パルミジャーノが欲しくて買い物に行ったけれど、売り切れていた!という事態に陥ったことのある人もいるのではないでしょうか。
そんなときに使える、パルミジャーノの代用チーズについて紹介します。
パルミジャーノの代用に使えるチーズ
パルミジャーノ(パルミジャーノ・レッジャーノ。イタリアで生産されているハードチーズの一種。以下では、特段の事情がない限りは、『パルミジャーノ』の表記に統一する)がない場合に使える代用チーズとしては、
・パルメザン
・グラナ・パダーノ
・ケソ・マンチェゴ
・ペコリーノ・ロマーノ
・【番外編】粉チーズ
があります。
それぞれの特徴を紹介しつつ、パルミジャーノとの違いについて解説していきます。
パルメザン
パルミジャーノの代用として真っ先に取り上げるべきは、「パルメザン」です。
パルミジャーノとパルメザンは、非常によく似ています。なぜならそもそパルメザン自体が、パルミジャーノ・レッジャーノのイミテーションともいえる存在だからです。
パルミジャーノ・レッジャーノは非常に長い歴史を持つイタリア産のチーズであり、強い旨味を持ちます。このパルミジャーノ・レッジャーノが人気を獲得していくと、世界各国では、パルミジャーノ・レッジャーノに似た製品がたくさん作られました。
しかし「イタリアで作られてもいない、新しいチーズ」が「パルミジャーノ・レッジャーノ」として出回ることは、パルミジャーノ・レッジャーノを守るうえでよくありません。
このため、EU原産地名称保護制度によって、「パルミジャーノ・レッジャーノは、検査を経たうえで、2年以上の熟成期間を持つもののみとする」と決められました。
このため、パルミジャーノ・レッジャーノと、「パルミジャーノ・レッジャーノによく似たチーズ」は明確に分類されるようになったのです。
しかしすでに述べた通り、パルメザンはもともとパルミジャーノ・レッジャーノと非常に近しい味や性質を持つことを目的として生まれたものです。そのため、代用品としては非常に優れています。
グラナ・パダーノ
イタリア生まれのグラナ・パダーノは、パルミジャーノと非常に似ています。ハードチーズに分類されるもので、熟成期間を経ることでアミノ酸の結晶(食べたときにジャリジャリとした音を立てるもの)が出てくるのも同じです。
グラナ・パダーノは、もともとパルミジャーノを「お手本」として作られたチーズです。そのため、パルメザン
ただ、グラナ・パダーノはパルミジャーノに比べて値段が安いという特徴があります。そのためパルミジャーノとグラナ・パダーノの生まれ故郷であるイタリアにおいては、むしろグラナ・パダーノの方が生産量が多くなるという「逆転現象」が起きています。
ちなみにグラナ・パダーノは、その味わいの良さと使い勝手の良さ、さらには値段の安さから、イタリアにおいては「台所の夫」という名称で親しまれています。

ケソ・マンチェゴ
上で挙げてきたパルメザンとグラナ・パダーノは、「パルミジャーノを目指して作ったもの」「パルミジャーノを模して作ったもの」であるため、パルミジャーノと味わいが似るのは必然といえます。しかし世の中には、「パルミジャーノを模したわけではないが、パルミジャーノと共通の味わいがあるもの」もあります。
そのうちのひとつが、スペイン生まれの「ケソ・マンチェゴ」です。
ケソ・マンチェゴは非常に長い歴史を持ち。ドン・キホーテにも登場します。1年以上の熟成を経ることで、パルミジャーノと同じように強い旨味を持つようになります。また、アミノ酸の結晶も確認できるようになるもので、その点でもパルミジャーノとよく似ています。
コクとうまみを持つこと、どちらもハードチーズに分類されるものであること、それぞれの国においてもっとも知名度の高いチーズであるという共通点を持つパルミジャーノとケソ・マンチェゴですが、違いもあります。もっとも大きな違いは、パルミジャーノは牛乳から作られるものであるのに対し、ケソ・マンチェゴは羊乳から作られるものであるという点です。
また、パルミジャーノはどちらかというと塩味を強く感じさせるチーズですが、ケソ・マンチェゴはやや甘い風味を持っているチーズであるという違いもあります。
ペコリーノ・ロマーノ
イタリアは世界有数のチーズ生産国として知られており、そのなかでもパルミジャーノは随一の知名度を誇るものであることは、すでに述べた通りです。
