あなたは、ワインに力を入れている飲食店で注がれたワインを見て「少ないな」と思ったことはないでしょうか。
グラスは大きいのにそれとはアンバランスなほどにワインは少量。しかも、カジュアルな店は別として、こだわっている店ほどワインの量が少なく感じます。
なぜ少ないのかわかりますか?
今回は、このワインを注ぐ量についてお話してまいりたいと思います。なぜ少ないのか、また注がれているのはどのくらいの量なのか、などを説明しますのでぜひ読んでいってください。
なぜ注ぐ量でワインの味わいが変わるのか?
ワインは、グラスにたっぷりと注がないことでおいしく飲めます。
その理由や適量について説明しましょう。
多く入れると香りを楽しめない
ワインを少なめに注ぐのは香りを楽しめるようにするためです。
ワインの味わいにとって香りはとても重要な要素であり、おいしいワインとは香りが良いワインともいえます。
ですから、ワイングラスはワインの香りを楽しめるような作りになっているのです。見ていただくと、ワインを入れる「ボウル」といわれる部分は、ほとんどのものでワインの香りを溜め込むために、多かれ少なかれ真ん中が膨らんでるのがわかるのではないでしょうか。
せっかくこのように作ってあるのに、ワインをたっぷり注いでしまうと香りを溜め込むことができません。したがって、この香りを溜め込む空間を確保するために少なめに注ぐのです。
また、ワインは栓を開けてすぐの時などでは、香りがあまり立たないものです。そこで、グラスを回してワインと空気を多く触れさせることで香りを開かせることがあります。
ワインをくるくる回すことをスワリングと言います。
このときにワインがたっぷり入っていると回しにくかったり、ときにはこぼしてしまったりもします。このことも、あまり注ぎすぎないようにする理由です。
スワリングについて詳しくはこちらをお読みください。
標準的な注ぐ量
注ぐべきワインの量は厳密に決まっているわけではありませんが、一般的にワイン1本から6杯程度とるものとされています。つまり、1杯あたり125mlです。
ですから、120ml前後を標準的な1杯の量と考えてよいのではないでしょうか。
ちなみに、大手ワイングラスメーカーであるリーデル社では、赤ワイン用グラスでは1杯120~150ml、白ワイン用グラスでは1杯90ml程度を想定してグラスを設計しているようです。白ワインのほうが少ないのは、量が多いと飲み切る前にぬるくなるからです。そのため、白ワイン用のグラスのほうが小さく作られています。
また、お店によってはグラスの縁までなみなみにワインを注ぐこともありますが、これは演出でありワインをおいしく飲むためのものではないことはご承知ください。
簡単に適量を注ぐ方法
先程、ワインを注ぐ際の標準的な量について書きましたが、すべてのワイングラスがこの量を想定して作られているわけではありません。そこで、それぞれのワイングラスにとっての適量を見極める必要があります。
その見分け方ですが、グラスの最も膨らんでいる部分から指一本分下あたりが、そのグラスにおける適量とされています。これは通常のワイングラスであれば、全体の3分の1程度となるはずです。
ただし、スパークリングワイン用のフルートグラスと呼ばれるものは、あまり膨らみがなく細長い形をしているので、この量り方では参考になりません。ほとんどのフルートグラスの場合は、全体量の6~7割程度が適量とされています。
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ワインを注ぐ際のミニ知識
ワインを注ぐ際には、注ぐ量以外にも知っていると「デキる人」だと思われるポイントがありますので、いくつかご紹介しておきます。
ワインのスマートな注ぎ方
ワインを注ぐ時は、ボトルに貼ってあるラベルが上を向くようにしましょう。これは、注がれている人がラベルを確認できるようにするためとワインでラベルを汚してしまわないようにするためです。
注ぎ方も、勢いよく注ぐのではなく、ゆっくりと少量ずつ注ぐようにします。これも、主に二つの理由があります。一つは、ワインと空気が多く触れるようにすることで香り立ちを良くするため。
もう一つは、ボトルの中にオリ(澱)という堆積物がある場合に、オリが舞いにくく、グラスに入らないようにするためです。
また、ワイングラスは薄く割れやすいものが多いので、ボトルをワイングラスの縁に触れさせないように気をつけましょう。
ソムリエなどは片手で注ぐ場合が多いですが、これもルールではないので、難しければ両手で注いでも結構です。
注ぐ時の順番
3人以上でワインを飲んでいる時、誰のグラスから注いでいけばいいのでしょうか。
この場合は、レディーファーストです。はじめに女性のグラスに注ぎ、次に男性のグラスに注ぎましょう。女性が複数いる場合には、年配者からというのが一応のマナーです。
注ぎ足しをしてもOK
ワインがグラスに残っている状態で、注ぎ足しをしてもよいのでしょうか?
これは国によってルールが違い、フランスではOKだけれどイギリスではNGのようです。日本では、フランス同様注ぎ足しをしても大丈夫です。ただし、このときも適量(グラスの最も膨らんでいる部分から指一本分下あたり)を超えないように気をつけてください。
まとめ
グラスにたっぷりとワインを注がないのは、ワインの香りを堪能し、よりおいしく飲むためでした。
もし、今まであなたがワインを多めに注いでいたのであれば、これからは少なめにして、ワインの香りをもっと楽しんでみてはいかがでしょうか。もちろん、楽しみ方は人それぞれなので、そうしなければいけないというわけではありません。
ただ、注ぐ量もワインの楽しみ方の一つだと受け止めて、いろいろなワインの楽しみ方をしていただければうれしく思います。