば本記事の内容をお伝えして、ブルーチーズを食べることをおすすめしてみてください。