赤ワインと鉄分の関係~タンニンは悪者か?

ワインを飲む女性

赤ワインには数多くの、そして多種多様の栄養素が含まれています。今回はこの「赤ワインと栄養素」のなかから、特に「鉄分」を取り上げて解説していきます。

・赤ワインに含まれている鉄分はどれくらいなのか

・赤ワインが原因で起きる可能性がある鉄欠乏性貧血とは

・「タンニン」は悪者か?

・赤ワインとチーズの関係性

について解説していきます。

目次

赤ワインに含まれている鉄分は何グラム? 白ワインやロゼワインとの比較とは

赤ワイングラス

「鉄分(鉄)」は、必須ミネラルのうちのひとつに数えられるものです。体中に酸素と栄養素を届ける役割を持つ赤血球を作るための成分であるとともに、疲労を回復させるためのとても重要な成分でもあります。鉄分が足りないと、血圧が異常に低くなったり、めまいに悩まされたり、肌が著しく荒れたりしてしまいます。

このため厚生労働省でも「1日に取るべき鉄分の量」を定めています。これは年齢や性別によって多少異なり、成長期や生理のある女性は多く必要とし、それ以外の人はやや低めです。

15-17歳18-29歳30-49歳50-69歳70歳―
男性8.0(推奨量9.56.0(推奨量7.0)6.5(推奨量7.5)6.0(推奨量7.5)6.0(推奨量7.0)
女性生理なし5.5((推奨量7.0)5.0(推奨量6.0)5.5(推奨量6.5)5.5(推奨量6.5)5.0(推奨量6.0)
女性生理あり8.5(推奨量10.5)8,5(推奨量10.5)9.0(推奨量11.0)9.0(推奨量11.0)指定なし

以下では、仮の数字として「8.0ミリグラム」を例にとることとしましょう。

さて、ここで赤ワインの鉄分含有量について見ていきましょう。

赤ワインは数多くの栄養分を含むものですが、鉄分の含有量はそう多くありません。

赤ワイン100ミリリットルに含まれる鉄分の量は、わずか0.4ミリグラムです。ちなみに栄養分によっては赤ワイン/白ワイン/ロゼワインで違いがみられるものもありますが、鉄分の含有量に関してはいずれも大差はありません。赤ワインが0,4ミリグラム、白ワインが0.3ミリグラム、ロゼワインが0.4ミリグラムで、その差はごくわずかです。

上でも述べた通り、鉄の1日の必要量は約8.0ミリグラムです。この量を赤ワインのみで取り入れようとすると、実に2000ミリリットル・2リットルもの赤ワインを摂取しなければならなくなります。つまり、赤ワインのみで1日に必要な鉄の量をとろうとすることは現実的ではありません。

なお付け加えておくと、お酒は軒並み鉄分の含有量が低いカテゴリーだといえます。上では「赤ワインの鉄分の含有量は0.4グラムであり、決して多くない」としましたが、ほかのアルコール飲料も軒並み0.0~0,1ミリグラムです。いわゆる「どんぐりの背比べ」状態ではありますが、赤ワインの含有量は「お酒」というカテゴライズで見たときは、実は1位なのです。

出典:厚生労働省「鉄の食事摂取基準量mg/.日」

大修館書店(文部科学省科学技術・学術審議会資源調査分科会報告「五訂増補日本食品標準成分表」準拠)「新カラーガイド食品成分表(改訂版)」p214-215

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むしろ赤ワインの飲みすぎが鉄欠乏性貧血を招く可能性が……その原因とは

ほかのアルコール飲料に比べれば鉄分の含有量が多い赤ワインですが、それも微々たる差です。つまり、赤ワインは決して「鉄分摂取のための優れた選択肢」にはなりえません。

むしろ、赤ワインの飲みすぎは「鉄欠乏性貧血」を招く原因にもなります。

鉄欠乏性貧血とは、その名前の通り、鉄分の不足によって起きる貧血です。

貧血のうちの70パーセントがこの鉄欠乏性貧血に分類されるといわれており、妊娠ができる女性のうちの4人に1人がこの鉄欠乏性貧血の状態にあるとされています(鉄欠乏性貧血の症状は上で述べた「鉄分不足によってもたらされる症状」とほぼ同じです)。

