世界中で愛されている赤ワイン。
その中でも、ピノ・ノワールやシラーなどと並んで人気の高い品種として知られているのが、カベルネソーヴィニヨンとメルローですね。
ワイン好きのあなたなら、何度も聞いたことがある名前でしょう。
しかし「どう違うのか?」と質問されると、案外答えづらいなと思いますよね。
ということで今回は、カベルネソーヴィニヨンとメルローの違いを比較し、それぞれの特徴や2種類の赤ワインの味わい、飲み頃、合う料理などを解説します。 品種の違いを知って、もっと赤ワインを楽しみたい、とお思いでしたらぜひ参考にしてください!
カベルネソーヴィニヨン | メルロー | |
味わい | 渋みと酸味が強く、フルーティーで濃厚な味わい | タンニンが柔らかく、フルーティーでやさしい味わい |
産地 | フランス・ボルドー地方、ジロンド川左岸 | フランス・ボルドー地方、ジロンド川右岸 |
適した料理 | ステーキやロースト、煮込みなどしっかりした肉料理 | 子牛のような軽めの肉料理 |
飲み頃 | 5年以上の熟成がよいが、カジュアルなものでは熟成不要 | 熟成不要、長くても10年以内 |
色 | 濃い赤紫色 | 赤紫色 |
カベルネソーヴィニヨンとメルローの違いを生み出す条件
カベルネソーヴィニヨンとメルローは赤ワインを代表するブドウ品種とお伝えしました。
しかし、この2つはライバルというより、むしろパートナーといえる関係かもしれません。
それは、違いがあることによってお互いを補い合えるからです。
昔からボルドーでは、2つの品種をブレンドすることでワインの品質を一定レベルに保ってきたことがそれを示しています。
そこで、違いを生み出す条件を見てみましょう。
品種の原産地と特徴
まずは、それぞれの原産地と大まかな特徴から説明します。
カベルネソーヴィニヨン
カベルネソーヴィニヨンは、フランス・ボルドー地方を原産とする黒ブドウ品種の1つであり、世界中で広く栽培されています。
渋みと酸味が強く、フルーティーで濃厚な味わいのため、重くてしっかりした赤ワインワイン用の品種としては絶対王者ともいえる存在です。
熟成によってさらに複雑な味わいになるため、コレクターにとっても貴重な品種といえるでしょう。
フランス以外では、アメリカやオーストラリア、アルゼンチンなどで、多く栽培されています。
メルロー
メルローも、同じくボルドー地方が原産の黒ブドウ品種であり、世界的に人気があります。
ただし、カベルネ・ソーヴィニヨンに比べてタンニンが柔らかく、フルーティーでやさしい味わいが特徴です。
かつては、補助的な品種と捉えられていましたが、現在では単一で用いられることも多くなっています。
メルローから作られる赤ワインの生産量が最も多い国はフランスですが、それ以外ではイタリアやアメリカ、チリなどがあります。
栽培地の土壌と気候の違い
この2つの品種はともにボルドーが原産地ではありますが、中心となる栽培地の土壌や気候が異なっています。
どういった違いがあるのでしょうか。
カベルネソーヴィニヨン
まず、カベルネソーヴィニヨンは、ボルドーを流れるジロンド川の左岸、つまり河口に向かって左側で多く栽培されています。
なぜかというと、左岸は砂利質の土壌だからです。
砂利は光を反射し、かつ熱を溜め込みやすいため、日射量が多く気温も高くなりやすいうえに、水はけも良くなります。
それが、高温と乾燥を好むカベルネソーヴィニヨンにとって、好条件となるのです。
晩熟なブドウであるカベルネソーヴィニヨンは、遅い時期の収穫となりますので、秋が深まっても温かく乾燥している必要があります。
その点でも左岸が適しているといえるでしょう。
メルロー
メルローは、右岸での栽培が多くなります。
砂利質の左岸に対して、右岸は粘土質となっています。
粘土質の土壌は日光が当たっても熱を溜めにくく、また水分も多くなりがちです。
そのため、やや涼しく湿気も多くなります。
それが、カベルネソーヴィニヨンには向かないが、メルローは育ちやすいという条件になっています。
また、メルローはカベルネソーヴィニヨンに比べるとかなり早熟です。
果実の熟成が進みやすいので、早い時期に収穫できます。
そのため、完熟させるのが難しくて品質がばらつきやすいカベルネソーヴィニヨンのリスクを減らすのに好都合な品種なのです。
生産過程の違い
これらの品種は特徴が異なるため、ワインにするときの方向性も違っています。
それぞれ、どのように作られることが多いのでしょうか。
カベルネソーヴィニヨン
カベルネソーヴィニヨンは、メルローと比べて、渋みや酸味、果実味などがしっかりしています。
この特徴は、長期熟成に向くと同時に、がっしりとしたワインに仕立てやすいということにもなります。
そのため、発酵期間を長くしたり、樽熟成をさせたりと、より豊潤な作り方をすることが多くなるのです。
メルロー
一方メルローは、繊細な味わいとなる傾向にあります。
そのため、カベルネソーヴィニヨンほどには強い酒質にすることは少なく、柔らかさを残す作り方が多くなります。
一般的には、あまり作り込み過ぎないというのが、メルローから作られるワインの特徴です。
カベルネソーヴィニヨンとメルローの味わいの違い
