ミモレットってどんなチーズ?ダニによって作られるって本当?食べれるの?

ミモレット

チーズに限ったことではありませんが、食べ物のなかには、人間にとって有害であることの多い「ダニ」「カビ」などの力を利用して作られているものがあります。

今回はそのなかからミモレットを取り上げ、

・ミモレットとはそもそもどんなチーズ?

・ミモレットとダニの関係

・売られているミモレットにダニは入っている? 食べたときはどうなる?

の3つを解説していきます。

目次

ミモレットってどんなチーズ?ダニによって作られるって本当?

ミモレット

ミモレットは、フランス北部の町「リール」で生まれたチーズです。17世紀ごろに誕生したミモレットは、もともとは「エダム」というオランダチーズの代用品として扱われていました。

今まではオランダからよく入ってきていたエダムが、関税の高額化によってなかなか買えないものになってしまったため、そのエダムに代わるものとしてこの「ミモレット」が作られ始めたわけです。

ミモレットは、非常に特徴的な色をしています。美しいオレンジ色を持っており、一目見ればすぐにミモレットであることがわかるほどに特徴的です。

ちなみにこの美しいオレンジ色は、植物由来のアナトー色素によってつけられています。

ミモレットは「ミ・モレ」というフランス語から名付けられています。この「ミ・モレ」は、フランス語で「半分柔らかい」の意味を持っている言葉です。

実際に、ミモレットは出来立てのころは、この名前にふさわしい柔らかさを持っています。

ただしそれはほんの一時期の間にすぎません。ハードチーズ・セミハードチーズに分類されるミモレットは、熟成が進むに従い、やがて硬さを持ち始めます。

ちなみにこの「熟成期間」によって、ミモレットは2つの種類に分けられています。2~6か月までのものは特に「シュンヌ」、1年以上のものは「ヴィエイユ」と呼ばれているのです。

ただし日本ではシュンヌ・ヴィエイユの区別をつけて販売されることはほとんどなく、単純に「ミモレット」と呼ばれることが多いといえます。

ミモレットの味わいはしばしば、カラスミ(海産物であるボラなどの卵巣を、塩漬け~塩抜き~乾燥の工程を経て食べられるようにしたもの)にたとえられます。

カラスミほど強い味わいはないものの、コクとうまみの詰まった味わいであり、ワインはもちろんのことビールなどにも合う味に仕上がります。

扱いやすいチーズだということもあり、日本でもよく販売されているチーズです。

このように日本人にも好まれる味わいを持つミモレットですが、その味わいを出すために役立っているものがあります。

それが、「ダニ」です。

次の項目では、ダニとミモレットの関係性について解説していきます。

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ミモレットはダニの力でおいしくなる?!ミモレットとダニの深い関係

世の中に存在する食材や料理のなかは、ダニやカビ、あるいは虫などを使って仕立て上げられているものもあります。

ミモレットもまた例外ではありません。

ここでは、ミモレットと、そのミモレットに関わっているダニについて詳しく見ていきましょう。

ミモレットについているダニってどんなもの?

ミモレット作りにおいては、「シロン(『シロ』とも呼ばれる。ここでは特段の事情がない限りは、以下は『シロン』の表記で統一する)」と呼ばれるダニの存在が欠かせません。

このシロンは、私たちを刺す一般的なダニとは異なり、「コナダニ」に分類されるものです(コナダニは、人を刺すことはありません)。非常に小さなダニであり、尻部分に太い毛を持った姿をしています。

このシロンはさまざまな食品につきます。もっとも有名なのは今回取り上げる「ミモレット」ですが、それ以外にも、カツオブシやチョコレートから発見されることもあります。

さてこのシロンですが、実はこれはミモレットに自然発生的に生じるものではありません。

シロンは人為的にミモレットに「付着させられる」ものです。ミモレットを作り、熟成をしようとする段階で、人為的にシロンをミモレットの表面にくっつけるものなのです。

なお、カビを利用して作られるゴルゴンゾーラチーズなどは、ミモレットとは異なり自然発生的にカビを得ることになります。

本来ならば人間にとって有害になる可能性が高いものであるという共通点を持つものを利用して作られているチーズという共通点を持っているゴルゴンゾーラとミモレットですが、ゴルゴンゾーラのカビが自然に発生するものです。

