チーズとバターはどちらも原料が乳です。ですが、仕上がりは全く異なる乳製品ですよね。
ここではチーズとバターの違いを、発祥・作り方・成分・保存方法の4点に分けてご説明します。
発祥の違い
チーズとバターはそれぞれどのように誕生したのでしょうか。
どちらも紀元前から記録に残され、歴史ある食品です。
チーズのほうが先に作られ始めていたようです。
チーズの発祥
加工食品のなかで最古の歴史を持つチーズ。紀元前3000年頃の記録には、すでに酪農に関する内容が残っており、古くから人類とともにある食品です。
羊や牛などの家畜を殺さなくても得られるチーズは、安定的な食料の供給に役立っていました。
バターの発祥
紀元前2000年頃の記録に、バターらしきものに関する内容が記述されています。
当初は医療品として傷口に塗ったり、化粧品として髪や肌を整えるために使われていたりと、現代とは違う使われ方をしていました。食用になったのはそれから1500年以上も後のこと(紀元前60年ごろ)です。
作り方の違い
チーズとバターは、乳をどのように加工して作られるのでしょうか。その違いをご説明します。
チーズの作り方
乳に乳酸菌やレンネット(凝乳酵素、牛の胃にも存在する酵素)を加えると、タンパク質が固まります。
その過程で作られた水分(ホエイ=乳清)を除くと、ナチュラルチーズの完成です。チーズをつくるには、その10倍の量の乳が必要となります。
バターの作り方
バターは生乳の脂肪を集めて固めたものです。生乳を高速で回転させると、遠心力で水分と脂肪が分離します。
水分を除いて脂肪分を冷やすと、バターが完成します。バターをつくるには、その22倍の量の生乳が必要となります。牛乳など加熱殺菌された乳では作ることができません。
成分の違い
チーズとバターでは、乳から抽出する成分が異なります。
チーズの成分
チーズは主にタンパク質、次に脂肪分からできています。さらにミネラルやビタミン、カルシウムも含んでいるので、栄養価が高い食品ですね。
バターの成分
バターは脂肪分が約80%。バターと名乗るためには「乳脂肪が80%以上、水分17%以下」というルールがあります。ビタミンA、ビタミンD、ビタミンEなども含み、加熱しても失われないので手軽に取りやすいですね。
バターの類似商品としてマーガリンやファストスプレッドがありますが、成分は全く異なります。これらは乳由来ではなく、植物由来の油脂から作られます。
保存方法の違い
どちらも冷蔵庫で保存するチーズとバター。どちらも開封後は、早めに食べきり・使い切りが推奨されていますが、おいしく保存するコツはあるのでしょうか。
チーズの保存方法
チーズは冷蔵保存が基本です。周囲の食材の匂いが移らないように、アルミ箔やラップでしっかり密閉しましょう。乾燥させないためにも重要です。また、水分でカビてしまうのを防ぐため、包みはこまめに取り替えるのが良いでしょう。
バターの保存方法
バターは10度以下での保存が基本。包みのアルミ箔を剥がさずに保存するのがおすすめです。乾燥を防ぎ、また周囲の食材からの匂い移りも防止できます。また、バターは冷凍保存も可能です。小分けにして冷凍すれば、使う分だけ取り出せて便利。やや風味は落ちてしまいますが「使い切る前に悪くなってしまう…」という場合にぜひ活用してください。なお、一度解凍したバターの再冷凍は控えてくださいね。
チーズの種類について
チーズは、ナチュラルチーズとプロセスチーズの2つに分類できます。そのまま食べても美味しいですが、その多様な味わいや風味から、ワインや食材との組み合わせも楽しめるのがチーズの大きな魅力です。
ナチュラルチーズ
乳酸菌が生きているので発酵し、熟成します。発酵や熟成の度合いによって、ナチュラルチーズにはさまざまな種類があります。非熟成のフレッシュチーズから、白カビ、青カビなどをチーズ表面に植えつけたタイプなど7種類に分類されます。見た目・味わい・風味も多種多様で、チーズ好きにはたまりませんね。フランス料理やイタリア料理で、聞き覚えのあるチーズも多いのではないでしょうか。
・フレッシュタイプ(非熟成):モッツアレラ、カッテージなど
・白カビタイプ(カビ熟成):カマンベールなど
・青カビタイプ(カビ熟成):ゴルゴンゾーラなど
・シェブールタイプ(カビ熟成細菌熟成):バノン、ヴァランセなど
・ウォッシュタイプ(表面洗浄細菌熟成):ポン・レヴェックなど
・セミハード(細菌熟成):ゴーダ、ラクレットなど
・ハード(細菌熟成):チェダー、パルミジャーノ・レッジャーノなど
プロセスチーズ
ナチュラルチーズを砕いて加熱後、成形したものです。加熱によって乳酸菌が死んでしまうので発酵はせず、熟成しません。日本では広く流通しているタイプで、食べやすく、保存がしやすいです。スライスやキューブタイプが一般的で、風味も一定なので、こどもでも食べやすいチーズですね。
バターの種類について
日本で流通しているバターには3つの種類があります。見慣れた加塩バターや無塩バター、日本ではあまり流通していない発酵バターについてもみていきましょう。
加塩バター
製造の過程で、食塩を1〜2%添加しているバターです。そのため保存期間が長く、未開封で6か月程度日持ちします。家庭用としてパンに塗ったり、料理のアクセントに使ったり日常的に使いやすいですね。
無塩(食塩不使用)バター
製造の過程で、食塩が添加されていないバターです。乳本来の風味が引き立つので、調理やお菓子作りに向いています。また、日頃食塩の摂取を控えている人にもおすすめです。食塩を添加していないので、賞味期限は加塩バターより短めで5か月程度とされています。
発酵バター
製造の過程で乳酸菌を使用し、乳酸発酵させてつくられるのが発酵バターです。特有の香り、コク、風味を楽しめます。古くからバターを作ってきたヨーロッパでは、現在でも広く流通しています。当時の技術では、バターは自然に乳酸発酵しているのが当たり前だったからですね。
日本でも「発酵バター入り」とわざわざ書かれた焼き菓子を目にします。普通のバターとは違う、深みが感じられるのが魅力です。
製造技術が進歩してからバターが入ってきた日本では、流通しているバターはほとんどが「非発酵バター」です。
まとめ
今回は、4つのポイントからチーズとバターの違いをご説明しました。チーズとバターはどちらも乳が原料の食品ですが、全く別の魅力を持つ食品です。
また、どちらにも熟成や発酵などにより、色々な種類がありましたね。種類の違いを理解してから食べると、より食が楽しくなると思います。今回、食べたことが無いチーズや、バターを知った方はぜひ近いうちにお店で探して、味見してみてくださいね。