赤ワインに含まれている成分のうちのひとつである「タンニン」は、体内に入ってきている鉄イオンと結びつく性質を持っています。そして鉄分が正常に吸収することを妨げます。

もちろん摂取する赤ワインの量が多ければ多いほど体内に入ってくるタンニンの量も増えますから、鉄欠乏性貧血が起きる可能性は高くなります。

このようなことから、赤ワインを飲む場合は、レバーなどのように鉄分を多く含む食材を積極的にとるべきだとされています。

なおレバーは、調理方法次第ではありますが、赤ワインとの相性も悪くないので、比較的一緒に取りやすい食材だといえるでしょう。特にレバーペーストはバケットやチーズと合わせて、赤ワインとともに楽しむ人が多いものです。

レバーに含まれている鉄分は非常に多く、わずか60グラム程度をとるだけで、1日に必要な分の鉄分を摂取できます。ちなみにレバーは、赤ワインなどで軽く処理をしてやると、そのくさみを抜くことができます。

それ以外に鉄分が多く含まれているものとしては「はまぐりの佃煮」「パセリ」「などが挙げられますが、魚介類は赤ワインと合わせるのが少々難しく、パセリはそもそも大量に食べられるものではありません。

この場合は、コンビーフ缶などを利用するとよいでしょう。コンビーフには豊かな鉄分が含まれており、230グラム程度をとれば1日の摂取量をクリアできるものです。

コンビーフだけで摂取することは少し難しかったとしても、ほかの食材と組み合わせたうえで、「3食で分けて取ればよい」と考えれば、1日の目安となる数字をクリアすることはそれほど難しくないかと思われます。

また、鴨なども比較的鉄分含有量の多い食材として知られています。

出典;のなか内科「貧血(鉄欠乏性貧血を中心に)/その他の疾患

簡単! 栄養andカロリー計算「鉄分」

https://www.eiyoukeisan.com/calorie/nut_list/iron.html

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鉄分不足を招くタンニンは悪者か?

赤ワインは鉄欠乏性貧血を招く要因のうちのひとつであるため、「赤ワインと鉄分」の関係だけを見ていくと、「赤ワインに含まれているタンニンは悪者である」とみえてしまいます。

しかしこの認識は誤りです。赤ワインに含まれているタンニンは、たしかに「鉄との結びつき」という点だけを見れば問題のある栄養分ではありますが、決してタンニンは悪者ではありません。

タンニンは非常に有用性の高いものだからです。

そもそもタンニンとはどんなもの?その効果とは

タンニンはポリフェノールの一種です。

ポリフェノール(タンニン)は高い抗酸化作用を持つものであり、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の働きを抑制する効果があります。

ポリフェノール(タンニン)を摂取することで生活習慣病になる可能性を低くできるといわれており、非常に多くの人に注目されています。

さらにポリフェノール(タンニン)は脳の認知機能の維持に関係していたり、体の代謝機能を向上させたりといった役割も期待できます。

ポリフェノール(タンニン)は「肌に塗る」というかたちで摂取した場合肌を引き締める効果がありますが、「経口摂取」というかたちで取り入れたときには美肌効果を発揮します。

ポリフェノール(タンニン)は肌が黒くなる原因であるメラニンを作り出す細胞が増えることを抑え、肌を白く保つために役立っているのです。

また生活習慣病を抑制する抗酸化作用は、肌の老化を防いだり、肌トラブルの発生リスクを抑えたりするためにも役立ちます。

ポリフェノール(タンニン)の効果はすでに実証されており、いくつもの研究論文でその有用性が確認されています。

ポリフェノール(タンニン)を取りたいのであれば赤ワインを

ワインを飲む女性

ワインは昔から健康に良いものだとされてきていますが、それはこの「ポリフェノール(タンニン)」の効果によるところが非常に大きいといえます。

そのため、健康目的でとるのであれば、白ワインよりも赤ワインの方が望ましいとされてきていました。なぜならワインに含まれるポリフェノール(タンニン)は、その多くがブドウの皮や種を由来とするものだからです。

赤ワインの場合は黒葡萄を果汁と果皮と種がまじりあうように一度に粉砕して作り上げられますが、白ワインの場合はブドウの皮も種も取り除いて果汁だけから作ります。

そのため、白ワインにはこの有用とされるポリフェノール(タンニン)がほとんど含まれていないのです。

ただし、「白ワインにはまったくポリフェノール(タンニン)が含まれていない」とするのは誤りです。

ジョージアで作られるワインなどの一部の白ワインにはタンニンがある程度入っています。

また、日本の生まれの国際ブドウ品種である「甲州」はわずかながらも黒ブドウの要素を含んでいるため、これから作られるワインは白ワインであっても少量のポリフェノール(タンニン)を持ちます。

