ローマ人のチーズ技術によって誕生した「ドイツのチーズ」の歴史
ヨーロッパのチーズの歴史を語るとき、「ローマ」「ローマ人」というキーワードは非常に重要になります。
現在の価値観で考えれば解釈が分かれるところではありますが、彼らがヨーロッパに広く「チーズという文化」をもたらしたことは事実だからです。
ただし、栄華を極めたローマ帝国もやがて、ゲルマン民族の侵攻によって徐々に国力が衰えていきます。
衰退し始めた国力を回復することは非常に難しく、ローマの人々は各国から駆逐されそうになりました。
しかしそのなかの一部は、自らの技術を持って「祈りと労働の場所」である修道院に入り込みます。
そして彼らの技術は修道院に広がっていき、多くの「ドイツのチーズ」を作り出すことにつながりました。
ちなみにドイツでは、1579年からの約18年間の間に、ドイツ方式のパルメザンチーズの作り方が確立したとされています。
さらに時代が進み1942年には「クワルク」が登場します。
後述しますが、これはドイツのチーズのなかでも非常に高い人気を誇っているものです。
フレッシュチーズのうちの一種類であるこの「クワルク」はやがて海を越え、日本にも入ってくるようになりました。
実は消費量は世界2位!ドイツのチーズ事情について
ドイツに長く滞在しているチーズラバーの人であっても、「現地のドイツチーズはどうだった?」と聞かれると答えに窮してしまうことがあります。
かなり注意深く慎重にあたらないと、「ドイツのチーズの個性」は見抜くことはできないでしょう。
フランスにはあまりにも豊富な選択肢が、イタリアにはパスタフィラータチーズが、イギリスには女王の愛したチーズがありますが、ドイツのチーズは没個性的なものが多いといえるからです。
「ドイツのチーズといったらこれ!」というような「ドイツのチーズの代表」を探すのは非常に困難なのです。
これは、ゲルマン人がチーズ作りをそれほど重要視していなかったからだといわれています。
ただ、このような特徴を持っているドイツですが、「年間消費量」に目を向けたときには意外なことがわかります。
それは、「ドイツは世界で第2位のチーズの消費国家である」ということです。
1人あたり1年間に24.2キロのチーズを食べる国であるとされているのが、このドイツなのです。「24.2キロ」という数字は、フランスの「26.2キロ」に並ぶ値です。
ただ、2位の国は比較的多いといえます。たとえばアイスランドやルクセンブルクでも、まったく同じだけのチーズが消費されています。
なお、その大量消費のなかでも特によく食べられているのが、「クワルク」「カンボゾーラ」です(両方とも後述します)。
出典;
CNET JAPAN「フランスのチーズ消費量は日本の10倍以上――トリップグラフィックス」内トリップアドバイザー「世界のチーズ消費量」
ドイツのチーズを試してみよう~ドイツのチーズ3種類
ここからは、実際にドイツで食べられているチーズをピックアップしてお話していきます。
なお、ドイツチーズの入手難易度は、フランスやイタリアのものなどと比べると高めです。
スーパーのチーズコーナーでお目にかかることはあまりないでしょう。ただし、通販を利用すると割り切ってしまえば、意外と多くの種類のチーズを購入することができるはずです。
①クワルク(フレッシュチーズ)
「クワルク」はフレッシュチーズに分類されるものです。
世界で2番目にチーズの消費量が多いドイツにおいて、その消費量の3分の1を占めています。ドイツに住む人が1年間で消費するチーズの量は24.2キロとされていますから、単純計算で、ドイツの人は1年間に8キロ近いクワルクを食べているといえます。
かつてのクワルクはクエン酸を使って作られていたため、シャープな酸味を持ちました。
しかし現在のクワルクはレンネット(凝乳酵素。たんぱく質を固める効果のあるもので、牛などからとられる)を使っているため比較的落ち着いた味わいをしています。
くせがなく、お菓子に使ったり料理に使ったりしやすいのが魅力です。
たとえば、クワルクとクラッカー、ハム、果物や野菜(トマトなど)と合わせると非常においしく食べられますし、このままパンにのせて食べたり、はちみつと合わせてお菓子のように食べたりしてもよいものです。
クワルクは汎用性の高いチーズではありますが、フレッシュチーズであるため賞味期限は短めに設定されていることが多いといえます。
開封したらなるべく早めに食べきるようにしてください。
②カンボゾーラ(ブルーチーズ)
クワルクと並ぶくらいには知られているチーズとして、「カンボゾーラ」があります。
この不思議な名前は、「カマンベール」+「ゴルゴンゾーラ」から来ています。この2つの美点を合わせて作られたのがカンボゾーラです。
名称からもわかるように、カンボゾーラは、カマンベールとゴルゴンゾーラの特徴を併せ持っています。
白カビチーズであるカマンベール同様表皮には白カビができていますし、中にはゴルゴンゾーラを見習った青カビが生えています。
カンボゾーラは、非常にクリーミーでミルキーな味わいに仕上がっています。
ゴルゴンゾーラよりもカマンベールの風味を強く感じさせるもので、穏やかで優しい口当たりに仕上がっています。
そのため、青カビチーズが苦手もしくは青カビチーズを初めて食べるという人に非常におすすめです。
「既存のチーズをお手本にして、これを組み合わせて作る」というかたちをとるカンボゾーラは、ドイツでのその知名度に反して、歴史は比較的浅いものといえます。彼が誕生したのは1970年代のことであり、まだ誕生から50年程度しか経っていないのです。
③ケーゼレベレン・マウンテンチーズ(セミハード・ハードチーズ)
チーズに少し詳しい人でも、「ドイツのチーズは?」と聞けば、クワルクかカンボゾーラを挙げるでしょう。
おそらく、「ケーゼレベレン・マウンテンチーズ」はドイツの「大乗的なチーズ」には含まれていないと思われます。
「ケーゼレベレン」とは、ドイツ語で「チーズ(の)革命家」を指す言葉です。
このケーゼレベレン・マウンテンチーズを売り出している会社・ケーゼレベレンは、「昔ながらの製法」にこだわったチーズを作り出しています。
ケーゼレベレン社は、「自由に放牧された牛が、上質で自然のままの牧草を食べて生活することによって、良質なチーズが作られる」と考えています。
このようなスタイルで作られたケーゼレベレン・マウンテンチーズは、100年以上も変わらない味わいを保ち続けています。
ケーゼレベレン・マウンテンチーズは、ミルク感をしっかり感じさせてくれる一品です。
ナッツにも似た香りを持ち、セミハード・ハードチーズらしい濃厚なコクもあります。
ドイツはビールの名産地でもありますが、ケーゼレベレン・マウンテンチーズはこの「ビール」とも非常に相性の良いものです。
また、少し苦みのあるパンにスライスしたケーゼレベレン・マウンテンチーズをのせて食べる方法もおすすめです。
「ドイツらしいチーズ」がなかなかないと言われているドイツですが、それでもそれなりの数は出ています。
機会があったらぜひ口に運んでみてくださいね。
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