しかし、パルミジャーノと同じくらいに高い知名度を誇るイタリアチーズがあります。それが「ペコリーノ・ロマーノ」です。
ペコリーノ・ロマーノは、イタリア最古のチーズとされています。ペコリーノ・ロマーノとパルミジャーノは対になって語られることが多いものであり、こちらもハードチーズに分類されています。
パルミジャーノと同じように強い塩味を感じさせるのが特徴であり、しっかりした旨味を持っているという共通点もあります。
両方とも、パスタのカルボナーラによく使われるチーズである点も共通しています。ただ非常に面白いことに、日本で作られるカルボナーラにはパルミジャーノがよく使われ、イタリアで作られるカルボナーラにはペコリーノ・ロマーノがよく使われているという違いがあります。
もし機会があれば、パルミジャーノで作ったカルボナーラと、ペコリーノ・ロマーノで作ったカルボナーラを食べ比べてみると楽しいかもしれません。
【番外編】粉チーズ
番外編として「粉チーズ」を取り上げましょう。
日本ではしばしば、「粉チーズ=パルメザン」あるいは「粉チーズ=パルミジャーノを粉にしたもの」ととらえられます。しかしこの式は、実は両方とも間違いです。
上でも話したように、パルメザンはパルミジャーノを模して作られたものです。非常に硬質なチーズであるため、これを原材料として粉チーズが作られることも確かにあります。しかしパルメザンは粉チーズの材料として使われるだけでなく、塊としても販売されています。
また、粉チーズの中にはたしかに100%パルミジャーノで作られたものもありますが、これらはスーパーなどにはあまり出回りません。
すでに述べた通り、パルミジャーノはパルメザンやグラナ・パダーノと比べて高額であるため、日常的に使うことを想定した「スーパーの粉チーズ」の原材料として使うことには向いていないのです。
まとめると、
「粉チーズのなかにはパルメザンを原材料とするものもあるが、パルミジャーノを原材料とするものもある。しかしスーパーでよく売られているものは、パルメザンを原材料としている。なお、パルメザンもパルミジャーノも、両方とも粉チーズというかたちだけではなく、塊で販売されるものもある」
となるでしょう。
見方を変えれば、「粉末状のチーズ」としてパルミジャーノを考えているのであれば、「(パルミジャーノによく似た)パルメザンから作られている、スーパーなどで売られている粉チーズ」でも代用ができるというわけです。
チーズ削りがない!パルミジャーノを削りたいときの代用アイテムとは
ここまで、パルミジャーノの代用品としてのチーズについて紹介してきました。
最後に少し視点を変えて、「パルミジャーノを削る場合の代用アイテム」について考えていきましょう。
パルミジャーノは、すりおろしてパスタやピザにかけてもおいしいものです。上でも述べたように粉チーズを使ってもよいのですが、削りたてのパルミジャーノで作ったチーズの粉末は、やはり格段の味と香りを持ちます。そのため、可能であれば自宅で、食べる直前に削りたいものです。
チーズを削るための道具として、「チーズ・グレーター」があります。これはチーズをふわふわに細かく削ることができるもので、これを使うのが「一番おいしい粉末チーズ」を作る方法です。
ただ、普段使うものでもないのに、わざわざ専門の道具を買うのはちょっと……と感じる人もいるでしょう。
その場合は、おろし金(※プラスチックも可)を使うようにしてください。特に目の細かいおろし金は、チーズ・グレーターの代用品として活躍させやすいでしょう。しばしば「大根おろしがチーズ・グレーターの代用品として使える」と言われていますが、大根おろしのなかでも「鬼おろし」と呼ばれるものは目が粗すぎて、チーズをすりおろすのには向きません。
なお「ピーラーも代用品として使える」と言われることがありますが、ピーラーは代用品にはなりません。ピーラーは「面」で剥ぐものだからです。「面」で剥いだチーズをナイフなどでカットしようとしても、割れてしまったり、ナイフにくっついてしまったりするため、きれいな粉末状にはなりません。
私たちにとって身近な「パルミジャーノ」。身近なものであるからこそ、「ないときの代用品」について覚えておきたいものですね。