とろけるチーズは無数にありますが、その代表と言えばラクレットチーズでしょう。
円盤型の大きなチーズを半月型に切り、切った表面をオーブンで温め、とろけた部分を削り取り、
蒸したじゃがいもや、パン・ソーセージにかけて食べる。
有名なアニメのワンシーンでは、溶かしたチーズの塊をパンに乗せて、山羊のミルクと一緒に食べていましたよね。
話題になったあのチーズを一度は食べてみたいと思った方も多いのではないでしょうか。
あの美味しそうなチーズは「ラクレットチーズ」と言い、主にスイスやフランスの一部の地方で作られる大型のセミハードチーズです。
牛の乳でつくられるラクレットチーズはまろやかでクセのない味わい。溶かした時の香りは食欲をそそります。
今回は、近年日本でも有名になった「ラクレットチーズ」についてご紹介します。
スイス代表するセミハードチーズのラクレットチーズとはどんなチーズ
ラクレットとは、牛の乳でつくられるセミハードタイプのチーズです。
名前の由来は、フランス語の「ラクレ」が元になった言葉で、その歴史は大変古く、正式に名前がついたのは19世紀でした。
16世紀頃から溶かして食べる方法はありましたが、19世紀にスイスのヴァレ州で開催された博覧会で、とある詩人が、溶かした部分を削り取って食べる食べ方を「ラクレット」と呼んだことから命名されたものだと言われています。
スイスのチーズ事情
スイスのチーズにはさまざまな種類があります。
ハードチーズ・セミハードチーズにソフトチーズ、フレッシュチーズやチーズペースト。
日本ではあまり聞かないベリーハードチーズと呼ばれる、専用のかんなで削って食べるチーズもあります。
スイスはアルプス山脈が国土の3分の2を占めていることから農地に適した平野部が少なく、古くから高地での酪農が盛んに行われてきました。
イタリアとの国境にある、アルプスのシンボルとして有名なマッターホルンをはじめ4000m級の高山が連なった山国で、
そのため保存が効く食材として、大きくて硬い「山のチーズ」と呼ばれるチーズがつくられるようになり、
その味わいの良さは世界的にも評価されています。
チーズの品質に定評のあるスイスですが、その理由は厳しい土地の影響で開発が進まず、綺麗な自然が残っており、
そこで飼育される家畜の乳の品質が良いということがひとつの理由です。
それに加え、チーズ製造に関する厳しい品質基準が設けられており、スイスは国をあげての品質管理を徹底しています。
E Uに加盟していないスイスは、国独自の基準を設け、乳種や製造過程、熟成期間などを厳しく管理し、
そのレベルの高さは一度味わってみると納得できるでしょう。
スイスはヨーロッパの中央に位置し,ドイツ,フランス,イタリア、オーストリア,リヒテンシュタインに囲まれた小さな国です。地域によって公用語が違い、生産されるチーズにもさまざまな国の言葉が由来となる名前が付けられていることも、スイス産チーズの特徴です。
前述のとおり、ハードチーズ・セミハードチーズの他にも柔らかくて水分の多いチーズもつくられており、スイスの多様な地形が高品質なチーズを生み出しています。
ラクレットチーズの作り方
チーズの製造過程を簡単に説明すると以下のようになります。
- 原料乳の脂肪分調整や加熱殺菌などの前処理
- 凝固剤 (レンネットと呼ばれる酵素)を加える
- 固まった原料乳をカットし水分を抜く
- 型に詰める
- 塩分を加える
- 熟成させる
ラクレットチーズをはじめとする、ハード・セミハードタイプのタイプのチーズでは、水分を抜く工程のとき、
原料乳を固めるための酵素をやや多めに加え、水分を抜く工程ではお湯で原料乳を洗うという作業が行われます。
スイス産の「ラクレット・デュ・ヴァレ」という名前で販売されるラクレットは、
原料乳に無殺菌の牛乳を使用することが義務付けられており、
「ラクレット・ド・サヴォワ」と呼ばれるフランス・サヴォワ地方産のラクレットは無殺菌の牛乳か、
低温で加熱処理した牛乳の使用が義務付けられています。
このような厳しい規定が、ラクレットチーズのおいしさを保証しているのです。
ラクレットチーズの食べ方
若いラクレットは、まろやかな味わいで、熟成が進むごとに味わいが増していきます。
合わせる食材を選ばずに楽しむのであれば、クセのない熟成の若いラクレットがおすすめです。
伝統的な食べ方
ラクレットチーズは切り口を直火で炙り、溶けたところを削り落とし、じゃがいもやパン、野菜にかけて食べるのが伝統的な食べ方です。
おおよそ5キロはある大きなラクレットチーズを半分に切り、ラクレットオーブンで温めるのは家庭では難しいですが、小さくカットされたラクレットや、スライスされたものを購入し、
調理器具は市販のラクレットグリルや、スライスのラクレットをフライパンなどで加熱すれば、
自宅でも気軽にラクレットチーズを楽しむことができます。
ある程度の大きさの塊で購入し場合は、食べる30分ほど前には常温に戻し、
直前にカットすると本来のおいしさを楽しむことができます。
ラクレットは加熱することで香りがまろやかになり旨味が増すので、ぜひ一度味わってみてください。
h3おすすめレシピ
伝統的な食べ方で楽しんだ後は、さまざまなレシピでラクレットを楽しんでみてください。
牛乳製のクセのないラクレットチーズは、普段使っているスライスチーズやシュレッドチーズと同じように
料理でも大活躍します。
- スライスチーズの代わりラクレットでチーズトースト
- チーズグラタン・チーズオムレツ
- 白ワインを合わせてグリル野菜・白味魚のソースに
- チーズハンバーグ
油分が多く、旨味と適度な塩分のあるラクレットチーズは淡白な味わいの食材に合います。
ご自宅でオリジナルのレシピを楽しんでみるのも良いですね。
ラクレットチーズの保存方法
ラクレットチーズを保管する際は以下のことに注意すると良いでしょう。
1.空気が触れている面にカビが生えてしまうことがあるのでラップに包み冷蔵庫で保管する。
2.他の食品の香りが移らないようラップをかけ、さらに保存容器に入れて保存する。
3.カットされた後のチーズは熟成変化をしないので、早めに食べ切る。
美味しいチーズですが、少ない量を購入することが少し難しいことも多いですよね。
購入時はレシピの計画を立てて購入するのがおすすめです。
まとめ
今回は、まろやかでクセのない味わいで人気のチーズ「ラクレットチーズ」についてご紹介しました。
チーズは美味しいだけでなく、タンパク質が豊富に含まれており、特にセミハードタイプは他のタイプのチーズに比べて5%〜10%も多いと言われおり、アミノ酸も豊富に含まれています。
カルシウムは30 グラムのハードチーズで成人の1日に必要なカルシウム量の4分の1を摂取できると言われており、
さらに乳製品に含まれるビタミンDが食品からのカルシウム吸収を促進してくれます。
美味しいだけでなく機能性も高い「ラクレットチーズ」。
自宅でもお店でも、ぜひ楽しんでみてください。