「大国」として知られるアメリカは、広大な土地を持つ国家です。比較的歴史の浅い国ではありますが、そこで育まれているチーズの量は非常に膨大です。
ここでは「アメリカのチーズ」に焦点をあてて、
・アメリカのチーズの歴史
・アメリカのチーズの特徴と、アメリカのチーズ事情
・実際に販売されているアメリカのチーズ3種類
について取り上げます。
大国アメリカ、そのアメリカのチーズの歴史とは
チーズ自体の歴史は非常に古く、紀元前にまでさかのぼることができます。またヨーロッパ諸国の場合、チーズの歴史が2000年近くの長さを持つことも珍しくありません。
しかし、非常に「新しい」国であるアメリカの場合、チーズの歴史も非常に浅いものとなります。
アメリカの建国は1776年ですから、当然のことながら、アメリカのチーズの歴史も250年未満となるのです。
アメリカの歴史を語るうえで欠かすことのできない単語として、「(カルフォルニア)ゴールド・ラッシュ(『ゴールドラッシュ』とも。
ここでは『ゴールド・ラッシュ』の表記に統一する)があります。多くの人が「金」を求めて大移住し、一攫千金を目指したこの出来事は、アメリカのチーズにも深く関わるものとなりました。
ゴールド・ラッシュで一攫千金を目指してカルフォルニアに移住してきた開拓者たちは、自らの家族を食べさせるために牛を連れてきました。
この牛からとられる乳で作られたのが、「アメリカのチーズ」の起源だとされています。
このゴールド・ラッシュのときにカルフォルニアにやってきたクララ・スティールという一人の女性開拓者は、「家畜としての牛」ではなく、「野生の牛」からとられる乳で作ったチーズを販売して、一世を風靡します。
その後、彼女はカルフォルニアで初となる商業酪農家にまで成長しました。
このように考えると、アメリカのチーズは、単に「食べ物」としてだけの存在にとどまるものではなく、成功を夢見て旅立ってきた人々の「パートナー」といえる存在だったといえるでしょう。
アメリカのチーズの特徴と、アメリカのチーズ事情
アメリカのチーズは非常に短い歴史しか持っていませんが、旺盛なパイオニア精神と広い国土、そして(さまざまな意見はあろうかと思われますが)自由な気風を持つアメリカは、あっという間に世界のチーズ市場を席巻するものになります。
アメリカでは年間で実に600万トンものチーズが清算されます。
これは、チーズ大国フランスや、独特の製法をも生み出したイタリア、メディアにも何度も取り上げられているスイスなどをもすべて押さえて、世界1位です。
国内はもちろんのこと、世界各国に輸出もされています。日本でも、アメリカのチーズは非常に簡単に手に入れることができます。
アメリカのチーズはプロセスチーズが多い……というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、実際にはナチュラルチーズも数多く作られています。
また、日本ではマイルドなタイプのアメリカのチーズがよく出回っていますが、実際にはかなり個性的なチーズも作られています。
アメリカの有名なチーズ3つ
ここからは、アメリカのチーズのなかで特に取り上げるべき3つのチーズについて語っていきます。
①クリームチーズ(フレッシュチーズ)
現在は世界中で作られるようになった「クリームチーズ」が、いつ頃にできたものなのかは判然としません。
ただ、アメリカのニューヨークにおいて、1872年に乳製品の加工業者が作り始めたチーズが現在のクリームチーズの元祖なのではないかと考えられています。
この説にのっとれば、クリームチーズの「出生時の住所」は、アメリカのニューヨークだといえるでしょう。
ケーキに活用されることが多いチーズであり、なめらかな口当たりと酸味を持っているのが特徴です。
ただ意外なほどに活躍の場は広く、料理にも使うことができます。
また、ニンニク+しょうゆで作ったツケダレにカットしたクリームチーズを入れて置いておくだけで、おいしいおつまみを作ることもできます。
クセのないチーズであるうえに非常に扱いやすく、スーパーにも必ずあるチーズなので、さまざまな使い方を楽しめるのも、クリームチーズの魅力です。
②コルビージャック(セミハード・ハードチーズ)
「コルビージャック」という名前は知らなくても、「黄色と白のマーブル模様のチーズ」といえばどんなものか思い浮かべられる人も多いのではないでしょうか。
コルビージャックのこの独特の外見は、しばしば「大理石」にたとえられます。
コルビージャックは、下記で紹介する「モントレージャック」に、コルビーを掛け合わせて作ったものです。
なお、コルビーはチェダーチーズと似たチーズです。
非常に食べやすくくせもないので、初心者さんにも食べやすいでしょう。
またその「食べやすさ」のなかにコクや濃厚さもプラスされるため、食べていて退屈に思うこともありません。
見た目の美しさからよく食卓に登場させられますが、少し火を通して食べてもおいしいものです。
③モントレージャック(セミハード・ハードチーズ)
アメリカのチーズのなかでもっとも有名なチーズのうちの1つとして、「モントレージャック」があります。
モントレージャックはアメリカで非常に多く作られていて、海外にも積極的に輸出されています。
モントレージャックは、18世紀半ばから作られました。
このときに、モントレーに移住した1人の修道士がこれの製造を手掛けたといいます。
修道院がチーズの製造を行うのは非常によく見られる風習であり、モントレージャックもその例にもれなかったといえるでしょう。
ただ、モントレージャックが現在のような広がりをみせたのは、デビット・ジャックスの手腕が大きいといえます。
デビット・ジャックスは19世紀の終わりに活躍したアメリカの実業家で、彼がこのモントレージャックを大々的に打ち出すようになります。
ちなみにデビット・ジャックスに打ち出される前は、おそらく「モントレージャック」という名前ではなかったと推測されます。
なぜなら、「モントレージャック」の名前は、「デビット・ジャックスが、自分の名前を付け加えて付けた」とされているからです。
柔らかで弾力のある食感であり、セミハードらしい食べやすさがあります。
ケンのない味わいであり、老若男女だれにでも好まれるでしょう。
また、火にかけて食べてもおいしいものです。
非常に汎用性の高いチーズですから、1つ冷蔵庫に入れておくと便利です。
モントレージャックはくせのないチーズであるうえ、非常に多くリリースされています。
そのため、この人気かつ手に入りやすいモントレージャックを使った「派生チーズ」も多くつくられました。
たとえば上で挙げたコルビージャックはその代表例ですし、それ以外にもハーブなどを使ったバリエーションが存在します。
わずか200年程度の歴史しか持たないのに、強大なチーズ生産国となったのが「アメリカ」です。
アメリカのチーズは非常に手に入りやすいので、入手難易度は低いといえます。
スーパーに行ったときに探してみるとよいでしょう。なお、スーパーで見つからない場合でも、通販を使えばほぼ確実に入手できます。