それに対して、ミモレットのダニはあくまで人為的に付着させられるものであるという違いがあるのです。

シロン(ダニ)が働くおかげで、ミモレットは安定し、コクとうまみと香りを持つようになる

ミモレットは、シロンの力を借りて熟成していきます。

熟成期間中に発生してしまう可能性のあるカビをシロンは食べつくし、ミモレットの品質を安定させます。

チーズの中の脂肪分をガードしたり、水分量をコントロールしたりするのも、このミモレットの役目です。

なお熟成期間が進むにつれて、ミモレットの量も増えていきます。そのため熟成が進んだミモレットは、表面に岩のように白いゴツゴツとした突起を持つようになります。

上では「熟成が進んだミモレットはヴィエイユと呼ぶ」としましたが、ヴィエイユでも年月を重ねたものは、シロンの力により深いコクとうまみをたたえるようになります。

つまりシロンは、ミモレットの品質を安定化させて商品としてリリースできる環境を作ることにも、またミモレットの味わいを良くするためにも欠かすことのできないカビだといえるのです。

なお、このシロンは、あまり知られてはいないものの、ミモレットの「香り」を出すことにも役立っているという研究結果もあります。

ミモレットには多くの香り成分が含まれていますが、どうやらこの香りの一部はシロンからきているらしいのです。

研究の一環として、シロンを加えないで作ったミモレットを用意したところ、シロンを加えて作ったミモレットにはある香りの一部が欠如していることがわかりました。

ちなみにその「欠如した香り」は、かんきつ系のレモンに似た香りだったそうです。

このレモンに似た香りはシロンに含まれている(あるいはシロンが出す)「ネラール」と呼ばれる成分によって出されるものである、とされています。

シロンなしで作られたミモレットの香りが、一般的な製法で作られたミモレットの香りよりも弱いのは、このネラールの欠如によるものだと考えられています。

ミモレット以外にもカビを利用したチーズはある!「ミルベンケーゼ」

ダニを使ったチーズとしてもっとも有名なのはミモレットですが、ミモレット以外にもダニを使って作るチーズはあります。

たとえば、「ミルベンケーゼ(『メルンカーゼ』とも呼ばれる。ここでは特段の事情がない限り、以下では『ミルベンケーゼ』の表現に統一する)がそうです。

ミルベンケーゼはそのまま「ダニチーズ」と訳されるものであり、ドイツのザクセン=アンハルト州ヴュルヒヴィッツでのみ生産されているチーズです。

ミルベンケーゼ作りの文化が途絶えそうになっていたときに地元の教師がこれに着目、製法を伝え続けたという背景を持ちます。

現地のヴュルヒヴィッツ村では、このミルベンケーゼを作る際に欠かせないダニを大理石に写し取って彫像として飾るほどにこのミルベンケーゼ(とダニ)を大切にしています。

しかし2022年の現在では、食品衛生上かなりグレーなものであるらしく、扱いが難しいチーズでもあります。おそらく日本ではこのミルベンケーゼは手に入らないでしょう。

また、食べる際に、ダニのついた表皮を除いて食べるミモレットとは異なり、ミルベンケーゼの場合はダニがついている部分もそのまま食べることになりますから、その意味でもミルベンケーゼはかなり難易度の高いチーズだといえそうです。

また「アーティズー」と呼ばれるチーズも、ダニを使って作られています。

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ミモレットのダニは食べてしまっても問題ありませんが、アレルギーの人はご注意を!