カベルネソーヴィニヨンとメルローは、同じ原産地でありながら、適した土壌や気候条件が異なるのでした。
ではこれが、どのような味わいの違いとなり、飲み頃にどう影響するのかを見ていきましょう。
味わいの特徴
この2品種の味わいの特徴から見ていきます。
カベルネソーヴィニヨン
この品種は渋みと酸味がしっかりしていて、パワフルな味わいが特徴です。
果実にたとえると、赤ではなく黒色をした果実、カシスやブラックベリーなどが浮かぶでしょう。
さらに、スパイスやハーブなども感じられ、長期の樽熟成をしたものはバニラの甘い香りも豊かです。
メルロー
対してメルローは、フルーティーさがかなり感じられるはずです。
プラムやダークチェリーなど、赤みを帯びている果物が浮かぶのではないでしょうか。
スミレの花のような香りもあるので、これらを包み隠してしまわないように、優しい味わいに仕立てられることが多くなります。
程よい味わいとなる飲み頃
作られるワインの味わいが違えば飲み頃も異なります。
大まかな目安についてお話しします。
カベルネソーヴィニヨン
渋みや酸味が強いということは、長く保存できるということであり、逆に作ってすぐは飲み頃ではないということでもあります。
かつては、カベルネソーヴィニヨンから作られたものは10年は寝かせるべきといわれたくらいです。
しかし、今は栽培・醸造技術も進歩したので、一部を除けば寝かせなくてもおいしく飲めるでしょう。
特にカジュアルなものでは、全く熟成の必要はありません。
ただし、質の高いものは、熟成させることでより豊かな味わいになりますので、5年以上待ってから飲むのもよいでしょう。
メルロー
一方、酒質の柔らかなメルローワインはすぐに飲むことができ、熟成にそれほど時間を必要としません。
もちろん、熟成をさせることで味わいが洗練されるものも多くありますので、熟成を楽しむことは可能です。
ただし一般的には、カベルネソーヴィニヨン程には長期熟成には向かないので、10年以内に飲むのがよいでしょう。
カベルネソーヴィニヨンとメルローの、料理との相性とワインの選び方
ワインを飲むなら食事と合わせること、いわゆるマリアージュを楽しみたくなるものです。
ということで、それぞれの合う料理が何なのかを見てみましょう。
また、それぞれの品種のワインを選ぶ際のポイントについても解説しておきます。
料理とのマリアージュ
では早速、それぞれの品種から作られたワインと料理との相性を見てみましょう。
カベルネソーヴィニヨン
カベルネソーヴィニヨンのワインは、骨太な骨格がステーキやローストをした料理の強烈な風味に耐えられるので、ボリュームのある赤身の肉料理ととても合います。
他にも、濃厚なソースや煮込み料理とも相性が抜群です。
パンチがある肉料理であれば、とりあえずこの品種のワインを選んでおけば間違いがないでしょう。
メルロー
一方、メルローのワインは、もう少し軽めの料理、軽めのソースと合わせるのが王道です。
特に、子牛のような繊細な味わいの肉料理に向いています。
柔らかなタンニンとフルーティーな香りが料理に寄り添って、相思相愛のマリアージュと感じられるはずです。
他にも、トマトソースの肉料理やパスタなど、カジュアルな料理にも合わせやすいです。
ワインの選び方のポイント
ワインは飲んでみなければわからないというのが本当のところですが、それでは怖くて買えなくなるでしょう。
そこで、ワインを選ぶ際の大まかなポイントについてお話しします。
カベルネソーヴィニヨン
もし、同じワイナリーのシリーズ化したワインであれば、カベルネソーヴィニヨンから作られたものが一番しっかりした作りになっているはずです。
ですから、しっかりしたものを飲みたければ、この品種を選ぶのが正解といえるでしょう。
ただし、ワインは価格帯によって味わいの違いが大きいお酒でもあります。
一般的に、ある価格までは、高くなるほど、味のボリュームが大きくなるといってよいでしょう。
あとは、緯度が低い生産地ほど、ブドウの糖度が上がりやすく、ワインもしっかりしたものになりやすいので、生産地を参考にするのもおすすめです。
メルロー
メルローは、カベルネソーヴィニヨンほど個性が際立っていないので、選ぶのが少し難しいところがあります。
裏を返せば、どれを選んでもバランスがよく、ハズレがないとも捉えられます。
それだけ、価格差もカベルネソーヴィニヨンのワインより感じにくいといえるでしょう。
ただ、日本で作られているメルローはよりマイルドなので、和食に国産のメルローを合わせるのはおすすめです。
まとめ
今回は、赤ワインの代表的な2つの品種、カベルネソーヴィニヨンとメルローについてお話ししました。
原産地は、フランス・ボルドー地方と同じなのに、いろいろと違いがあったのが興味深かったのではないでしょうか。
品種自体の特徴の違いもあるのですが、川を1本隔てるだけで土壌や気候が異なり、その違いを際立たせていました。
ただし、この2つの品種はブレンドされることでお互いの不得手なところをカバーしあう、良きパートナーでもあります。 そのうえで、それぞれのワインに合った味わい方をしたり、時には両者をブレンドしたものを飲んだりと、様々に楽しんでみてください。