「コンテ」とは、フランスのフランシュ・コンテ地方、スイスとの国境沿いに走るジュラ山脈一帯でつくられている大型のハードタイプチーズです。
コンテがつくられているジュラ地方は、標高2000m程の緩やかな山地で、寒さの厳しい地域として知られています。
そのため「山のチーズ」と呼ばれる、厳しい冬を越すために長期保存ができるタイプのチーズが古くからつくられてきました。
コンテが「フランスで最も愛されるチーズ」と呼ばれる理由はその生産量の多さにあり、その量はフランス産のA O P(原産地名称保護制度)に認定されているチーズの総生産量の約4分の1を占めるほどです。
本場フランスでも大人気のチーズですが、近年では日本でも長期熟成された希少なコンテが手に入るようになりました。
今回は日本でも大人気のチーズ「コンテ」についてご紹介します。
コンテの作り方
1000年以上も前からつくられている歴史があるコンテ。
製造方法にも厳しい規定があります。
職人のこだわりが詰まった歴史の深いチーズ
コンテは30キロ〜40キロもの重さのある大型のチーズです。
この大きなコンテを1個つくるために使用されるミルクの量は、およそ400リットル〜500リットル。
大きなチーズを生産するために、地域全体で協力体制がとられているのもコンテの特徴です。
ジュラ地方の地域ごとに小規模な酪農家達が共同体をつくり、コンテ用のミルクを「フリュイティエール」と呼ばれるチーズ工房に持ち寄り、そのチーズ工房でコンテはつくられます。
使用する牛の乳にも規定があり、「モンベリアード種」か「フレンチ・シメンタール種」という
牛の乳のみ使用が認められており、そのほとんどは「モンベリアード種」から搾乳された乳が原料です。
品質を保つために、搾乳後24時間以内の加工が義務付けられています。
主に村の中心部にあるというチーズ工房「フリュイティエール」に集められたミルクが、職人の手によってチーズに加工されます。
大きな銅鍋でミルクを加熱し、ミルクを固めるための天然酵素を加え、固まったチーズの素を細かく砕き、混ぜながら約55度まで加熱していき、この時の手の感覚が非常に重要だと言われています。
この工程でチーズの素から水分を抜き、型に入れて形成、さらに水分を抜いていきます。
チーズの形に形成された後は、表面を塩水で拭き塩味を加え、エセピアというもみの木の棚に並べられ、
チーズ工房で少しの間熟成させます。
その後チーズは大きな熟成庫に移され、次は「アフィヌール」と呼ばれる熟成士の手に渡ります。
このような、酪農家、チーズ職人、熟成士という、工程ごとの分業された生産システムはジュラ地方でしか見られない独自の生産体制となっています。
熟成期間の違いを楽しむ
「熟成」とは、チーズに含まれる酵素や微生物の働きによってタンパク質が分解され、アミノ酸やペプチドに変わり、
風味や旨みが生み出される大切な工程です。
熟練の熟成士「アフィヌール」の手によって、熟成が順調に進むよう温度や湿度が管理されます。
コンテには厳しい品質基準が設けられており、出荷前に専門家によって点数が付けられます。
ハンマーと呼ばれる道具でチーズを叩き、音を聞いて内部に亀裂などが無いかを確認し、
トライヤーという別の道具でチーズの一部を取り出し、チーズ内部の状態を確認します。
出荷時に熟成士が全てのチーズに、味、食感、外観、外皮、形の5つの項目を20点満点で採点し、2段階の階級に分けます。
12点以上のチーズには茶色のラベルが貼られ、14点以上のものには「コンテベル」と呼ばれる緑のラベルが貼られます。
ラベルの色は熟成期間を表すものではありませんが、品質を保証されたコンテであることの証明となっており、180日以上の熟成で15点以上のコンテには「コンテエクストラ」というテープを巻くことが許されています。
コンテは生産量が多いだけでなくフランス国内の消費量も多い人気のチーズで、フランスで主に出回っているコンテチーズ熟成期間は平均8ヶ月熟成のものが多いそうです。
熟成期間によって香りや味わいの変化を顕著に感じられるコンテは世界的にも人気のチーズと言えるでしょう。
コンテの食べ方
コンテは、添加物を使わないナチュラルなチーズで、熟成期間は4ヶ月から36ヶ月以上のものまであり、
生産・熟成地域、熟成期間によって同じチーズとは思えないほどの多様な味わいと香りを楽しむことができます。
食べる20分ほど前から冷蔵庫から出して常温に戻し、食べる直前にカットするとよりチーズの香りを楽しむことができます。
カットの仕方で味わいが変わる?
コンテは切り方や食べ方で色々な味わいを楽しめるチーズです。
熟成の若いコンテなら、薄くスライスして滑らかな食感を楽しむのも良いですし、サイコロ状にカットして
サラダに和えるのもおすすめです。
熟成の進んだコンテであれば、チーズの外皮を除かずに、細長い短冊状にしてカットすると、
コクのある風味を味わうことができ、やや厚めにカットすることで、ホクっとした食感や、
アミノ酸の結晶からくるジャリっとした食感を楽しむことができます。
熟成の進んだコンテは、常温でそのまま召し上がることをおすすめします。
そのままのコンテを楽しむのであれば、外皮は食べませんが付けたままカットし、皮に近い部分と、
中心部の香りの違いを感じてみてください。
チーズの切り方について詳しくはこちらもご覧ください。
加熱して香りを楽しむ
一番若いコンテの熟成期間は4ヶ月で、若いコンテは良く溶けるので、フォンデュやグラタンにとても良く合います。
溶かすことで、コンテが持つフレッシュなミルクの香りを楽しむことができます。
魚料理や鶏肉などの淡白な味わいの素材との相性が良く、ソースに使うのもおすすめ。
この他にも、若いコンテは滑らかで口当たりが良いので、薄くスライスして野菜と合わせたサンドイッチなどにも
良く合います。
コンテチーズの保存方法
コンテをはじめ、ハードタイプのチーズを保管する際は以下のことに注意すると良いでしょう。
1.常温に戻す際にチーズの表面の空気が触れている面に水滴が付きカビが生えてしまうことがあるので
拭き取ってからラップなどで包み冷蔵庫で保管する。
2.他の食品の香りが移らないようラップをかけ、さらに保存容器に入れて保存する。
3.カットされた後のチーズは熟成変化をしないので、早めに食べ切る。
美味しいチーズですが、少ない量を購入することが少し難しいことも多いですよね。
購入時はレシピの計画を立てて購入するのがおすすめです。
まとめ
フランスで最も愛されているチーズと呼ばれる「コンテ」。
添加物を使わないナチュラルな製法と、生産と熟成された地域、熟成期間によって多様な味わいを見せてくれる
ところもコンテが不動の人気を誇る理由のひとつでは無いでしょうか。
チーズの中でもハードタイプは保存がしやすく、そのまま食べても良いですが、お料理やソースにアレンジしやすいのも
魅力のひとつですよね。
日本でも長期熟成の希少なコンテが手に入りやすくなりました。
すでにご存知の方はもちろん、食べたことがない方もぜひ一度、そのおいしさを味わってみてください。