イギリスのチーズの始まりはどれくらい前?
「大英帝国」の呼び名でも知られているイギリスは、歴史上において非常に重要な位置を占める国です。
このイギリスでは、今から2000年以上も前からチーズが生産されていたと考えられています。
フランスがローマ軍の進軍によってチーズという文化を知ったように、イギリスもまたローマ軍の進軍によってこれを知ったといわれています。
ただ、ローマ人の手で「イギリスのチーズ」が作られていたのは西暦300年ごろまでのことだといわれており、それ以降はイギリス人が「イギリスのチーズ」を作っていたとされています。
ちなみに、押しも押されもせぬ人気のイギリスのチーズ「チェダーチーズ(後述します)」が本格的に作られるようになったのは1500年代です。
もう少し正確にいうのであれば、1540年のことです。
この時代から現在に至るまで、チェダーチーズは多くの人に愛されてきました。
なお、「イギリスのチーズ」がローマ軍の侵攻によってもたらされたように、イギリスもまた多くの国に「イギリスのチーズ」を広めていきました。
イギリスの人々は食の好みがかなり保守的であり、ほかの国を植民地化したあとも、その土地の食べ物を積極的にとろうとはしませんでした。
船に大量のイギリスのチーズを積み込んで旅に出て、植民地でもそれを広めていったといわれています。
こんにち、アメリカやカナダ、ニュージーランドなどでみられるチーズは、イギリスのチーズを原型にしているとも考えられています。
イギリスのチーズ事情~地方の村にも数多くのチーズがある
さて、ここからはイギリスのチーズ事情についてみていきましょう。
イギリスでは、チーズを非常に重要視します。たとえばクリスマスには、イギリス名物「スティルトン(後述します)」を銀で作ったポットに入れて贈り物とする風習があります。
また、地方の村々では「家の牛からとった乳から作ったチーズ」が朝市でよく売られています。
たとえばイギリスの片田舎として知られるコッツォルズでは、自家製のチーズとベーコン、パンなどが朝市に並ぶこともよくあります。
また、イギリスは「世界一の生産量を記録しているチーズ」を生産している国でもあります。
「世界一のチーズ生産量」を誇る国はアメリカですが、「世界一の生産量のチーズ」を作っているのはイギリスなのです。
その「世界一生産量の多いチーズ」とは、「チェダーチーズ」のことです。
このチェダーチーズはイギリスのチーズ史上において非常に重要な意味を持つものです。
上では「イギリス人は、植民地でも『イギリスのチーズ』を作っていた」としていましたが、植民地でチーズを作る際にもっとも優先されたのが、このチェダーチーズだといわれています。
世界一の生産量を誇るチーズを有するイギリスでは、人々の生活のなかにチーズが深く根付いています。
イギリスのチーズを食べてみよう!おすすめのイギリスチーズ3つ
ここからは、イギリスのチーズについて個別に説明していきましょう。
①スティルトン(ブルーチーズ)
「世界三大ブルーチーズ」のひとつであるスティルトン(残り2つは、ゴルゴンゾーラとロックフォール)は、チェダーチーズと並ぶ非常に有名なイギリスのチーズです。
ちなみにこのスティルトンは、エリザベス女王の大好物なのだとか。
ほのかな苦みと甘味を持つ青カビチーズですが、強い塩味も持っています。
コクがあり、後味がしっかり残るのがスティルトンの特徴です。
ちなみに現地イギリスのもっとも有名なデパート「ハロッズ」では、かつてこのスティルトンにポートワインを加えたチーズ商品も展開していました。
「スティルトン」という名前は、このチーズの生まれ故郷から来ています。1750年ごろに、この村の一軒の宿屋「ベル・イン」で振る舞われたことから人気を博し、やがて人々に広まっていきました。
ただ、皮肉なことに、現在では生まれ故郷スティルトン村ではこのスティルトン(チーズ)の生産は行われていません。
しっかりした赤ワインとよくマッチしますが、甘味を持った赤ワインやポートワインともよく合います。
また、ウイスキー党ならばウイスキーと合わせてもよいでしょう。
②チェダーチーズ(セミハード・ハードチーズ)
上でも何度か取り上げた「チェダーチーズ」は、イギリスを代表するチーズのうちのひとつです。
なお、「チェダー」と記すこともあります(ここでは「チェダーチーズ」の表記に統一します)。
チェダーチーズはイギリスのサマセットにある「チェダー村」で作られました。
現在では生産法が確立されたこともあり広く作られるようになりましたが、伝統的な手法を守って作られるチェダーチーズもあります。
このようなチェダーチーズは、「ウエスト・カントリー・ファームハウス・チェダー」と呼ばれていて、一般的なチェダーチーズと区別されます。
チェダーチーズは、ナチュラルチーズの代名詞的な存在でもあります。
まだ若いうちは酸味が目立ちますが、熟成が進むと木の実のような香ばしさを持つようになります。
また、人によってはバターのような風味があると感じることでしょう。
熟成させることによって味わいが変わっていくチーズではありますが、若いころも熟成が進んだころもその「食べやすさ」は変わりません。
前述したようにチェダーチーズは現在世界で一番作られているチーズですが、その理由はこの「老若男女に愛される味わいであること」にもあるのでしょう。
③ドレスター スパークホー(セミハード・ハードチーズ)
「イギリスのチーズといえば、スティルトンもしくはチェダーチーズ」とされるため、その間に「ドレスター スパークホー」が入り込むことはまずありません。
ただこれもなかなか面白いチーズなので、紹介しておきましょう。
ドレスター スパークホーは、「ドレスター スパーケン」とも呼ばれます(ここでは「ドレスター スパークホー」の表記に統一します)。
農家で作られたチーズを熟成させることを生業としているイギリスの会社で作られたチーズであり、日本ではごく限られたお店のみがこれを扱っています。
かつてアナトー色素で色がつけられていたチェダーチーズは、時代が経つに従い、パプリカの色素なども利用して作られるようになりました。
しかしドレスター スパークホーは、がんこに天然のアナトー色素を使って作り続けられています。
複雑な味わいと、香ばしいナッツの香りをまとうのがドレスター スパークホーの特徴です。
イギリスチーズによくみられるほのかな苦みを感じさせますが、全体的に食べやすく、クセは抑えられています。
このまま食べても非常においしいものですが、パンにのせて焼き上げてもおいしく食べられるでしょう。
なおこのドレスター スパークホーは、ワインはもちろんビールにも非常によく合います。
歴史のなかにおいて非常に重要な位置を占めてきたイギリスは、チーズ史においても活躍を見せる国です。
スティルトンとチェダーチーズはもちろん、ほかのイギリスのチーズもぜひ試してみてくださいね。