女性

ここまでミモレットとダニ(シロン)の関係について解説してきました。ただここで、「本当に、ダニ(シロン)は安全なのか?」と気になる人もいるでしょう。これについて解説していきます。

販売されているミモレットにダニはほぼいない、表皮もはがして食べるため安全

実は、2013年には、アメリカの食品医薬品局が「生きたダニ(シロン)がついている」として、フランスからきたミモレットを税関で差し止めたことがあります(ミモレットファンの抗議により、この措置はすぐに解除されました)。

しかし2022年の現在、ダニ(シロン)のついたミモレットを食べても健康被害はないとする説が一般的になっています。

上でも述べたように、ミモレットのダニ(シロン)は「コナダニ」であって、人間に有害な一般的なダニとは明確に区別されます。

そのため、ミモレットについているダニ(シロン)を食べてしまっても、人体には基本的には被害はありません。

また、そもそも、ミモレットは輸出段階でダニ(シロン)をすべて払い落とされます。

このため、現在スーパーなどで売られているミモレットに、ダニ(シロン)がついている可能性は極めて低いといえます。

さらに、すでに述べた通り、ミモレットは「ダニ(シロン)のついている表皮は食べずに、ダニ(シロン)の及んでいない中身部分のみを食べるチーズ」です。

このようなことからも、ミモレットを食べたことによる健康被害はほとんど起こらないと考えても構わないでしょう。

一部の人に関しては注意!アレルギーの人は警戒をして

日本で販売されているミモレットの場合、ダニ(シロン)はそもそもほとんどついていませんし、仮に食べてしまってもまず問題はありません。

ただ、ごく一部の人にとっては、それでもミモレットが危険な食材となる可能性はあります。

ごくまれに、「経口ダニアレルギー」を持っている人がいます。

これは「パンケーキ症候群」とも呼ばれるものであり、小麦粉などに混入したダニを経口摂取で取り入れることによって起きうるアナフィラキシーのことです。

千足やアレルギー性鼻炎などを患っている人に多くみられるものであ、このような人がミモレットのダニ(シロン)を食べた場合に、体調の異変が起きる可能性は否定できません。

このアレルギー症状は食後30分以内に生じることが多いといえます。

呼吸困難や喘鳴(ぜいめい)、下痢などを伴うものであり、非常に重い症状を見せます。

このような状況に陥った場合はすぐに救急車を呼ぶようにしてください。

なお、ミモレットについているダニ(シロン)は、冷蔵庫で保管したからといって死ぬものではありません。

払い落としきれなかったダニ(シロン)がミモレットについていた場合、そのダニ(シロン)は冷蔵庫保管でも死ぬことはなく、ゆっくりとではありますが繁殖は続けます。

ミモレットのダニ(シロン)の及ぼす健康被害については過度に敏感になる必要はありませんが、アレルギーを持っている人の場合は少し注意したほうがよさそうです。

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ミモレットのおいしい食べ方を知ろう

ミモレット

ミモレットについているダニは「絶対に、100パーセント安全なもの」ではありません。

しかし基本的には安全なものであり、またミモレット自体も非常においしいものです。

そのおいしいミモレットをさらにおいしく味わえるようになるための「食べ方」について解説していきます。

ミモレットの基本の食べ方は、「表皮部分を切り落として、スライスをして食べる」です。

ワインやビール、ウイスキー、チューハイと、どんなものにでも合わせやすいおつまみになります。

もちろんパンと組み合わせても構いません。

サラダの具材として使っても良いものですし、サンドイッチに挟み込んで食べても構いません。

ミモレットは比較的硬いチーズなので、かたまりの状態であればすりおろすことも可能です。

すりおろしたミモレットをパスタやリゾットに振りかけると、パスタ・リゾットが「一枚上の味」になります。

粉チーズというとパルミジャーノ・レッジャーノ(やそれを模したもの)が有名ですが、ミモレットで作る粉チーズもなかなかおすすめです。

人間の敵ともなりうるダニによって安定し、コクとうまみを得、香り高さまで手に入れるちょっと不思議なチーズ、それが「ミモレット」です。

ミモレットに関する正しい知識を知って、おいしく食べていってくださいね。

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