イタリアのワイン法を超越した独自の考え方で造られたワイン。それが「スーパータスカン」とよばれるまでになりました。いまでは超高級ワイン!
タスカンとはトスカーナと言う意味でその名の通りトスカーナで生まれました。
イタリアワインの世界は伝統と革新との対峙で歩まれてきました。又、土着品種へのこだわりも強い。それを打ち破った「スーパータスカン」について詳しく解説します。
最後にはセカンドワインやサードワインについてもお伝えします!
スーパータスカンはどのように生まれた?
全ての始まりは1978年。イギリスのワイン雑誌「デキャンター」が主催するイベントでした。
シャトーマルゴーなどの名だたるワインをおさえてベストカベルネに選出されたワイン。
これが有名な「サッシカイア」でした。
イタリアの土着品種へのこだわりが詰まったワイン法
ワイン法でいえば古くからイタリアではカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどの国際品種で造るワインはテーブルワインとして扱われていました。ワイン法では土着品種で造るワインが上級ワインとされています。ここでおさらいしてみましょう。
上から「DOCG」「DOC」「IGT」「Vino da Tabola(現在はVino)」
このワイン法は1935年にフランスで制定されたワイン法にちなんで作られています。フランスはワイン輸出で成功しています。又、当時のイタリアワインに偽物が横行していたのをうけてワイン法が制定されています。
いいものを造りたい生産者は法律なんて関係なかった
1970年代のイタリアワインはワインルネッサンス期とも呼ばれ人々のワインの需要が高まっていました。大衆のお酒として安いワインが大量に生産。しかし安く造ろうとワインにメチルアルコールが混入する事件が発生。消費者からは信頼を失いました。
イタリアワインはここから高品質へと路線を変えていきました。
そこで土着品種のこだわりもワイン法による格付けも度外視。
質の高いワインを造る生産者がでてきました。
趣味のワイン造りから始まった「サッシカイア」
トスカーナ州ティレニア海に面するボルゲリ。そこでシャトー・ラフィット・ロートシルトからカベルネ・ソーヴィニヨンの苗木を植えて趣味の延長でワインを造っていた人物がいました。その名はボルドーワイン愛好家マリオ・インチーザ・ロケッタ侯爵です。
造ってみるとぶどうのポテンシャルが非常に高い高品質ワインができたので商業用として造る決意をします。
当時「アンティノリ」というワイン造りの名家がありました。そこのトップ醸造家であるジャコモ・タキスに手ほどきを受けて1968年にファーストヴィンテージが完成しました。
それが有名な「サッシカイア」の誕生でした。やはりテーブルワイン「Vino da Tabola」でのスタート。
テーブルワイン「サッシカイア」が成功した訳
なぜこのテーブルワインが世界中で人気のワインになったのでしょうか?トップ醸造家の手ほどきを受けたのももちろんです。答えは「テロワール」と「醸造」にありました。
テロワールとは土壌や気候条件などのことです。
ボルドーから受け継いだカベルネ・ソーヴィニヨンはより温暖なボルゲリに相性がよかったようです。又、この地は地中海性気候で雨の量が少ない。成熟度がぐっとあがります。
そしてティレニア海からの吹き抜ける風によって過熟を防ぎ、病気や害虫の被害が少ない理想の土地。
さらに土壌もおおきなポイントでした。ボルゲリは小石や砂利が多く含まれます。水はけの良い土地を好むカベルネ・ソーヴィニヨンにとって最適の栽培地だったのです。
次に醸造方法です。マリオ・インチーザ・ロケッタ侯爵のとった醸造はステンレスタンクを使い発酵。モダンな造りとされているフレンチオークの新樽を30%使いました。
当時のイタリアではクロアチア産スラヴォニア・オークの大樽で仕込むのが主流。衛生的なステンレスタンクやフレンチオークはより健全なワインを生みました。
そしてスーパータスカンはDOCへ
「テーブルワインがDOC、DOCGワインよりも高値で売れている。」
イタリアの役人はさぞかしおどろいたことでしょう。
なんと「サッシカイア」のあるボルゲリの赤ワインを格付けDOCに昇格させました。もちろん国際品種で造る規定で認定されたイタリアワインは初めてでした。
ブームで生まれた次世代スーパータスカン
ボルゲリのスーパータスカンの成功をみて新進気鋭の造り手は大興奮。各地で次世代のスーパータスカンが生まれました。いまではキャンティ・クラシコ地区やモンタルチーノ地区でも次世代スーパータスカンが造られています。
国際品種と土着品種のブレンドワインもあり、より質の高いワインが出来上がっています。
実はスーパータスカンは再ブーム
ぶどうの高いポテンシャルを引き出しているスーパータスカン。
実は2000年ごろに一度ブームが終わっています。それはありとあらゆる生産者が名乗りをあげスーパータスカンが出来上がりました。そこへナチュラルワインブームやイタリア土着品種への再注目などがあり一度は飽和状態になりました。
しかし近年、若くても熟成していても楽しめる普遍的なスタイルに注目が集まっています。
イタリアのデキャンター誌では「イタリアワインへの投資」としてスーパータスカンを特集。価格は高騰しているようです。
お手頃スーパーセカンドワイン
一度は飲んでみたいスーパータスカンですがやはり価格が問題です。
一般的に気がるに飲むワインとしては手が届きません。
そこでおすすめなのがセカンドワイン、サードワインです。
10万以上するスーパータスカン。そこで同じ生産者が若いぶどうを使用したり近くの畑の同じブレンドを使用したりして造っている、セカンドワインやサードワインが沢山あります。
まったく同じ味わいではないですがワイン造りの考えは同じです。味わいはもちろん素晴らしい味わいです。セカンドワインだと10,000円まで、サードワインになると3,000円くらいで購入できるのでおすすめです。
スーパータスカンのあたり年
今や各地で造られているスーパータスカンなので地域差はあると思います。元祖ともいえるトスカーナであれば2006年、2010年、2016年と言われています。
特に2000年代の始め頃は需要が高まっているようですね。
スーパータスカンはマイクロクリマといって地域ごとに気候が変わるので、気になる生産者のあたり年を調べるのも素敵ですね。
最後に
本日はイタリアのシンデレラワイン、「スーパータスカン」についてお伝えしました。世界のトップワインともいえるまでには様々な歴史があったのですね。それをはねのけて良いものを造りたいという醸造家やワイン商がいたからこそ、今日の素晴らしいワインがあるのですね。