もっとも、そうは言ってもこのような「特定の白ワイン」を選ぶよりも、赤ワインを選んだ方が無難ではあります。

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ワインを楽しむために~タンニンのもたらす味への影響

ここまでは「ポリフェノール(タンニン)のもたらす健康への影響」について解説してきましたが、ワインはそもそも嗜好品です。

そのため、タンニンがどのようにワインの味に影響を与えているのかも知っておくべきでしょう。

タンニンは、ワインに複雑さと渋みを与えてくれるものです。タンニンが豊富に含まれているワインは、より複雑で、より重厚で、より奥行きのあるワインに仕上がります。

一口に「赤ワイン」といってもタンニンの含有量はまったく異なります。

たとえば「新酒」として知られるボージョレー・ヌーボー(「ボジョレー・ヌーヴォー」「ボージョレー・ヌーヴォー」とも。品種はガメイ)などは、赤ワインでありながらもタンニンはほとんど含まず、その分軽くて飲みやすい味わいに仕上がっています。

反面、ネッビオーロというブドウ品種を使って作られたイタリアのバローロなどは、非常にタンニンの量が豊富であり、植物の香りを強く感じさせる複雑な味わいに仕上がっています。

このように、タンニンの量によって、ワインの味わいは大きく異なります。

健康目的で選ぶのであればタンニンの量が豊富なものが推奨されますが、「ワインは嗜好品である」ととらえた場合はこの限りではありません。タンニンの量が少ない・多いによって決められるのはあくまで「ワインの味わい」であって、「ワインの優劣」ではありません。

軽い赤ワインが好きならばタンニンの少ないものを、重い赤ワインが好きならばタンニンの多いものを……といった選び分けをするだけで十分かと思われます。

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タンニンの量から考える「相性の良いチーズ」とは

ここまで、「赤ワインと鉄分」「鉄分とタンニン」「タンニンの健康効果」「タンニンの味への影響」について述べてきました。最後に、「それではタンニンの量を意識して飲むとき、どのようなおつまみ(チーズ)と合わせたらよいのか?」について解説していきます。

ライトボディ(タンニン少なめ)のワインと相性の良いチーズ

コンテチーズ

ライトボディのワインには、強すぎない味のチーズがよく合います。そのなかでもエメンタールやコンテなどのナッツの香りのあるものは比較的合わせやすいでしょう。

ちなみにチーズのなかでも非常に軽いフレッシュチーズはライトボディであっても赤ワインと合わせるのは難しいと言われがちですが、先で挙げたボージョレー・ヌーボーにはフレッシュチーズであるプリア・サヴァランは非常によくマッチします。

ミディアムボディ(タンニン普通)のワインと相性の良いチーズ

エポワスシャランセ

比較的どのようなチーズとも合わせやすいのが、ミディアムボディの赤ワインの特徴です。

逆に言えば「定まった形」がなく、専門家によって「おすすめ」とされるチーズが異なります。

ロックフォールなど青カビに合わせるのが良いとされることもありますし、食べやすい白カビが推奨されることもあります。

なおチーズ自体が強烈な個性を持つウォッシュチーズに挑戦してみるのも面白いものです。

フルボディ(タンニン多め)のワインと相性の良いチーズ

さまざまなブルーチーズ

重くて主張の強いワインには、同じように主張の強いワインがよく合います。その代表例が、青カビのなかでも特に刺激的なゴルゴンゾーラ・ピカンテです。ブルーチーズは総じてフルボディのワインと相性がよいため、迷ったのならばこれを選ぶとよいでしょう。

また、深い滋味を持つハードチーズも、フルボディのワインと非常によくマッチします。

ワインと鉄分の関係、そして鉄分とタンニンの関係は非常に興味深いものです。残念ながらワインは「鉄分の補給」という意味ではマイナス点のある飲み物ではありますが、そのマイナス点の原因となっているタンニンには数多くの魅力もあります。

おつまみなどに気を付けつつ、楽しんで飲んでいきたいものですね。

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